108 Persona外典−影の海・月の影−
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― 満月の夜/西部・ショッピングモール ―
[蝶は、ただ見ていた。 二人のペルソナ使いと、一人のシャドウの戦いの行方を。
嗚咽を漏らしながら友との別れを告げる姿を。 ただそれを、言葉少なに見つめるしかない姿を。
やがて彼らが場を立ち去ると、蝶はひらりと舞い降りる。 残された硝子の破片に口付けるように留まって、その翅を赤色に染めると、何処かへと消えた]*
(108) 2015/02/23(Mon) 15時頃
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― 満月の夜/東部・祟神神社 ―
[男は、ただ見ていた。 正しくは、見ている事しか出来なかった。 新たな自身を呼びだそうとも、声は音にならず、像は形を成す前に消え、己の痛みに耐えるだけ。
激しい炎の応酬に、痛みに半月を描く瞳が更に細まる。 けれどその炎の隙間より、振るわれる剣の軌跡が見えて――…
崩折れる身体。 対して愉悦に満ちた顔。 己の身体に仄かに癒やしの光が灯るのを感じても、上塗りするように襲うのは身を蝕む炎の熱。
せめて…と、無意識の内に伸ばされる男の腕の先に、青い蝶がとまるのを見た所で、男の意識は闇へ沈んだ]*
(109) 2015/02/23(Mon) 15時頃
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[真白い壁、真白い床。 鏡ほどではないけれど、色のつくそれが反射し、形を作る程度に磨かれたそれらに囲まれた一室で、男が眠る。
微かに上下する胸の動きがなければ、 生きているのか怪しいほどに穏やかな様子で。 音もなく呼吸する様は、ともすれば死人にも見えるか。 そんな男の瞼に赤い翅の蝶がとまり、奥に潜む水晶玉に吸い込まれるように消えてゆく。
じわり、と。
首筋に血が滲むように色が染み、既にある傷をなぞるに程近い箇所に線を作り]
(110) 2015/02/23(Mon) 15時頃
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[――――――――そして、男は目を覚ました]
(111) 2015/02/23(Mon) 15時頃
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― 中央部・崇神病院 ―
[緩慢な動きで起き上がり、身体が軋む感覚を覚えながらベッドから降りる。 その足で備え付けられた洗面所へ向かい、男を守る一枚の衣を、ゆっくりと外した。
首には二本の赤い筋。 背には以前確かめたように三本の抉るような傷痕。 胴には肩から脇下へかけてついた十字の刀傷に似た火傷。 胸の火傷は皮が盛り上がり、丁度肋骨の中心を突くように凹凸を作っていた]
………随分と、増えたな。
[新たに増えた首の傷を指で撫でながら呟く。 胸の十字傷には心当たりがあった。 自身のペルソナを傷つけられた時と、巡理へと振るわれた刃。
けれど、首の傷には心当りがない]
(112) 2015/02/23(Mon) 15時頃
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倒れたのはペルソナ使いか、それとも……
[外した衣を再び纏って洗面所を後にする。 男の右の瞳は、満月の夜のように赤く染まって――――…]*
(113) 2015/02/23(Mon) 15時頃
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― 満月の日・夕方/北部・埠頭 ―
[男が目を覚ました時には、満月の夜から1週間が経っていた。 結局外傷の後は残るものの、身体は至って健康体であった為、退院の許可は直ぐにおりた。 携帯端末には初めて二桁の未読と着信が残り、会社や得意先など方々への連絡を事務的に済ませた後、暫くの休暇を得ることが出来き、今に至る。
目を覚ました事は、その日の内に伝えてあった。 勿論、メール>>7で伝えられた真弓と、 危害を加えてきた律にそれを伝えることはなく。
真弓の正体を知れば、やはりと思うと同時に、見抜く力が翔子にはあったのだろうという結論に達した]
(114) 2015/02/23(Mon) 15時頃
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[相談したい旨の話が出ていたが、 それが送られていたのは満月の翌日。 既に話し合いも済んでいるのではないかと思い、「大まかな作戦なりあれば連絡を」とだけ返したはずだ。
雛宮律の正体を知っただろう花河あかりの事は気にかかったが、結局は本人次第である。 あの日、翔子がそう決断したように]
――――……。
[何処へ向かうべきか。 決めかねる男の足は、沈みゆく地平線を望める灯台から動けずに]*
(115) 2015/02/23(Mon) 15時頃
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― ベルベットルーム ―
影を切り離された人間は、 シャドウの海との繋がりを断てば意識は戻るのか? それとも、そのまま海と共に消えてしまうのか?
