78 わかば荘の薔薇色の日常
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[それぞれに違う店名の入った色違いのビニール袋を、 片手に提げて帰路を辿る。
黄色の袋には総合感冒薬。 白い袋にはヨーグルトと、エクレアと、 ぷにぷにの食感が好きなブラックタピオカレモンティー。
薬はもちろん、 これから風邪をひく予定の男への献上品。
──ただし、今夜渡してしまうと うっかり回復してしまうかもしれないので、 明日の朝以降、菌が回りきった頃にでも届けてやるつもり。
どうせ、南方の部屋には、常備薬など置いてあるまい。]
(5) 2014/06/30(Mon) 00時頃
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[袋を持っていない方の手には 食べかけのガリガリ君が握られている。
涼し気な水色のそれを、時折齧って坂道を上る。]
(11) 2014/06/30(Mon) 00時半頃
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─ 大人の事情でテイク2 ─
[袋を持っていない方の手には 食べかけのカリカリ君が握られている。
涼し気な水色のそれを、時折齧って坂道を上る。]
(14) 2014/06/30(Mon) 00時半頃
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[蛇行しながら長く続く目的地への道の終わりに 季節外れの厚着姿が生け垣の外に立っているのを見つけ、 歩調を変えぬまま、遊は薄闇の下でぱちりと瞬きした。
ガリガ──もとい、 カリカリ君はもう棒だけになっている。]
(15) 2014/06/30(Mon) 00時半頃
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[分厚い前髪が隠していてもわかる顰めっ面>>21。
指先で、木の棒をぷらぷらと振って]
コンビニと薬屋。
[と答えた。
声を張らなければハッキリと聞こえない距離でも 遊の声はいつもと同じため、ちゃんと聞こえているか怪しい。
止まらない歩みは、すぐにその距離を縮めるけれど。]
(25) 2014/06/30(Mon) 01時頃
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[伸ばされた手は、避けない。 肌に触れる前に手を引いたのでなければ、 かったるい道程を歩いて来て少しは上がっているはずの体温が それでも草芽よりは低い温度を指先に伝えるだろう。
草芽の一歩手前で足を止め、 質問>>28の答えを探す。]
……多分。
[メイビー。
今日より明日の方が悪いんじゃないかな。 なんて他人事のように呟く。
実際他人事なのだが。]
(30) 2014/06/30(Mon) 01時頃
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[>>35疑われている。
でも、掠れた声やら空咳やら億劫そうな動きやらで 軽く風邪の症状が出始めているのに加えて、 自殺行為である大量飲酒までしていたのだから 南方の体調悪化はほぼ間違いない。]
マジで。
[ひとっつも怠そうな感じのしない頷きを返し、 ふとアイスの棒に目をやると 消えかけた薄い文字が目に入る。]
あ──、
[言いかけた言葉が、 押し付けられたふにゃっとした物体の柔らかさと 腕を引く強引な手に遮られた。]
(41) 2014/06/30(Mon) 01時半頃
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え
[なにか、思いがけない言葉が聞こえた。
こちらを向かずに発せられた声は はっきりとは聞き取れなかったけれど、 休んでおけとかなんとか言われたような。
あれ、何か──
勘違いしてる? ──と、やっと違和感を感じたけれど。
掴まれた手首から、 ひとの体温がじわりと染みこんで来て──]
───。
[咄嗟に振り払う失態を 見せないようにするのが精一杯だった。]
(42) 2014/06/30(Mon) 01時半頃
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ジャニスは、手を引かれるまま、無言で草芽の後をついてゆく。
2014/06/30(Mon) 01時半頃
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[離れてくれない体温を 振り解くことも出来ないまま 気付けば自室の前まで連れて来られていて──]
…──、
[やっと解放された手首に なにやら汗ばんだ草芽の手の感触が残っている。
──ビニール袋を持った手で、そっと手首を撫でた。]
(48) 2014/06/30(Mon) 02時頃
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……。
[わざわざここまで連れて来て、 言う言葉がそれか>>45。
いつも通りの面白い草芽に 唇が勝手に人の悪い笑みを刻む。]
(49) 2014/06/30(Mon) 02時頃
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…──おやすみ。
[草芽の黒い輪郭に流し目をくれて、 自室の重いドアを引き開けた。]
(52) 2014/06/30(Mon) 02時半頃
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─ 201号室 ─
[開けっ放しの窓から、 雨が降り出す前特有の、腥い風が流れて来る。
真っ暗な部屋の中で 消し忘れたノートパソコンの白い光が 白々とキーボードを照らしている。
今日は色んな意味で來夏が頑張っていたから ご褒美に渡そうと思って買って来たエクレアが 袋の中で生暖かくなってゆくのに すぐにそれを渡しに行こうとか、 冷蔵庫に入れようとかいう気になれない。]
(54) 2014/06/30(Mon) 02時半頃
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[必要と思うことはすべて口に出している。 言わないのは、 言う必要がないと思っているからだ。
それ以上の──]
なにを……
[草芽は、知りたいと望んでいるのか。]
(57) 2014/06/30(Mon) 03時頃
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─ 201号室 ─
[背に固い扉の感触。
部屋に入った遊はすぐにその場を動かず 窓の外の漆黒を見詰めて 数秒ほどぼんやりとドアに体重を預けていた。
それからおもむろにキッチンに向かい、 ミネラルウォーターと調味料以外 めぼしいものの何も入っていない中型冷蔵庫に 買って来た要冷蔵の品を全部突っ込むと、 つけっ放しのノートパソコンの前に、義務的に腰をおろした。]
(74) 2014/06/30(Mon) 09時半頃
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[小説が、最終章以外 もうこれ以上いじるところのない状態に近づいた頃、 遊は短く嘆息して、片手でノートパソコンの天板を閉じた。
側面の排気口から熱風を吐き出し続けていたファンも しばらくして沈黙する。
空はいつの間にか白み、 針のような細い雨を降らせ始める──。]
(80) 2014/06/30(Mon) 11時半頃
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[時計の針が指しているのは 他人の部屋を訪問するにはまだ非常識な時間。
昨夜から着っぱなしだったリネンシャツをハンガーに掛け タンクトップを黒に変えて 上から着心地のいい白い半袖パーカーを羽織る。
ローテーブルの横には、空になった泡盛の瓶が立っている。 その横に放ってあった黄色い袋と 冷蔵庫で冷やされたアロエヨーグルトを手に 遊はふらっと自室を出た。]
(81) 2014/06/30(Mon) 12時頃
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[いつもの裸足、いつもの足取りで 誰もいない階段を下り、 104のナンバープレートが掲げられた扉の前で止まる。
コンコン──と、 無遠慮なノックが南方の部屋を襲った。]
(82) 2014/06/30(Mon) 12時頃
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─ 104号室前 ─
[静かな廊下で扉の向こうのに意識を向けていると、 聞き耳を立てずとも人の気配は感じ取れる。
ノックの直後にはしなかった微かな物音が 閉じた扉の方へ近づいて来て──]
(89) 2014/06/30(Mon) 12時半頃
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おは──
[ドアが開いたので、 好きのする笑み──のつもりの薄笑いを浮かべて、 南方より低い位置から見下ろすように顎を上げて 爽やかな朝の挨拶を言いかけた瞬間、ドアが閉じた。]
(90) 2014/06/30(Mon) 12時半頃
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…………
[片手をノックのために上げた半端な姿勢で 開きかけの唇を閉じる。]
(91) 2014/06/30(Mon) 12時半頃
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[再度、ノックをしようと── 十回くらい叩いてやろうと少し手前に腕を引いた瞬間に またドアが薄く開いて>>88]
もう──
[隙間から見える男の顔を見て]
朝だし。 多分、必要だと思って
[黄色い袋を軽く掲げた。]
差し入れ。
(92) 2014/06/30(Mon) 12時半頃
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[普段なら寝ているかもしれないが──]
今日は起きてた。
[知ってた。 と言いたげに、閉じた唇を横に引く。
鼻声の、掠れ声。]
風邪 悪化してる。
[指で己の喉をさして、また笑った。]
(94) 2014/06/30(Mon) 13時頃
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[チェーンが隔てる彼我の境。 南方の警戒心が形になったようなそれへ 小枝のような、節のある細い指が掛かる。
胸の高さから 腹の高さまで
すぅっとドアの縁を指で撫で下ろし、 金属チェーンを人差し指で、そっと撫でた。]
(95) 2014/06/30(Mon) 13時頃
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してない?
