78 わかば荘の薔薇色の日常
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[間中が呟いた言葉は彼なりの答えに聞こえ、>>2:683 返答に、ほっとして、咳をひとつした。 「いいな」と、肯定するような、羨むような小さな声の後]
もし全部要るなら。 後は。
――それこそ他人を泣かすくらい、 圧倒的でないと。
[間中が床に片手をついて身を乗り出している。 間中の頭に、あつい手を乗せた。]
(6) gekonra 2014/07/03(Thu) 00時半頃
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[>>4 間中が、闇の中、目を凝らしている。 床に転がったまま顔を見上げた。 この距離なら、苦笑いをした南方の表情も、見えるだろうか。]
――。 ……。
[もう一度聞かせろというから、正直に――]
あんまり。
[面白い、という言葉を、否定した。]
(7) gekonra 2014/07/03(Thu) 01時頃
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[時刻は殆ど深夜だ。 熱をもった手の下で、短く柔い髪が、間中の頭が、しっかりと頷いていた。>>15]
(21) gekonra 2014/07/03(Thu) 02時半頃
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[文章の感想を正直に伝えた。 さっぱりとした間中の笑顔があった。>>16 次いで、ぽつ、と、短く礼を言われた。>>17 額を冷えた手指で撫でられた。 じっとしていろと言われたようだった。 寝転んだままの南方の体を跨ぎ、 間中はノートパソコンに向かっている。]
(22) gekonra 2014/07/03(Thu) 02時半頃
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[眠ってしまいそうなぼんやりした目で、白い光を眺めている。 モニターに表示された文字から、間中がしたことを理解した。 ほんのちょっとの操作だった。 それで酪農家の青年の物語は、すっかり、無かったことになったらしい。 行儀のいい過程の物語も。青年が見た嵐の後の風景も。]
…………あーあ。
[笑い混じりに呆れたようにそう言って、布団に転がったまま、目を閉じた。 眠気が押し寄せてくるのに任せ、今朝のお返しに、このまま眠ってしまおうと決める。]
(23) gekonra 2014/07/03(Thu) 02時半頃
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……次の期限きめねえと。 ないとおわんねーよ。
[小さく笑ってから、夏用の掛け布団を頭まで被った。]
(24) gekonra 2014/07/03(Thu) 02時半頃
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[体が痛い。 かたい床で眠った時の痛みと、寝汗と、足の痺れを感じた。 布団のにおいだ――ここが自宅ではない事を思い出す。 目蓋をあける。]
――……
[間中の顔が見えた途端、夢の内容を全部忘れた。 ポケットに入りっぱなしになっていた携帯を引っ張りだし、時間を確認する。 やっぱりいつもの時間に目がさめていた。休みなのに。 不満気にため息をついて、携帯を置く。]
(34) gekonra 2014/07/03(Thu) 15時頃
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ぁふ……
[欠伸をした。 暫し眠った間中の顔を暇つぶしのように眺めていたが、寝ている人間を見ていたら、起きているのがあほらしくなってきた。 しびれた足をさらに圧迫しないように、横になったまま、体を少し動かして、もう一度目を閉じる。]
(35) gekonra 2014/07/03(Thu) 15時頃
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[それから寝付く間に、息をするのが随分楽になっている事に気付く。今は風邪による頭痛も偏頭痛も鳴りを潜めている。 寝起き特有のだるさはあるが、火照りも寒気もなかった。
――なんだ。 今日休む必要は、多分なかった。
高熱の後、風邪はすっかり治っていた。 南方は、休日らしく、二度寝を楽しむことに決める。**]
(36) gekonra 2014/07/03(Thu) 15時頃
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― 朝……昼? 201号室 ―
[南方を二度寝から目覚めさせたのは、台所から聞こえる物音だった。>>33 因みに間中が南方の首へ触れた時の体温は、仮に計ったとすれば、36度7分でありやや高めなものの既に風邪の範疇にはないと判断出来たかもしれないが、計らなくとも風邪は治る。良かったね。]
(37) gekonra 2014/07/03(Thu) 15時半頃
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[間中の姿を見ないまま、寝返りをうつ。 横になったまま顔を顰めて伸びをして、壁に手をぶつけた。 物音から、その辺にいるだろう事が分かったので、挨拶をした。]
うんんん…… おはようございます……
……あぁ……
[まだ寝転んだまま、ぽつりという]
寝過ぎたな……
(38) gekonra 2014/07/03(Thu) 15時半頃
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[間中の裸足が顔の横を通過していくのを南方は視線で追う。 もう少し視線をずらすと、間中の持つカップの底も見えた。 机にカップが乗る硬質な音を聞いた。 間中が、傍に座るまで、見える範囲の部屋の主の仕草を追った。 ――今は顔を覗きこまれている。]
ないない。 ていうか一回起きたし……
[間中に寝坊を笑われている。 口元に手の甲を置いて欠伸をする。]
おきるかぁ……。
[手を床について、半身起こすようにしてから、あぐらをかいた。 暑かったので昨夜羽織った間中のカーディガンを脱いで畳み、布団の上へ置く。]
(40) gekonra 2014/07/03(Thu) 15時半頃
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へっ
[なにか残念がっているので鼻で笑った。>>41]
間中サン寝てたし二度寝しちゃった。 ……あぁ違う。遊ね。