[世界が海とつながる直前、 男は室内にいる女にそんな事を尋ねただろう。
今まで何度も聞こうと思っていた事。 だけど、聞けずに引きずっていたこと。 確認してしまうと、決意が鈍ってしまいそうで。 けれど満ちる月を見てしまえば、聞かずにはいられなくて。
言葉は得られただろうか。 例え得られなくても、男は部屋を後にする。
―――――誓いを果たすために]
(162) 2015/02/23(Mon) 23時半頃
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― 北部・埠頭付近 ―
[ベルベットルームを後にして、さほど時間は経たなかったか。 今にも飲み込まれてしまいそうな、大きな大きな月。
あの日見た血のように、――――赤く、黒く。
世界は絶望の色に染まってゆく。 徐々に広く、深く、全てを覆うように。 吐き気を催すほどの気分の悪さは、相変わらず変わらない]
(165) 2015/02/23(Mon) 23時半頃
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………アレは、なんだ。
[群れを成して街へと進むモノを睨みつける。 背に走る悪寒は、恐らくそれらのせいだろうか。
あの日以来、『節制』は応えない。 いや、正確には、像を結ばないだけなのだが。 律の振るう剣に切り裂かれたことで、男の中にある心象を傷つけられたのだろう。 完全な形として姿を形作る事なく、己の中で霧散してしまう。 朧気に力の片鱗を扱う事はできても、今までのようには振るえない。
男に今残るものは、怒り、憎しみ、そして―――――]
(166) 2015/02/23(Mon) 23時半頃
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とりあえず、アレが来た方向に行ってみるか。
[数を見るに一人での処理は厳しいと判断して、大元がいないか探る事に決める。 向かう先は石油コンビナートや造船ドックが並ぶ工業地帯。
もし、人の姿を認めるならば、用心深く近寄るだろうか]*
(167) 2015/02/23(Mon) 23時半頃
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― ベルベットルーム ―
いや、そういうものじゃない。
ただ…… そう。ただ、少しだけ…… 救いがあればいいと、甘えていただけだ。
[女の言葉に、男はそう返した。 締めくくる言葉には、「心に留めておく」と告げて]*
(188) 2015/02/24(Tue) 00時半頃
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― 北部・造船ドック周辺 ―
残念ながら、俺一人だ。 デートの誘いに来たつもりだが、別の待ち人でもいたか?
[ロングコートと革手袋で、黒一色に身を染めた男が告げる。 右の瞳を血で赤く染め、その肩には青色の蝶を一匹伴わせて]
さっきの一行がお迎えのつもりだったのなら、申し訳ない。
[紡ぐ口元は歪んだ笑みを浮かべた]
(189) 2015/02/24(Tue) 00時半頃
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そうだったのか。 これはとんだ勘違いを……いや、それも僥倖か。
[女の笑みに歪みを深め、酷悪さを増す。 告げられる言葉に目を細め、肩に留まる蝶を、くしゃり、と握り潰した]
……ああ、始めよう。 ―――――命を刈りとる戦いを。
(200) 2015/02/24(Tue) 01時頃
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[掌を広げれば、そこには『戦車』
――――――――男の怒りを表すモノ]
(201) 2015/02/24(Tue) 01時頃
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ははっ……これはまた大層なものを。
[その迫力に、気圧されぬ者などいるのか。 海面に浮かび上がる、己の背と比べるまでもない巨大な帆船に。 船の辺りを漂う鬼火は、今まで取り込んだ者たちの数なのだろうか。 数える気も滅入るほどの有り様に、男の口元は歪んだ半月を作り出す]
………そこまで辿り着いてみせろ、と?
[男は未だ自身を呼び出さない。 その掌に一枚のカードを示すだけ。 けれどその背には、一対の翼が顕現していた]
いいだろう。やってやろうじゃないか。
[そう言うと、男は帆船の浮かぶ海へと走りだす。 風の加護を纏い、その翼をはためかせて空へ飛び出した]
(234) 2015/02/24(Tue) 02時半頃
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