なら──
[指が、チェーンを離れる。]
これからだ。
(97) 2014/06/30(Mon) 13時頃
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飲んだほうがいいよ、薬。
[面倒くさそうな、 言葉──うそ── に、伏し目がちに笑って、再度掲げた袋を揺らした。]
(98) 2014/06/30(Mon) 13時半頃
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[頷く。
中身が見えづらい黄色の薄いビニール底に 長方形の箱の形が浮いている。
もう一つ、ヨーグルトも入っているから、 わかりにくいかもしれないが。]
(103) 2014/06/30(Mon) 13時半頃
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ジャニスは、ミナカタの視線にビニール袋が怯えている気がした。
2014/06/30(Mon) 13時半頃
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[一度、扉が閉まる。
らしくもない落胆を感じた瞬間、 もう一度金属音があって]
……。
[金属線に遮られていない空間が、ひらかれた。]
(105) 2014/06/30(Mon) 14時頃
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いらない。
[閉まってしまおうとするドアを手で押さえ、 背中に声を投げる。
外側に開いたドアの向こうに ドアが収まるべき枠がある。
それを越えていいのか、 迷って]
お金はいらない。
[もう一度言って、爪先を枠に乗せた。]
(106) 2014/06/30(Mon) 14時頃
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──…。
[片足踏み出しかけたまま、 ひとり歩きした思考の途中で、遊は一瞬、微妙な顔を見せた。]
(109) 2014/06/30(Mon) 14時頃
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[悪人でも、どうでも。 気にしない。
折角のチャンスなのでお邪魔することにした。
104号室の扉が閉まる。 黄色い袋を提げた珍獣を中に迎え入れて。]
(111) 2014/06/30(Mon) 14時半頃
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[目についたのは、部屋と玄関とを隔てるカーテン。
──こんなところにも境界線がある。]
(112) 2014/06/30(Mon) 14時半頃
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[南方が通るために捲ったカーテンの隙間から 作業台のようなものと、その上のカップと、ベッドが見えた。
床に置かれた板は、隙間からではそうと認識できなかった。
ぱちりと目を瞬いて、 何も考えず後をついてゆく。]
(113) 2014/06/30(Mon) 14時半頃
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[南方が財布に手を伸ばした辺りで、 仕切りのためのカーテンが捲れて、白い姿が覗く。]
(115) 2014/06/30(Mon) 14時半頃
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──絵だ
[玄関に戻るために南方が振り返るのと 気配に気付いて顔を上げるのと 陽光をカーテンで遮った部屋に、遊の声が響くのと。
どれが最初だっただろう。]
(116) 2014/06/30(Mon) 15時頃
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[裸足が、絵の具のこびり付いた床板を踏んで、 大きなキャンバスの前で止まる。
光沢の足りない肌色は それがまだ乾ききっていないことを示している。]
──。
[表情を変えない遊の目が、じっと裸像に注がれる。]
(118) 2014/06/30(Mon) 15時頃
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[首を振る。 金はいらない──と。
苛立ちを含んだ詰るような声音の理由がわからない。 境界を越える前に感じた一瞬の罪悪感は、 現れた絵という新しい情報に上書きされた。]
(120) 2014/06/30(Mon) 15時頃
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[遊の目はもう南方を見ない。
画布の上の描きこまれた裸像から なにかを読み取ろうとするように 自然体で絵と向き合っている。]
(121) 2014/06/30(Mon) 15時頃
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[時間にして五分に満たない時間。
その後、 不思議そうに首を傾げ 握った袋に南方が触れたのを機に、 興味を失った体で南方を見上げた。]
これ、 楽しい?
[遊の手は、あっさりと袋を手放した。]
(124) 2014/06/30(Mon) 15時半頃
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[絵のことはよくわからない。 練習用の絵なんて、そんなものかもしれない。
自分の中から産まれる世界を表現したくて書く小説とは、 違うのかもしれない。
そうは思っても、聞かずにいられなかった。]
──南方、上手だね
[他に、言う言葉がなかった。]
(127) 2014/06/30(Mon) 15時半頃
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あ
先生、なんだ。
[袋を移し替えてしまったから ヨーグルトにスプーンはついていない。]
(130) 2014/06/30(Mon) 16時頃
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アロエ 喉にいいから。
冷やしておいたし。 美味しいよ。
[用法など気にしたことがないから ヨーグルトは 少し眠って起きた時に食べればいいと思っていた。
でも、食べたいなら今食べればいいとも思う。
角切りのアロエが 白い海にぷかぷか浮いている。]
(131) 2014/06/30(Mon) 16時頃
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うん 平日に、わかば荘にいるときあるしね。
塾って、予備校的な?