[クッションを譲られたので素直に受け取り、座る。 カップが差し出されて「あぁすいません」と礼を言い、ひとくち飲んだ。 味というより、水分とカフェインにありがたみを感じる。]
(43) gekonra 2014/07/03(Thu) 16時頃
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[カップから視線をあげると>>41 咳で枯れた喉の名残と、菌と戦い続けた鼻の名残だけ残した声で返事をする。]
おー……平気。 すげー調子よくなった。
[おかげ様でと言おうかと思ったが、気遣いも受けたが同時に無理もした自覚があり、やめる。]
熱出た時はなんか早いんだよね。
(44) gekonra 2014/07/03(Thu) 16時頃
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[いい紅茶である事に気付かないままカップの中身をまたふたくち、減らした。 唇をはなして、コロンとした形のカップをしげしげ眺めていると、声がかかって、視線を持ち上げる。]
なに。
[普段通り、機嫌が悪いか怒っていると誤解されやすいぶっきらぼうな返事のしかたをした。]
(46) gekonra 2014/07/03(Thu) 16時頃
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[間中の質問を受けて、返答までに、思考が挟まる。 挫折と、モチーフの好みに関する比較、すき、という言葉そのものに関してが、頭のなかで散らかって、即答出来なかった。>>47]
――、 そうだね。
[肯定する。]
(49) gekonra 2014/07/03(Thu) 16時半頃
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[席に戻った間中は、黒いブツブツが入った飲料に太いストローを刺している。 もう絵の話はいいよ、と、言おうかを迷って、視線がまたカップに落ちた。]
(50) gekonra 2014/07/03(Thu) 16時半頃
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[間中の質問の意図はなんだろう。>>51 嫌な話題を引き伸ばされているような居心地悪さを感じながら、なるべく「そのままの事実」だけを意識して、返事をする。 そうでなければ、感じが悪いか、惨めっぽい話の切り方をしてしまいそうだった。]
――いや。 そもそもアレはモデルが居なきゃ始まらねえし。 絶対一枚づつ描くってわけでもねえから。
[モデルがいなければ、名画の模写、静物、風景、描くことができれば、なんでもいい。 間中は見ずに帰ったが、あの絵の他のキャンバスには、様々な訓練の痕跡がある。]
(52) gekonra 2014/07/03(Thu) 17時頃
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……?
[意図が、理解できない。 束の間、南方は目を大きくひらいたが――難しい顔をする。
意図が汲み取れないまま、楽しく描くことが出来なくなってきている事実が、いつ手を放すのだろうという嘲りにも似た怯えが、どうしようもない焦燥が、まるで希望を持っていない事が、全部その一言で明るみにされたようにかんじた。――また自分の敷地を踏み荒らされているように感じた。 大きな石をどけた下から、暗がりを好んで住んでいた大量の虫が這って出るように、いっぺんに感情がざらざらと背中を過ぎる。
半笑いになった。 さっき鼻で笑ったみたいに、小さく笑い声をたてた。]
(55) gekonra 2014/07/03(Thu) 17時半頃
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……――間中サンさあ、
[もう、絵の話はやめよう。 今度こそ、言おうとした。 名前を呼ばなかったことを訂正しなかった。 明確に見えない線を引いた。 続きの言葉に、口を噤む。]
(56) gekonra 2014/07/03(Thu) 17時半頃
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……――
[何も、言えなくなった。]
(57) gekonra 2014/07/03(Thu) 17時半頃
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……――なんだそれ。
[紅茶を飲んだばかりなのに、喉が乾いている錯覚がある。 半笑いのまま、何をいっていいのか分からなくなって、ぽつりと言った。]
(58) gekonra 2014/07/03(Thu) 17時半頃
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お前、ほんとに、物書なんだね。
[――正しく感情は、伝わらなければいいと、思った。 なるべく突き放した声に、嘲りや皮肉として聞こえればいい。]
(59) gekonra 2014/07/03(Thu) 17時半頃
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[――間中は未だきょとんとした顔をしていた。]
……。
[あまりにも当然のように、まだ返答を待っていた。 話が、おしまいにならない。 まだ答えを貰ってないから、言葉の続きを待っている。]
(63) gekonra 2014/07/03(Thu) 18時頃
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[わかったと、返事をすれば、上っ面だけの返事になりそうだ。 いやだと、返事をしては、事実になりそうだ。]
――、
[だから、]
見なくていい。
[切羽詰まって聞こえないよう、なるべく、ぶっきらぼうに、面倒くさそうに言った。 見なくていい。間中には不要だ。 それは間中にとっての事実だと、南方は、考える。]
(64) gekonra 2014/07/03(Thu) 18時半頃
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[南方は、また、104号室の扉を、自ら閉めず、重みにまかせて、あるがまま、放ったらかしにした時のように――]
好きにすれば。
[面倒くさそうさを声音にのせて、言った。]
(68) gekonra 2014/07/03(Thu) 18時半頃
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[しかも注文がついた。]
……あぁ?
(69) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時頃
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……お前なあ。
[それでも、その注文に応えるには、時間が必要だ。 だから時間稼ぎをする。その時まで、きちんと練習を重ねるために。]
――遊が。 賞とったらね。
(71) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時頃
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[間中が細い肩を竦め、肯定を返した。>>73]
じゃ、宿題な。
遊が入賞したら、俺は好きに描く。
[口にしてみると、馬鹿馬鹿しい位の好条件だった。 魅力的な事しか声に乗せていなかった。]
(79) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時半頃
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[最初から最後まで、好きなように。 妥協や媚びではなく。 こちらは、意外と困難に思える。]
いいよ。
[何より時間を捻出するのが問題に思えるが…… ――まだ先の事だと判断して、さておいた。]
(80) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時半頃
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[昨夜、素人に「どう」と正否を求めようとしていた間中がわらっている。したり顔で。 たった一晩でこのざまだ。 なんてふてぶてしい。
――傲慢でないよりも、ずっといい。]
(81) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時半頃
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は? モデルって、ずっと動かねえやつだよ? お前できるかな……
[出来るのなら、違うモデルを使うのは、いい気分転換になるだろう。描いてみたいかどうかでいえば――確かに、描いてみたい気もする。]
(82) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時半頃
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[色が好きだった、と言うのに、小さく、笑い声をたてる。 何人も観察し続けて挑んだ末の「いい」と思って載せられる色だ。 たとえ今現在定番として成り下がっていたとしても――]
お前ね。 10年早いよ。
[知りたい、というそれに、口の端を歪めた。 挑戦を待つように、にやと笑った。]
(83) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時半頃
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[間中が約束だと言い切った。]
(84) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時半頃
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ん。
[頷くのは、難しくなかった。]
(85) gekonra 2014/07/03(Thu) 19時半頃
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変なやつ。
[動かないのは得意、楽しみだと言う間中を鼻で笑った。 この変人が何の見返りも求めずそんな事をするという筈がないのだから、モデルを引き受けることで、向こうにとっての利益はなんらか満たされると考えているのだろう。>>86]
(92) gekonra 2014/07/03(Thu) 21時半頃
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[部屋の主は書物をはじめるらしい。 パソコンに向かう後ろ姿を暫し眺めた。 昨夜の暗い部屋はモニターの光ばかりぽっかり浮かび上がり、顔のシルエットばかり白々と強調していたのに、今は窓からの日を取り込んで、明るい。 部屋の壁を取り囲んで、闇に紛れて室内を見張っていた本達も、背表紙に正体をくっきりと主張し、何者であるかを煩いくらいに名乗っている。 間中は、『要る』と言ったこの場所で、次にどんな物語を綴るのだろう。 それは当然、想像したところで、詮無い。 この変人が、文章の中で自由に勝手を始めるのだというのだから、予想出来ようはずもなかった。]
(93) gekonra 2014/07/03(Thu) 21時半頃
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[さて退散するかと思ったところで――]
…………――
[盛大に、間中の腹が鳴った。>>88]
(94) gekonra 2014/07/03(Thu) 21時半頃
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[同意を求められた。 同意するまでもなく間中が空腹なのはよくわかった。]
うん……なんか食えよ。
[呆れ半分に頷くも、南方も、昨夜は食べ損ねている。 間中がパソコンの画面を閉じるのを横目に立ち上がった。 たっぷり睡眠をとったかわりに、バキバキにかたまった体を伸ばしたところで、間中ほどではなかったが、腹が鳴る。 南方は、「あ」と小さく声をあげた。**]
(95) gekonra 2014/07/03(Thu) 21時半頃
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― ほとんど昼だね201号室 ―
[コンビニ袋が置いてあるなとは思っていた。 まさか中から要冷蔵商品が出てくるとは。]
間中サン。 夏になるんですよ……。
甘いものは好きだけど。
[手のひらを見せて首を横に振り、丁重にお断りした。 多分間中が気をつけるべきは食中毒だなと思う。]
(130) gekonra 2014/07/04(Fri) 05時半頃
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ミナカタは、殴られ無さそうだから押し付けられかけたとは知らない。
gekonra 2014/07/04(Fri) 05時半頃
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[――まずそうなエクレアと管理法に心の距離をとったのだ。 わざとだ、わざと。 そう思いながらも、面倒臭がって名前の訂正に曖昧に頷く。]
……どんくらい経ったやつかしらんし……。 期……限が平気なら?