[どっちにしろ、教え慣れている。 億劫がりながらもいつも返事をくれていた 理由の一端が見えた。]
(133) 2014/06/30(Mon) 16時頃
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ジャニスは、ミナカタのベッドに勝手に腰掛けた。
2014/06/30(Mon) 16時頃
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コンクールとか 出さないの。
[油絵の具の飛んだ床板を見ながら ぽつりと言う。
質問というより、独り言に近い 一言。]
(135) 2014/06/30(Mon) 16時頃
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うん…──。
[出さない、 と言われなくて
ほっとした。]
(144) 2014/06/30(Mon) 16時半頃
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[気を張っていたわけじゃないのに 気が抜けた。
慣性の法則に従って、背中からたおれる。
柔らかくて]
……眠い。
(145) 2014/06/30(Mon) 16時半頃
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[スリッパが床を擦る音が近づいて来たので キャンバスから目を話して、 ベッドの前に立つスリッパを見た。
膝を上って 腰を過ぎて シャツの胸元を通って
顔に至る。]
寝れば
[寝る、と言うので 寝やすいように少し端に寄ってやった。]
(147) 2014/06/30(Mon) 16時半頃
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あるけど──
[あそこは、あまり眠れない。]
(149) 2014/06/30(Mon) 17時頃
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[掛け布団が飛んで来た。>>148
薄い、やわらかい、布団の端を掴んで もぞもぞ動いて足先が出ないよう掛け直した。
寝ていいと言われた気がして目を瞑る。]
(151) 2014/06/30(Mon) 17時頃
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[──仕事なんてやすめばいいのに。
思った言葉は、頭の中にだけ響いた。
寝相は悪くないから、 きっと南方の睡眠の邪魔はしないだろうと ベッドの端で膝を曲げて、すぅと眠りに落ちた。**]
(152) 2014/06/30(Mon) 17時頃
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─ 104号室 ─
[夢の中、いつの間にか遊は故郷の果樹園に立ち この果樹園では初めて収穫される品種の桃に手を伸ばす。
視界に入る自分の手はまだちいさくて 桃は手に余る大きさだ。
細かくて柔らかい針のような毛に覆われた桃は 太陽を浴びて仄かにぬくい。
父親に、いつものより甘くい匂いがするぞと言われ、 鼻を近づける。 ──と、 淡いクリーム色と薄紅の果実から、油絵の具の匂いがした。]
(180) 2014/06/30(Mon) 22時頃
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[すぅ、と息を吸って もう一度、匂いを嗅ぐ。
やっぱり感じるのは油の匂い。]
──……。
[視覚と嗅覚から入り込む情報の落差が 夢の円滑な進行を妨げ、 そういえばこれは夢だった──、と気付いた瞬間 遊は目を覚ました。]
(182) 2014/06/30(Mon) 22時頃
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……。
[横たわる遊の眉が、若干中央に寄っている。 悪臭──ではない。 不思議と落ち着く匂いだ。
しかし甘いと思って嗅いだ違和感が 目覚めた今でも強く残っている。]
(183) 2014/06/30(Mon) 22時頃
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[嗅ぎ慣れない匂いのする寝台でゆっくり身体を起こす。 短い時間だが、よく眠れた。
ここには自分を追い立てるものが何もない。
窓を見た。 カーテンは閉じていて、部屋は薄暗い。]
時計……
[アラームを掛けると言っていた>>150から まだ八時半前だと思ったら そんな時間はとっくに過ぎていて、 部屋のどこにも、主の気配がしなかった。]
(190) 2014/06/30(Mon) 23時頃
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[主の不在をいいことに もう一度寝てしまおうかと思ったけれど、 午後からバイトだったのを思い出した。 ベッドの上でもそもそと布団を畳んで立ち上がる。
──改めて、部屋を見渡す。]
──。
[ものがないわけでもないし 整然としすぎている──ということもない。
だけどここは、生活の基盤というより 単なる作業場のような感じがする。
学生時代、時々遊びに入った美術準備室が近いだろうか。]
(193) 2014/06/30(Mon) 23時頃
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[いや──あそこはもっと、 筆だの絵の具だのが散乱していて汚かったな。
ちょっと違うな、と首を傾げて 目的もなく視線を巡らせていたら、 作業台の上の、でかでかと書かれたメモ>>154を発見した。
置いてある鍵を手に、文字に視線を走らせる。]
九時──
[大丈夫、バイトは終わってる。]
(202) 2014/06/30(Mon) 23時頃
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[殴り書きなのに妙に読みやすい。
細いペンを探したが、作業台の上になかったので 勝手に引き出しを開けた。]
(211) 2014/06/30(Mon) 23時半頃
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[普段喋るよりよほど雄弁で、 主語も目的語も行方不明にならない丁寧な口調。
殴り書きのメモの隅に 鉛筆の細い字で、流れるように書き記した。
書き終わった鉛筆は、 返信があると主張するように作業台に転がした。]
(213) 2014/06/30(Mon) 23時半頃
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[部屋の隅に片付けられた他のキャンバスも気になったが 慣れないものに勝手に手を触れて散らかすと 片付けが面倒だと思って見るのをやめた。
部屋を出る前に、 見慣れない一階のベランダからの景色を見ようと カーテンを捲って窓を開け、身を乗り出して外を見た。]
まだ降ってる。
[濡れて仕事に行くわけにはいかないので 傘がいるなと思った。]
(215) 2014/06/30(Mon) 23時半頃
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[言われた通り窓を閉めて、そこにもしっかり鍵を掛けた。 玄関と部屋を隔てる間仕切りをくぐる前、 もう一度裸像の描かれたキャンバスを、振り返って見た。
絵は、なんのイマジネーションも掻き立てられない ただの習作のようであるが、 改めてよく見れば、白の中にも幾重もの色が重なっていて それがリアルな立体感を感じさせているのだとわかった。
よく描き込まれている。 自分なら、一枚の習作にこうも手を掛けられない。
好き──なんだな。
ぼんやりと、そう思った。]
(221) 2014/06/30(Mon) 23時半頃
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─ 104号室前 ─
[閉じたドアに鍵を掛けて、鍵をポケットにしまう。 談話室に顔は出さず、階段に向かう。
自室で着替えて出掛ける準備をするためだ。
來夏はもう起きているだろうか。 昨日渡し損ねたエクレアを部屋に持って行こうか。]
(226) 2014/07/01(Tue) 00時頃