[言ってはみたがやっぱり食べたくない。 間中はエクレアを袋に戻す。 それ仕舞ってどうするつもりなんだろう……と動作を見守った。 結局人に押し付けるつもりでいるのは分からなかったし、知りたくもないので追求しなかった。]
(134) gekonra 2014/07/04(Fri) 06時頃
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[袋に手をいれているのでまだ何か出てくるのかと警戒したが、案外まともなものが手渡された。 貰った飴の包み紙を開けて、ひとつ口にいれる。]
……どうも。
[飴を舐めたままやや不明瞭に礼を言う。 鞄を拾い上げ、間中と共に部屋を出た。 談話室へ誘われたので、南方は「や」と何か言いかけるも、間中の思惑を聞き――]
おい。今聞き流しそうになったけど すっげー当然のようにアテにしたよな!?
……猫とかの発想だって、それ。
[ついていけない。 呆れていると、服の裾が、つん、と引かれた。]
(135) gekonra 2014/07/04(Fri) 06時頃
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……ん、?
[何だろうかと、足をとめる。 なに、と聞く前に間中の顔が急に近づいてきた。 身を引こうとしかけるが、髪が頬に触れた。 首の間近で空気がうごくちいさな気配と、くん、と鼻で空気を吸う音がする。]
……わ、――かってるから嗅ぐんじゃねえっ。
[談話室への誘いを断りかけた理由だ。 温度を感じそうなほど近い間中の額へ手をやって、ぐいと押し戻し、ついでに一度額を叩いてやった。 気恥ずかしげに舌打ちをしてシャワーと髭をなんとかしろという間中に「はいはい」と頷く。]
(136) gekonra 2014/07/04(Fri) 06時頃
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[階段を降り、104号室の前で、南方の歩が止まる。 そのまま廊下を進む間中を見送るでもなく、昨夜返却された鍵を鍵穴にいれて回す。ドア枠を跨いだ。 ドアが閉まった直後、鍵が再び施錠される音。**]
(137) gekonra 2014/07/04(Fri) 06時頃
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― 昼:104号室 ―
[間中の部屋から自室へ戻った南方は、窓を開けて換気をした。 視線を横へ……壁際へとずらし、描きかけの絵を見る。]
……。
[近寄り、キャンバスの木枠を掴み、壁にたてかかって軽く斜めになったそれを、まっすぐに起こして、暫し、そのまま。 絵に狂いがないか確かめるよう、やや大げさに、ゆっくりと首を傾げ――手を放した。 くるりと背を向けた。]
(280) gekonra 2014/07/05(Sat) 09時半頃
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――うーん。
[窓をあけた次に、洗濯機の前で、鞄から取り出した畳んだままの白衣に、鼻を近づけていた。 ……もしかして。汗臭かったろうか。 間中に言われて心配になった。 間中の部屋で、変人が何故か嗅いでいるなあとは気づいていたが、その時は油絵の具のにおいが気になってそうしているんだとしか思わなかった。 そういう意味じゃなかったとしたら相当イヤだ。すごくイヤだ。 また小さく心配そうに唸りながら洗濯機に白衣を入れた。
鍵の紛失と風邪とたまたまの外泊の間で珍しく溜まった洗濯物を片付けてしまわなければならない。幸い、天気もいい。 溜まった洗濯物と、今着ている服も放り込んだ。
洗濯機を使いながらではシャワーの水量に些か問題があるので、スイッチはまだ押さず、先に風呂を使う。]
(281) gekonra 2014/07/05(Sat) 09時半頃
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[長めに湯を使った。 熱でたっぷりかいた汗も流れた。 髭も伸ばしている分は残しつつ剃った。 間中に嗅がれた首を、こりをほぐすように強めにさすった。
湯上がりでまだほかほかしながら服を着る。 洗剤をいれてから洗濯機のスイッチを押す。 ――何十分か後、ベランダに洗濯物を干す南方があった。]
(282) gekonra 2014/07/05(Sat) 09時半頃
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[洗濯物を干し終わる。 日差しが中々強烈であるので、今日は早く乾きそうだ。 さて、次に空腹を何とかするかとへりっぱなしの腹をさすり――それまでの繋ぎにするかのように、貰った飴をもうひとつ食べた。
いつもどおりコンビニに出かけて弁当一つを買って戻る。 ――さて、一応天露の折りたたみ傘も持ってでたが、彼の居る日だったかどうか。]
(283) gekonra 2014/07/05(Sat) 09時半頃
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― 夜?:104号室 ―
[それは、イーゼルに大きなクロッキーブックを置き、エスキースにとりかかっていた時の事だった。]
(284) gekonra 2014/07/05(Sat) 09時半頃
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[取り立てにあった事などないが、平井の同業者が借金の取り立てに来たか、或いはやはり緊急の、それこそ死人が出たかもしれないと思えるような勢いで、ドアが、壊されるのではないかと思うほど、強か叩かれている。 同時、ドアの向こうで人間が近所迷惑な程叫んでいる声がした。 驚きビクッと跳ねた手が、イーゼルに打つかって、置かれていた鉛筆が床へ飛び降りて芯が折れた。]
…………………。
[なんの用か、阿呆がやってきたことが、声でわかった。 面倒くさそうに鉛筆を拾って作業台に置く。 ――すでにそこには、鍵が云々と書かれたメモはない。 間仕切りの向こうへいくと、ピシャリとカーテンを閉めた。]
(285) gekonra 2014/07/05(Sat) 09時半頃
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[ドアノブを掴む。 ドアを押し開けた。 南方は芸を壮絶な険相で出迎えた。]
(286) gekonra 2014/07/05(Sat) 10時頃
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う るっ せぇ ん だ よ !!! 叫ばねぇで喋れねぇのか!