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[遊が目を覚ましたのは、 天露が管理人への告解を行った時間よりはずっと後で、 104号室の窓から庭を覗いた時には、 巨躯を縮こまらせる檀>>199はもう庭から消えていたし、 道菅の大声>>207も、響いた時にはまだ夢の中だった。
昼にほど近い、遅い時間。 たまたま誰ともすれ違わずに二階まで来て、 自室までぺたぺたと、冷たい床を踏んで歩いた。]
(239) 2014/07/01(Tue) 00時頃
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おはよう
[204号室──芸の部屋の前辺りに差し掛かったところで 自室の隣の部屋の扉が開いた。
立ち止まらず、表情を変えず、言葉を返す。]
──…
[そのまま202号室の前まで来て、足を止めた。 前髪が邪魔で、草芽の表情は見えない。]
(265) 2014/07/01(Tue) 01時頃
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手──
[自分の掌を見せて、 同じように手を出せと促す。]
(273) 2014/07/01(Tue) 01時頃
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[扉から恐る恐る差し出された手を いつもと変わらぬ温度で、握る。
握って、手前に引いた。
部屋の中から引っ張り出すように──。]
(283) 2014/07/01(Tue) 01時半頃
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|
[握った手を離さず、 反対の手を、草芽の前髪に伸ばす。
逃げられなければ、前髪を額で押さえて 覗くライトブラウンを、間近から見下ろした。]
(284) 2014/07/01(Tue) 01時半頃
|
|
見て。
[気持ちを伝えるのに、言葉はいらない。 そんなことを言うのは、 物書きとしてどうかと思われるかもしれない。
けれど実際、 視線から、態度から、読み取れるものは多い。]
(286) 2014/07/01(Tue) 01時半頃
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|
[草芽の唇が動く。>>297 何かを言おうとして言葉にならなかったのか。
>>299見せろ、と訴える相手の目を もう一度、自分に向けるように顔を寄せて繰り返す。]
見て。
俺は── 眠い時は眠いって言うし 面白くなければ、笑わない。
いちいち自分のこと、全部言おうと思わないから 目を瞑ったままだと、俺のことはわからない。
心配なら── 心配、したいなら──。 自分の目で、見なよ。
(303) 2014/07/01(Tue) 02時頃
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|
[心配されるようなことは、 今のところ、小説の進み具合ぐらいしかないけれど。]
(305) 2014/07/01(Tue) 02時頃
|
|
[近く見詰める、切れ上がった一重の眼は それでも、斬りつけるような鋭さは持たない。
草芽の淡い色の虹彩がどんな表情を湛えるか 逃げることを許さず見ていたが]
──…
[頑張る、と 頼りなく答えるのを聞けば 僅かにその表情は笑み、掴んでいた手を離した。]
(311) 2014/07/01(Tue) 02時半頃
|
|
髪、切れば。
[握っていた掌に 草芽の体温が残る。
距離はもう元通り。 引こうと思えば、いつでも新たな境界線を引ける位置。]
邪魔でしょ。 あと
そういえば、お揃い。
[白いパーカーのフードを摘んで、 そこについた、猫の耳のような飾りを見せた。]
(312) 2014/07/01(Tue) 03時頃
|
|
[フードを被ることがないから その飾りは日の目を見ることはない──が、 もし、日向を見つけたら被るつもりでいる。
猫っぽいと言う日向の前で 猫の真似でもしてふざけてみようと思ったのだ。]
(313) 2014/07/01(Tue) 03時頃
|
|
[一歩、扉から離れ]
──あ、來夏。
[廊下の途中に立っている來夏に気付いて、名を呼んだ。]
(314) 2014/07/01(Tue) 03時頃
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ジャニスは、テッドをちょいちょいと手招きする。
2014/07/01(Tue) 03時頃
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─ 202号室前 ─
[草芽が遊の前で笑うのは珍しい。
>>317空気が漏れたような音と 口許の緩む様子に、遊の口許に刻む笑みもごく僅かに深まる。
來夏が重い足取りで近づいて来れば ちゃんと隣に来るまで手招きを続け 眠たげな顔を見て]
眠い?
[と尋いた。]
(325) 2014/07/01(Tue) 08時頃
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|
[理由を探すような視線に気付くと]
ちょっと待ってて
[と言い置いて、 一度自室に入り、冷えたエクレアを持って戻って来た。]
昨日 買って来た。
──、
お土産。
[理由もなにも言わず 來夏にエクレアを差し出して、 聞かれれば昨日手伝い頑張っていたからだと教える。]
(326) 2014/07/01(Tue) 08時頃
|
|
[草芽も食べたがるようなら
じゃあ、今度買って来る。
と言って、 フードの上から草芽の頭を撫でようと手を伸ばす。]
(327) 2014/07/01(Tue) 08時頃
|
|
と、バイト──
[そろそろ出ないと遅刻する、と気付いて 眠そうな來夏の額辺りも一度撫でてから 二人に背を向け、201号室の扉の向こうに消えた。]
(328) 2014/07/01(Tue) 08時頃
|
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─ 201号室 ─
[南向きの、カーテン開け放しの窓から 灰色の空が見えている。
雨の日の自然光で満たされた室内は 暗くはないのに、光よりも影を身近に感じる。
光沢のある黒いローデスクの上で 閉じた薄い機械が沈黙している。 機械に心はないのに もう時間はないぞ──と急かすような、 無言の圧力ばかりを感じる。**]
(329) 2014/07/01(Tue) 08時半頃
|
ジャニスは、財布と透明の傘と携帯を持ち、バイトに出掛けた。**
2014/07/01(Tue) 08時半頃
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[壬浪商店街に入って一本目の脇道を入ると 昭和の時代から変わらない古い家屋と 最近出来たばかりの 和モダンなデザイナーズマンションが同居する、 ノスタルジィな雰囲気の裏通りに出る。
常連からても爺と呼ばれ親しまれている 白髪の柔和な店主が営む狩生堂古書店は、 そんな新古入り混じる不思議な通りの一角に ひっそりと隠れるように建っていた。]
(341) 2014/07/01(Tue) 16時半頃
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─ 狩生堂 ─
[木枠にガラスを嵌め込んだ古い引き戸を開けると 最初に目に入るのは 男性の腰ほどの高さの木製の台。 てっぺんに赤い座布団が敷いてあって、 その上に、真っ青な目をした白い老猫が 身体を丸めて眠っている。]
──。
[台とほぼ同じ高さのカウンターが 台と隣接するように店内へと伸びていて、 レジの奥に、本を読み耽る店番の青年──遊がいた。]
(342) 2014/07/01(Tue) 16時半頃
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[遊は、店にいる時間のほとんどを カウンターで本を読んで過ごす。
客が入って来た時だけ顔を上げ、 ちらりと客の顔を確認するとまた本に視線を戻す。
いらっしゃいませの一言もない。
──が、 洋書や専門書を多く取り扱う狩生堂の客の多くは 美術系の学生やまだ若いデザイナーであるためか、 その無愛想さが、逆に気を遣わなくてよいと、 評判はそこまで悪くなかった。]
(343) 2014/07/01(Tue) 16時半頃
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─ 狩生堂 ─
──… ──… ──…
──…?
──…あ、 いらっしゃいませ。 買い取り希望ですか?
[雨のせいか、曜日のせいか、 店を訪れる人の数はいつも以上に少ない。
夕方近くになって、 一人の女性客が段ボール一箱分の写真集を抱え 細腕をぷるぷるさせながら無言でレジ前に立っていた。]
(384) 2014/07/01(Tue) 22時頃
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[遊がこの日
いらっしゃいませ、と ありがとうございました、を
口にしたのはこれが三度目で 同時にこれが最後となった──かもしれない。]
(385) 2014/07/01(Tue) 22時頃
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[女性客が訪れる前の、平和──もとい、暇な店内。
遊がいる間、ても爺はあまり姿を見せない。 白猫のみぃも、遊に懐いている。 今は餌のカリカリを食べ終えて睡眠中だ。
邪魔する者のいない店内で、遊の読書は捗っている。]
(404) 2014/07/01(Tue) 23時頃
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─ 狩生堂 ─
…── …── …──
…──あ、
…──宇佐美
[まいど──から四拍ほど遅れて 遊は顔を上げた。
夢から引き戻されたような顔で、意外な客の顔を見る。]
(407) 2014/07/01(Tue) 23時頃
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ジャニスは、サミュエルの顔を、凝っと見て──
2014/07/01(Tue) 23時頃
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[遊が読んでいたのは 病沢エリの著書──人間不全。
その昔、作者がわかば荘に住んでいたことを 遊は知らない。]
イラストなら──
[かなり後半の頁に栞を挟み 立ち上がって店の左奥の棚を指指した。]
そこ。
[ただ、そことは別に、 最近のイラストレーターが参加している 雑誌のバックナンバーを扱ったコーナーが 今教えた場所から三つ隣の棚にある。]
(413) 2014/07/01(Tue) 23時半頃
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[藤堂のイラストを探しに来たと知らない遊は 一般的なイラスト教本のある棚を教えたが、 宇佐美が気紛れに他の棚にも目を向ければ 平置きされ並べられた雑誌の表紙のひとつに 藤堂のイラストが用いられているのを 見つけることが出来るかもしれない。]
(415) 2014/07/01(Tue) 23時半頃
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宇佐美、絵でも始めるの?
[奥へ向かう宇佐美を 物珍しげに遊の視線が追う。
そうなら── 南方にでも教われば、上達が早そうだ。
藤堂の仕事も小耳に挟んだことはあるが、 教えるなら南方の方が慣れているだろう。
静かな店内のこと。 張り上げずとも声は届くか。]
(422) 2014/07/02(Wed) 00時頃
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─ 狩生堂 ─
へぇ……
……見たい。
[>>427下手と聞いて俄然興味を湧かす。
謙遜か 画伯レベルか。
後者なら面白いな──、と。]
(444) 2014/07/02(Wed) 07時頃
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[壁際以外は目線の高さ以下で揃えられた本棚。 店内の見通しは悪くない。
どこに何があるか完全に覚えているわけではないし 宇佐美が手にした本のタイトルが見えるほどの超視力もないが 教えたのは教本関係のコーナーで、 そこから動かず眺めているところを見ると 間違ってはいなかったかと思ったのだが──]
やるんじゃないなら、 隣の隣。
──そう、そこ。 その棚は、画集とか置いてる。
デザイン系の雑誌のバックナンバーは、もう一つ隣。
(446) 2014/07/02(Wed) 07時半頃
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[絵で稼ぎたいと思っている人──]
──うん
[南方は──]
いるね
[絵で稼いで──いる。]
(447) 2014/07/02(Wed) 07時半頃
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──。
[羨む宇佐美の声>>427に遊は沈黙し 代わりにみぃがクァァッと大きな欠伸をした。]
(448) 2014/07/02(Wed) 07時半頃
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[差し出されたメモの絵を見て]
はは
[乾いた笑いが漏れた。]
(454) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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[何とも微妙な絵だった。
上手くもなく、 画伯と言うほどエキセントリックでもなく。]
……うん
[何がうんか。
とりあえず話を変えた。>>446]
(455) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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[座布団の上で寝直したみぃは 宇佐美の動く物音を聞き取ってか、 時々ぴくりと耳を動かす。
宇佐美が帰るまで読書は置いておいて 遊はみぃのそういった動きを、 考えこむような眼差しでじっと見ていた。
そして── 宇佐美が目的のものを手にしたかしないかに関わらず 店を出る宇佐美にこう尋ねた。]
絵本は好き?
(457) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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[嫌いと言われなければ]
じゃあ──その箱の中の絵本 どれでも一冊好きなのを持ってっていいよ。
[カウンターの裏の、 客からは見えない位置に置いてある段ボール箱の中の 新しいものも古いものも混ざって積まれている絵本を指して]
俺の奢り。
[と、薄く笑った。]
(458) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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[その箱の中身は、先日本を売りに来た客が 金にならなくていいから処分してくれと置いて行ったもので ほとんど全部、あまり有名でない作家の絵本だった。
今日ここに来て最初の仕事が この中から売れそうな本を分けることだった。
一冊一冊目を通しながら、これを持って来た客が なぜこんなに沢山の絵本を集めたのか。 そしてなぜ突然不要になったのか。
想像するのは楽しかった。
今箱の中に残っているのは 日焼けが酷かったり 逆に新しすぎたりして売れそうにないものばかり。
だから奢りと言っても、元々タダなのだけれど。]
(459) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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……。
[>>460勘違いも甚だしいが 狐面を貼り付けたような微妙な表情で聞き流した。]
(461) 2014/07/02(Wed) 08時半頃
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[宇佐美が選んだ雑誌の会計を済ませ、 絵本と一緒に雨の日用のビニールの手提げ袋に入れてやる。]
…──
[本を受け取った宇佐美に 声を掛けようとして、やめた。]
(464) 2014/07/02(Wed) 08時半頃
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[やりたいことは自分で見つければいい。
苦しくても好きなことを模索するか 出来ることを一生懸命こなすか。
どちらも間違いではない。 選ぶのは自分だ。]
ありがとうございました。
[本日二度目のありがとうございます。 みぃがまた欠伸をした。]
(467) 2014/07/02(Wed) 08時半頃
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[七時に店を閉め、書架を軽く整理して店を出た。 帰り際、ても爺が手土産をくれた。 あんこの代わりに桃の入った水まんじゅうらしい。
ただのバイトの身に余るほど、ても爺は気に掛けてくれる。 昔小説家を目指していたから、若いころの自分と被るそうだ。
本当に今月いっぱいでやめてしまうのかい──?