何の用だ、何の。
(287) gekonra 2014/07/05(Sat) 10時頃
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…………。
[芸は、汚い感じの水を持っていた。]
……え? たまご酒っつった?
[どれが?……それが?]
(289) gekonra 2014/07/05(Sat) 10時頃
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[芸の双眸は、悪気なく、きらきらと廊下の照明を反射させて輝いている。 散歩に行くよと声をかけられた若い犬が、リードをつけてやる前に「座れ」と言われたのに即反応して「できたけど!?できたけど!?」といった様子でべろを出したまま人間を見上げている時の顔に似ている。]
…………。
[まずは、たまご酒→風邪、この過程を理解する。 次いで、風邪→なんで知ってるの?→多分間中 ここまでも理解した。]
風邪は治ったんですよ。
[芸の修行で鍛えた手指がシッカリと掴む湯のみを眺めた。 温度を想像する。湯気が確認できないのも気になる。 自衛として、まずはたまご酒を受け取る必要のない状態だという事を伝えた。 だって、たまご酒を主張しているのに、どう見ても湯のみのなかに何か丸いものが見えている。]
(291) gekonra 2014/07/05(Sat) 10時頃
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[けれど、シュンとされてしまえば、せっかくだから一口くらい味見すると言い出してしまうだろうし、勢いや熱意にまかせて湯のみを差し出されたら断りきれずに結局味見を考えたろう。
芸の反応がどんなものだったかは、さておくとして、南方は湯のみを受け取ってしまった。]
(292) gekonra 2014/07/05(Sat) 10時半頃
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[中身を、相手の手元にある状態でよく見なかったのは間違いだった。手元で改めて湯のみの中身をよく観察してから、失敗だったなと気づく。]
なんか……浮いてるな。色々……。
[丸いのが浮いている。これは名前の通りで、卵であることは間違いない。 白身に包まれた柔いピンク色の黄身(多分半熟であるが別に喜ばしくない)をもった卵が――肌の白いうみぼうずが、ゴミの海を漂っている。 ゴミの海だと感じたのは、茶色い水に、茶色いブツブツが浮いており、卵や湯のみの壁にこびりついていることと、赤か茶の、なにがしかの油が玉になって浮いていることが原因だ。 受け取って、掴んだ湯のみは、あったかい。 もとい、ぬるい。]
(293) gekonra 2014/07/05(Sat) 10時半頃
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……これ飲めるやつなんだよな?
[どうせまずいだろうことは見た目でわかるので、相応の覚悟は出来た。 あとは覚悟を上回るかどうか、程度の問題だ。 食品以外が入っている、という事がないかどうかだけは確認をしたかった。キッチンにある洗剤や生ごみなどを思い浮かべる。 泡はたっていない。洗剤は大丈夫そうかと思ったが、洗剤が油分に負けて泡が立たない想像を、必要もないのにしてしまって、ますます不味そうに見えた。]
(294) gekonra 2014/07/05(Sat) 11時頃
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[わかっている。 これは警戒すればするほど飲めなくなるパターンの代物だ。 だから覚悟を決め直す。 ちょっと飲んだら満足して芸は去ってくれるだろうと期待して。 南方は息をとめて、一口くちをつけた。 水気が口の中に、わずかに流れこむ。 勢いをつけてゴクッと飲むほどバカにもなり切れなかった。 けれどおかげで浮いた油ばっかりが口の中に流れ込んできて、舌に油が絡まって、ベトベトした。 塩気と辛味と酸味と甘味――ん〜〜もうよく考えたくない味だ。 判断が出来ないという事は人間にはある。人間なのだ。書道家も言ってる。 南方は目一杯顔を顰めてから――]
あ
[小さく、ひとつ、気付きのように声をあげて、驚いたように――]
(295) gekonra 2014/07/05(Sat) 11時頃
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臭え。
(296) gekonra 2014/07/05(Sat) 11時頃
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……くっせえ。
????
くせぇ……なに……?
[ラー油とシナモンと酢と酒と醤油とウスターソースは全部におう。]
(297) gekonra 2014/07/05(Sat) 11時頃
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……――ふっ……
[笑ってしまった。 しずかに。諦めたように。目を閉じて。
臭くて。
あんまりひどくて。
多分、人生で一番悪意に満ちた飲み物だと思ったので、もう一口くらいは試しておくことにした。酒の味は消えていた。強いていうなら感触にだけアルコールを残している。 塩気と辛味と酸味と甘味は、塩気が一等賞、酸味が二等賞、辛味が三等賞、甘みがビリで、苦味が残念賞程度にある。 何故か漢方の力を感じる薬臭いような正体不明の匂いがあるのだが、これだけ混ぜ物をされている以上何が起きているのかは不明だった。ささやかに恐怖を感じるが、不味いという気持ちが心を占めているせいで、不思議とあまり気にならなかった。]
(298) gekonra 2014/07/05(Sat) 11時半頃
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[そうして、何だか分からない濁った茶色い飲み物を、油にまみれた固まりきらなかったヌルヌルの白身が、喉奥に入れてしまおうとした際、人間としての正しい反射で、吐きそうになった。 口を押さえた。 ――吐きそうといったが、正確には本当に軽く逆流したけれど、既に口の中が不味いので諦めて戻ってきたのごと飲んだのだ。 南方は、口を抑えたまま、顔をあげる。 顔を顰めていた――吐きそうになったせいで涙目になっていた。 けれど、少しの間をおいて、]
攻太。
[やけに真面目な顔をした。 口のなかが空になったので喋れている。 眉間の皺も消えていた。 湯のみをそのまま芸に返却した。]
(299) gekonra 2014/07/05(Sat) 11時半頃
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修行だ。 一回飲んどけ。
余ったら。 遊は俺の風邪を貰ってるかもしんないから。 風邪をひいたら大変だから。 ぜんぶあげろ。 遠慮しても、ぜんぶあげろ。 [間中が風邪をバラさなければ、こういう事にはならなかった。 ドアでの立ち話の姿勢で味見をし終えた南方は、穏やかに笑った。笑顔だった。笑顔じゃなくなった。]
(300) gekonra 2014/07/05(Sat) 11時半頃
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お前味見してねぇだろ!!!
[叱りつけてドアを閉めた。鍵をかけた。 口を濯ぎに行った。**]
(301) gekonra 2014/07/05(Sat) 11時半頃
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― 夜?夕方?:104号室 ―
……え゛ぇっ……
[口を濯ぎ終えてなお、油でぎとぎとの卵酒は悪夢のような胸焼けのようなムカムカ感をもたらし、流しでえずいた。 幸か不幸か吐くことはなく、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出して、そのまま口をつけてのみ、気持ち悪さを誤魔化した。 風邪の時に使ったカップやグラスも片付けられて、流しには、もう洗い物はひとつも残っていない。]
(318) gekonra 2014/07/05(Sat) 19時半頃
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[――油を流すために温かくて味のついた飲み物が飲みたい。 談話室のコーヒーを思う。 南方は部屋につかつかと戻って、鍵を引っ掴んだ。 その足元には、ゴミ箱がある。 中には二つに畳んだ紙の切れっ端が入れてある。 間中宛の書き置きにしていたものだ。
南方が、書き置きに対する間中からの返答に気付いたのは、コンビニから帰宅してから。 作業台に乗せっぱなしのメモを捨てようと手にとったその時だ。 南方自身のでかでかとした字が書かれていない隅っこに、鉛筆で書かれた細く小さな文字を見つけた。>>2:=151]
(319) gekonra 2014/07/05(Sat) 19時半頃
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― 昼下がり:104号室 ―
(――……)
[スペアの鍵を持って出たと思ったのだろう。多分。 帰宅時間に対する返事と、遅れた時にどうしていて欲しいか、また、緊急時の連絡先が丁寧に記してあった。 文字の雰囲気や電話番号がどうこうよりも、普段の言葉不足で一瞬何を言いたいのか理解に苦しむような、短くふんわりとした言葉でない事が気になった。 じつに雄弁だ。 主語も目的語も行方不明にならない丁寧な口調だ。 昨日の深夜に読んだ小説もそうだったが、書き文字で、自分宛に書かれてあると、益々、ひとつの感想をつよく思う。]