そう問われて、多分──と、曖昧な返事をした。]
(469) 2014/07/02(Wed) 09時頃
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[雨はまだ降り続いている。 細い細い針のような、柔らかい雨。
傘を打つ雨音さえ優しい。
帰り道、コンビニに寄ってエクレアを買った。 ついでにのど飴も。
坂道を上る遊の手に、二つの袋が揺れている。 一つには大判の写真集が入っているから、少し重い。*]
(471) 2014/07/02(Wed) 09時頃
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─ 夜 わかば荘 ─
[宇佐美の忠告のおかげで 遊は珍しくちょっとも濡れずにわかば荘に帰って来た。
途中、傘を閉じたくなったけれど 宇佐美の言葉>>462を思い出してやめたから やっぱり今日わかば荘の廊下が濡れずに済んだのは 宇佐美の功労と言って差し支えない。]
ただいま
[玄関でスニーカーを脱いで、誰にともなく言う。]
(473) 2014/07/02(Wed) 09時頃
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[談話室を覗いて壁に掛けられた時計を見る。 針はまだ、八時ちょっと過ぎを示していた。
スマホを取り出して着信を確認する。 メールが一通届いていた。
中を確認して、無言でしまう。]
(474) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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[知らない番号からの着信はなかった。 南方に緊急事態は起きなかったのだろう。
メモに連絡先を残したから、何かあったら携帯に──]
……
[そこまで考えて、重大なことに気がついた。]
(477) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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──。
[玄関に取って返して南方の靴を確認する。
ない。 まだ帰って来ていない。
多分。]
(478) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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[オーケーオーケー。 何も問題ない。
九時になる前にもう一度お邪魔してメモを処分しよう。]
(479) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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[談話室には何人くらい人がいただろうか。
草芽がその場にいれば、 買って来たばかりのエクレアを取り出し 來夏に渡した時と同じようにお土産、と言って渡す。
他にも人がいれば、いくらか言葉を交わして グラスに氷と水を入れて、喉を潤した。
重い写真集の入った袋は、そのまま自室に持ち帰る。]
(480) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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─ 201号室 ─
[扉を開けると、真っ暗な部屋がそこにあった。 閉じたままのパソコンが死んだように沈黙を続けている。]
──……。
[引き寄せられるように近づいて蓋を開ける。
電源を入れると、低い駆動音が空気を震わせ やがて画面に灯った白い光が、 薄ぼんやりと部屋を照らし出した。]
(481) 2014/07/02(Wed) 10時頃
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[手提げ袋を部屋の中央に放り出して、 デスクの前のクッションにストンと腰を落とす。
手が勝手にマウスを操作し、 書きかけのテキストを起動させていた。]
(482) 2014/07/02(Wed) 10時頃
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ジャニスは、九時を過ぎても、そこでぼうっと画面を見つめ続けている。
2014/07/02(Wed) 10時頃
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[談話室の真上の ウッドデッキに出て来た人の話し声の聞こえる この部屋の位置が気に入っている。
階段からは少し遠いけれど、二階の屋上も近くて 外の気配が間近に感じられるのがいい。
まさかそんな所でクレームが発生しているとは思わず 鍵の閉じていない部屋で、増えない文字を睨んでいる。]
(486) 2014/07/02(Wed) 10時半頃
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[扉を叩く音がして、小さく肩が跳ねた。 半分放心していた。]
……あいてる。
[辛うじて外に聞こえるくらいの声を、扉に放る。]
(487) 2014/07/02(Wed) 10時半頃
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[無垢材のフローリングは 遊が入居する前に201号室に住んでいた人が改装したのを 特に変える必要もないからそのまま使っている。
部屋に満ちるのは本の匂いではなく 開け放たれた窓から入る雨の匂い。
真っ暗な部屋の、四角い白い光を背負って 入って来た南方を座ったままの遊の横顔が出迎えた。]
(489) 2014/07/02(Wed) 10時半頃
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[いつも、誰にでも 無造作に放るように掛けていたお帰りの言葉はない。
心ここにあらずの表情で 凝っと、南方の顔を見上げていた遊の目が 重い足取と息遣いに気付いて、ようやく瞬きをした。]
……南方、具合悪い?
(491) 2014/07/02(Wed) 11時頃
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?
[言われた意味がわからない、という顔。
夜。 それがどうしたのだろう。]
(492) 2014/07/02(Wed) 11時頃
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ジャニスは、本を読まないのに電気をつける必要を感じない。
2014/07/02(Wed) 11時頃
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[緩やかに、首を横に振る。 体調は悪くない。]
目は、両方1.5だけど
──あ そこ
[南方が部屋の中に歩いて来るなら、 足元に気をつけろという意味で 写真集が落ちている辺りを指で示す。
本が落ちているから気をつけて、 までは口にしなかったが。]
(494) 2014/07/02(Wed) 11時頃
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風邪、あんまり引けなくて
[小さい頃から実家の果樹園の手伝いをしていたから 見た目よりも基礎体力がある。
寝不足続きで濡れても風邪をひかないのは きっとそのせいだろう。
自力で患えないから、お裾分けに預かろうと思ったが──]
あ
[注意した瞬間、南方が体勢を崩した。 鈍い音も、小さく聞こえた。
ハードカバーの写真集は 角が当たれば相当痛いだろう。]
(499) 2014/07/02(Wed) 11時半頃
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大丈夫?
[──足。
咳き込み、その場に膝を突いた南方に 見当違いの心配をして立ち上がると、 傍らに寄って姿勢を低くし、背中を撫でた。]
(500) 2014/07/02(Wed) 11時半頃
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──それ、 今日入荷したから、來夏にあげようと思って。
[南方が見ているのは、 本日最後の女性客が売りに来た本の中にあった、 來夏が好きな写真家の写真集で、 さほど有名ではないせいか、扱っていない書店も多いので プレゼントしようと思って買い取って来た。
聞かれたわけでもないのに、 しげしげと本を確かめる様子を見て、何となく口にした。]
(502) 2014/07/02(Wed) 12時頃
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ジャニスは、本を受け取って、少し離れた位置に置き直す。
2014/07/02(Wed) 12時頃
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……いや、中古。
俺のバイト先、古本屋さんだから。
[──気にしないで。]
それより
[南方の、背中に触れた手が少し──]
熱い。
(504) 2014/07/02(Wed) 12時頃
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……────。
[──退散してやるから
その言葉に、唇を閉ざす。]
(506) 2014/07/02(Wed) 12時半頃
|
|
[背中を撫でていた手は止まって、 今は、そこに重みが乗っているだけの状態。
南方が口にするのは、 薬への礼と、明日の予定と、冗談と。]
南方って──
[舌が勝手に動き出そうとして 喉元で堪えている感覚。]
(508) 2014/07/02(Wed) 12時半頃
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──────────。
[その癖 正解へと繋がる鍵を、開くためのキーワードが見つからない。]
(509) 2014/07/02(Wed) 13時頃
|
|
[結局──]
…──先生は、本は読む?