(……意外と人間だ)
[メモを二つに折り曲げながら、いっそ筆談で喋ったほうがいいのではと考える。 次に会って覚えていたら言ってやろう。**]
(320) gekonra 2014/07/05(Sat) 19時半頃
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― 談話室 ―
[コーヒー飲みたさに、談話室へ行った。 部屋に戻らずそこに居る事にしたのは、間中か管理人あたりから言い渡されたせいか、それとも存在感あるチャルラタンのホールケーキ二つが机に並んでいたせいか。
暇そうに談話室で待機を続ける際、部屋の端に「安曇野のおいしいもも」とでかでかプリントされた、やけにいいにおいのする箱を見つけた。 「間中果樹園」とある。へえ、と思う。 小説内の風景描写が、やけに美しかった事を思い出した。]
(331) gekonra 2014/07/05(Sat) 21時頃
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― バースディパーティ ―
[――ああ。可哀想に。 あまりの居た堪れなさから、徹津を憐れに思った。 恥ずかしいのではないだろうか。 いやでも、どことなくふわっとしていて、天然っぽい印象を受けないではない。 もしかすると、この状況を素直に喜び、楽しみ、嬉しがることが出来る鉄の心臓の持ち主かもしれない。
周りからバースデイソングの斉唱が聞こえている。 全員成人男性という異質さだが大丈夫だろうか。 ――少なくとも俺は大丈夫じゃない。 野太い。つらい。 針の筵といっていい恥ずかしさがあると思う。 友人の誕生日なんて殆ど覚えていたことがない。 彼女であればかろうじて。 この状況が完全に異文化だった。 かろうじてまばらに起きた笑いや拍手に曖昧に参加した。 それでも耐える必要があった。この恥ずかしさを乗り切れば、誘いのままケーキにありつく事が出来るのだから。
一応よく知らない徹津に「おめでとう」と、つい、「おつかれさん」という同情めいた一言をかけてしまったのは、歌などが済んで、自由にしても良くなってからの事だろう。**]
(332) gekonra 2014/07/05(Sat) 21時半頃
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― ちょっと前の談話室>>333 ―
まいど。
[ポットを火をかけ、コーヒーサーバーを取り出していたところ声をかけられて、視線を向ける。宇佐美だ。言われたままの挨拶を、そっくりそのままかえす。]
え。いいの? やった。自分で淹れてもうまくねぇから頼むわ。
[それ程話す機会のない宇佐美の親切に、せめて愛想よく、と、に、と笑みを返しておいた。宇佐美に場所を明け渡し、暇そうに桃の箱をみていると、ちょうど、それに関する話題になった。]
さあ。間中て書いてあるからそうなんじゃねえの。 うまそうだよね。
[宇佐美は冷蔵庫横に備え付けられた伝言メモをぺろりと破り、何か書きだした。彼のいう、「似てる」とはどういう意味だろうか。書いたメモへの感想を求められたので、桃箱に近づいて、桃の隙間に放られたメモを拾い上げ、まじまじみる。 そこにあったのは、落書きだ。書き慣れた風のない筆運びながら、なかなか特徴は掴んでいるように思えて、頷きながら笑ってしまった。]
あー。わかる。にてるわ。 ちゃんと目細くて何考えてるかわからんくて怪しいわ。 あ、いや。砂糖も牛乳もいれなくていいよ。ありがとね。
(344) gekonra 2014/07/05(Sat) 22時頃
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― 談話室で宇佐美と>>347 ―
[似顔絵の腕前を誇る宇佐美に、微笑ましさからうん、と頷いていると、一瞬で矛先はこちらへ向いていた。 絵の話題からはできるだけ逃れたいが、断るのも妙だ。 間中との会話から一日も経たないせいもあって、どこか気軽になっていたところも、あるのかもしれない。]
……お。やってみ。 どれ、見ててやろ。
[そういって、17秒間の観察の後、生徒の手元を見る時のように、宇佐美がたどたどしくペンを走らせるのを覗きこんだ。]
……………………。 ……んんんん……?
[ちょうど、(="=) ←という顔という顔で首を傾ぐ。]
なんかさあ。最近ココの皺指摘される事増えたよ。 そんな寄ってる?
[眉間の皺を触ってから、コーヒーとメモ紙を受け取った。 宇佐美とコーヒーを啜りながら、まだメモ紙を見ている。 気楽な絵だ。微笑ましいと同時、羨ましい心地さえした。**]
(350) gekonra 2014/07/05(Sat) 22時半頃
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― 談話室で宇佐美と>>347 ―
えっ?