[どうでもいいことを口にして、また緩く背を撫でた。]
(510) 2014/07/02(Wed) 13時頃
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嫌いじゃないけど── 読まないか。
[そんな時間があれば、絵を描くのかも知れない。]
──好きだよ。 読むのも、書くのも。
[読むのが好きだから、書きたいと思った。]
(514) 2014/07/02(Wed) 13時頃
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|
──…
[書くの?
──と、聞かれたことに、また口を噤む。]
(520) 2014/07/02(Wed) 14時頃
|
|
[知らないのが意外だった。
遊が小説を書いていることは、 わかば荘の中では、 比較的誰もが知っている事実だと思っていた。
談話室のソファをよく寝床にしているから 聞かれることは少なくなかった。
でも──そういえば、 南方に訊かれたことはなかった、と思い出す。]
(521) 2014/07/02(Wed) 14時頃
|
|
書くよ。
[結局、ぽつりとそう答えた。]
(523) 2014/07/02(Wed) 14時頃
|
|
──、読める。
[どうってことない一言が、一瞬詰まりそうになった。 声にする前、南方の背に触れていた手に、僅かな力が籠もる。
それは、重みとして、南方にも伝わったかもしれない。]
(529) 2014/07/02(Wed) 14時半頃
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|
[嫌とかいいとかでなく、ただ──]
長いよ
[とだけ、告げる。
200頁を超える長編だから、 すぐには読み終わらないだろうと。]
(537) 2014/07/02(Wed) 15時頃
|
|
[でも──]
読んで
[欲しい。]
(538) 2014/07/02(Wed) 15時頃
|
|
南方、具合は?
[境界を踏み越えてプライベートに踏み入った。 厳重に隠されていたライフワークを覗いた。
対価を支払うのは道理だ。]
(541) 2014/07/02(Wed) 15時頃
|
|
[>>543ですよね。]
──まだ、プリントアウトしてなくて
[そもそも、最終章が完成していない。
今から印刷したら軽く一時間は掛かりそうで]
──
[どうしよう──と 四角い光を見ながら、悩む。]
(544) 2014/07/02(Wed) 15時半頃
|
|
[悪い──の加減を確かめようと 南方を見下ろして]
──…。
[>>540笑っているような表情に、目を瞬いた。]
(545) 2014/07/02(Wed) 15時半頃
|
|
[頭を振って、だめじゃないと示す。]
いいけど
あ、
[鍵。 渡し渋った──つもりはないのだが。 渋った──のかもしれない。
そして忘れていた。]
ごめん、鍵
[ポケットの中を探って]
あれ──…
(551) 2014/07/02(Wed) 15時半頃
|
|
[ハーフパンツのポケットも探って、 腰ポケットにも手を突っ込んで、 もう一度パーカーのポケットに両手を入れて、鍵を探す。]
……ない
[ポケットから出した両手を、 ひら、と南方の前で振った。]
(552) 2014/07/02(Wed) 15時半頃
|
|
[そのまま少し、溜めて。] …────なんちゃって。
[薄く笑って、 指の間に見えないように挟んでおいた鍵を 掌に乗せて南方へと差し出した。]
(553) 2014/07/02(Wed) 15時半頃
|
|
うわっちょっと、ごめん
[まさかそんなに驚くとは思っていなくて (叱られるとはもっと思っていない) げほげほ咳き込む様子に焦って背中を擦る。
そうして咳が落ち着くと、 まだ上下する肩甲骨辺りを撫でながら]
南方──サン、さ 歳一緒なんだから、呼び捨てでいいよ。
[全然関係ないことを、言った。]
(558) 2014/07/02(Wed) 15時半頃
|
|
[正面から見なくてもその心境が窺い知れる 皺の寄った眉間を見下ろして、 南方の口から語られるスペアキーの所在に]
へぇ──…
[軽く頷きかけて]
同棲?
[あれ、一緒に住んでたのかと、尋ねる。]
(564) 2014/07/02(Wed) 16時頃
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|
……それ いつ完成するの。
[モデルの確保手段に問題がありすぎる ──ような。
永遠に完成しない気がして、密かに心配になる。]
(568) 2014/07/02(Wed) 16時頃
|
|
そ。 じゃあ、その人明日一文無しになるといいね。
[物書きにとって、敬称──それも、 どこか必要以上に余所余所しい音──は、 意外と気になるところで、 南方に呼ばれるたびに、ずっと違和感を感じていた。
こんな小さな引っかかりは、 知られたところで他にもっと気にすることがあるだろうと 突っ込まれかねないので言わなかったけれど。
なぜか今、言葉は思いの外するっと飛び出して来た。]
──遊?
[二択を迫られ、自分が呼びやすい方を答える。]
(572) 2014/07/02(Wed) 16時半頃
|
|
[きっと呼び方も一つの境界線なのだ。
南方に呼ばれる時は、 他の人から呼ばれるのより強い線引を感じ取っていた。
それはそれで構わなかったが 不自然な“音”が排除されると、やっぱり少し落ち着いた。
うん、と頷いて]
今、読める?
[熱がありそうな高い体温を気にしている。 背中から首裏に手の位置を移し、 直接触れるとやはり相当に熱くなっていた。
それでも早く目を通して欲しい気持ちがある。]
(576) 2014/07/02(Wed) 16時半頃
|
|
……心があったかいから。
[手の温度を言われているのはすぐわかった。 よく、冷たいと言われるから。
子供の頃はそうでもなかった。 昔より身体を動かさなくなったせいかもしれない。]
ありがとう
[読めるか尋かれて読めると答えたはずなのに いつの間にか、読んで貰う立場になっていた。
短い感謝はその現れ。]
(580) 2014/07/02(Wed) 17時頃
|
|
うん、いい
[一人でも──]
どうせ書けない。
[とは言っても、 ここまで熱があると無理をさせるのは憚られる。
ここにはリラックス出来るソファもないし、 布団は普段クローゼットにしまわれていて、 滅多に日の目を見ない。
段々と温まる掌を南方の首筋に当てたまま、 良い方法はないかと考えた。]
(584) 2014/07/02(Wed) 17時頃
|
|
──……。
[同情の言葉に、僅かに目を伏せる。
好きなものを書いていて、 表現に苦心して書けなくなったのとは違う。 より良い場面を模索して行き詰まっているのとも違う。
どう──したいのかも わからない。
爽やかな、未来へ繋がる決意でも書けばいいのかもしれない。 けれどそれは、拒否反応が強い。 自分の中の感性が、そんな陳腐な結末を許容してくれない。]
(586) 2014/07/02(Wed) 17時半頃
|
|
今開いてるやつ。
[本人が読むと言っているのだから その意思に任せよう。]
待って、冒頭に戻す。
[振り返る南方の視線に招かれるように隣に進み、 開きっぱなしにしていたテキストエディターの スクロールバーのノブ一番上まで移動させた。
頁を捲るタイプではない。 ただひたすら、下にスクロールして読み進めるだけだ。]
(587) 2014/07/02(Wed) 17時半頃
|
|
[今──どんな風に、発熱と戦っているのか 興味がないわけではない。
きっと座っているのも辛い。 だろうに、さっさと寝ると言って部屋に戻らず 付き合ってくれているのが少し嬉しい。
けれど──南方が読み始めたのがわかると 遊の目は冷めたように、 感情をなくして機械の光を見下ろした。]
(589) 2014/07/02(Wed) 18時頃
|
|
[すぐに踵を返し、 キッチンでミネラルウォーターをグラスについで戻って来て]
薬 あれば。
[グラスをローデスクに置くと、南方の隣の床に直に座った。]
(590) 2014/07/02(Wed) 18時頃
|
ジャニスは、ミナカタの手に鞄を手渡し、様子を見ている。**
2014/07/02(Wed) 18時半頃
|
読み慣れてないと、二時間くらい──
…──いや、もっと、掛かるかな。
[読み始める直前におおよその所要時間を告げて、 クッションを使っていなければクッションを押し付ける。
読み易い言い回しや表現を使用した大衆小説だから 引っ掛かるところはない──だろう、きっと。]
(603) 2014/07/02(Wed) 20時半頃
|
|
[樹の幹をキューブ状に削りだしたものに 針を付けただけの時計が、パソコンの少し奥に置いてある。
南方が帰った時点で九時半を過ぎていた時計は、 今はもう十時半を回ろうとしている。
>>591怠そうに姿勢を崩すのは身体が辛い証拠だろう。 >>593ゴミは手で受け取って部屋の隅の屑籠に捨てた。]
──
[ありがとう──。 南方に言われるのは何度目だろう。 数えるほどか、初めてのような気がする。
無理をさせているこんな時に言われるなんて。]
(606) 2014/07/02(Wed) 20時半頃
|
|
[時間が掛かると言われて、 この状態の客人を放置して行けるほど 遊はまだ人間離れしていない。
言葉なく頷いて、大人しくしている。
少しして、雨の匂いに混じって油の匂いが鼻を掠め 床の上の畳まれた白衣に目をやった。 手を伸ばして引き寄せ、鼻を寄せる。
染み付いた油の匂い。 飛んだ絵の具。 夢の一幕を思い出す。
すぐに戻したけれど、 夢の終わりに見た故郷の風景が、淡く印象を残した。]
(608) 2014/07/02(Wed) 20時半頃
|
|
[途中で座っているのに飽いて、 ベランダから外を見たり床の袋を片付けたり。
それも飽きると、南方のすぐ後ろで横になった。
寒い>>600と訴えるのを聞くと 大きめのカーディガンと夏布団を取り出し掛けてやる。 空になったグラスに水を注ぎ足し、 ミネラルウォーターのボトルを隣に置いた。]
(611) 2014/07/02(Wed) 20時半頃
|
|
[それからまた、南方の後ろから 南方とその向こうの白を重ねて見える位置で横になり いつの間にかうとうとしていた。
この部屋で、パソコンを開いたまま 自然な眠気が訪れるのは久しぶりだった。
恐らくは、南方が羽織った白衣の匂いと 朝、部屋にいることを許してくれた 人の気配があったからだろう。
声は、眠りかけていた意識を唐突に現実に引き戻す>>604]
──…
……今月、新人賞の締め切りがある。 それに……応募する。
[少し眠そうな声が、起き上がる気配と共に答える。]
(616) 2014/07/02(Wed) 21時頃
|
|
最後は、
…────……最後は、多分、泣くんだ。
自然の厳しさと思い知って、 それでも感じる圧倒的な美しさに涙を流して、 歩き出す。 ──…未来、に向かって。
[波長の短い白光が南方の顔に陰を作る。 目の前の男が今どんな顔をしているかが見えない。
書いていない結末は、大分前から頭の中にはある。 そうあるべきと思われる筋が、漠然と。 決して映像として、実感を伴って広がる世界ではないそれを 自分の中から、出したくないのだ──。
語る声音は、珍しく重い。]
(634) 2014/07/02(Wed) 21時半頃
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──、
[忘れたと言ったはずなのに。 物書きとして、足りないものを指摘されたように感じた。]
…──ない。
[しかし今、嘘をついてもしょうがない。 目を伏せて、白い光から表情を隠すように俯いた。]
(643) 2014/07/02(Wed) 22時半頃
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どう──…
[顔を上げて、表情の見えない男へ問う声は 不安げに揺れる。
期待は持てない。 書いた自分が良いと思えないものを 読者が良いと思うはずがない。
それでも縋るように、尋く。
賞を──取れるかどうか。]
(645) 2014/07/02(Wed) 22時半頃
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──…あぁ、
[吐息に滲む落胆。
コンクールには出さない、つまり 画家という道を断念──あるいは保留するという意味の。]
南方は
[──諦めたくないんだ。
当たり前のことだ。 好きでなければ描き続けられない。 あんなに緻密に、あんなに執拗に。]
(663) 2014/07/02(Wed) 23時頃
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[その言葉は途切れて宙ぶらりんのまま 続く南方の言葉に埋もれる。
泣けもしない──と。]
……
[わかっている。 書き始めてすぐに気付いた。 これは自分が表現したいものとは違うと。
それでも賞を取るために、続けた。 今年中にデビュー出来なければ帰って来いと言われている。]
どうすればいいと思う。
[引き直されたライン上に上がり込み 答えをねだる。]
(664) 2014/07/02(Wed) 23時頃
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[諦めたくない。 来年の今頃もここにいて、 ここで生まれる言葉を綴っていたい。]
デビュー出来なかったら 来年 俺は ここにいない。
いられない。
だから──
(665) 2014/07/02(Wed) 23時頃
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[得られたのは、酷く簡潔で 酷く酷薄にも思える答え。
取捨選択を間違えている。
──そう言われた気がした。]
(679) 2014/07/02(Wed) 23時半頃
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書くためにここにいる。 書くためにここがいる。
例えば、ものにならなくても 他のものを全部捨てた結果、駄目でも
……書きたい…… と思う。
(683) 2014/07/02(Wed) 23時半頃
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[口にしてしまった。
愛情深い家族よりも 美しい故郷よりも 書くことが大事だと。
それと同時に、もう一つわかった。
自分が書きたいのは、やはり違うものだったのだ──と。]
(687) 2014/07/03(Thu) 00時頃
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