[意図してなかったということだろうか。 宇佐美に聞き返されて、聞き返していた。 「えっ?」「えっ?」と互いになってしまって、微妙に気まずさを感じながら、眉間に対する曖昧な同意を受け取った。]
そうかあ……まあ、どうにもならんわな。
[眉間じゃないならなんのつもりだったのだろう。 生徒相手ならば伝わらなさは「伝わらないよ」と返して終わりでいいのだが。 訂正することもなく宇佐美はコーヒーを飲み干して去った。 位置的に、あるとしたら前髪のことだったのだろうか……**]
(355) gekonra 2014/07/05(Sat) 22時半頃
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[チャルラタンのケーキは今日も変わらぬ美味しさだった。 卵酒と称して茶色い謎の調味料と卵と香辛料をつっこんだだけの汁で味覚を破壊されそうになった後である。より一層、この甘美を有難がることができた。 南方はぺろりとケーキ一切れを平らげた。 徹津の誕生日も知らぬまま参加したイベントである。 彼に渡すものもない。居ていいのかもよく分からない、主役ほどではない居た堪れなさを感じていると、その主役から、声をかけられた。]
……ん?
[主役は、チーズケーキを差し出してきた。>>354 皿に一切れ、鮮やかな黄色が、三角に切り取られている。]
ああ。腹いっぱいになっちゃった? え。俺ほんとに貰うけど。 いいの?
[甘いものが好きな南方にとっては、二切れ目など容易い。反応は、本当に嬉しそうだったろう。徹津に「ありがとな」と笑みを返して、遠慮なくそのチーズケーキを受け取った。]
(360) gekonra 2014/07/05(Sat) 23時頃
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― 幾分先の話 ―
[盛夏。 学生が、夏休みに入った。 よって、夏期講習が開始した。 お陰で、南方夏一は暫し、繁忙期を乗り切るべく、忙しく働いた。 談話室に長居する事はなくなった。 帰宅は常に夜10半時を過ぎた。 休みの日にちも減っている。
それでも、一日の残った僅かな時間や貴重な休日を絵に費やすことを面倒に感じずに済んだのは、一重に、間中遊からくっきりと示された欲によるものだ。 そんな些細な切欠で、素直に絵が面白く感じられていた。 忙しい期間であるのにも関わらず。不思議と。]
(362) gekonra 2014/07/05(Sat) 23時頃
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[八月中旬。 休日、描きかけだった裸婦の油彩画が完成した。 新しい道具や絵の具をいくつか試し、南方自身にとっては、技巧の面で面白い実験が出来た作品に仕上がった。 流 なみ子から鍵を返してもらったのがその時だ。
その日のうち、名画の模写の決して大きくないキャンバスを上から塗りつぶし、次の絵として制作を開始した。]
(363) gekonra 2014/07/05(Sat) 23時頃
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[八月の終わり。 南方夏一の一つ目の不幸は、夏期講習の最終日に起きた。 くたくたになったが、「やっと終わった」という感慨で、誰か仕事場の人間ではない者の声が聞きたくなったのが理由で、談話室に寄ったこと。 そこにいたのは、ちょうど、藤堂であったかもしれない。**]
(364) gekonra 2014/07/05(Sat) 23時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>372 ―
[談話室に居合わせたのは、ちょうど、藤堂だった。 彼との会話は、他人を挟んだほうが絵の話に流れていきやすいと感じている。他の人間が居ない状態ならば、互いに話題にはしない。 ――もしかすると。絵描きとわかられているのでは、なんて思うことが、ないではなかった。あまりにも、線引が明確すぎて。]
いやー……そうなんですよね。忙しかったっす。 今日で、いくらか落ち着くはずなんですけど。 はは。忙しいのあけたら、人と喋りたくなって。
[曖昧に笑った。大丈夫かどうかを尋ねられ、一つ頷き]
明日はしこたま寝ます。
[予備校の話題は、少し内側に入ると絵に直結する。だから、一切合切、内容は仕舞っておくべきだ。 藤堂は、酒の瓶を片手に、どう、と誘った。――どうだろう。今日は疲れているから。 何と返事を返そうか、一瞬迷った。それで、反応は遅れた。 藤堂はグラスに酒を注いでいた。――いいか。打ち上げのようなものだ。 南方は、酒を注いでもらったグラスを受け取った。]
(376) gekonra 2014/07/06(Sun) 00時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>381 ―
そうそう……どうでもいい話がしたいっつーか。 別にあれが辛かったとか、これが辛かったとか、 そういうの喋りたいわけでもないし。
[藤堂は同意した。つまり、互いに、仕事に関する話はしない。ならば、絵の話にはなりようがない前提だ。 酒の席での話だから、確約などないようなものだけれど、気分をよくする。]
あー。
[明日寝倒すなら、と、藤堂は提案した。 別に酒に特別弱いという自覚はなく、逆に特別強いという自覚もなく、「寝酒」という意味であると理解した南方は頷いた。]
ははは。いらねーっす。 寝ちゃったらこのへんにほっといてください。
[ただ―― 部屋に運ぶ?何を言っているんだろう。絶対にお断りだ。 そう思って、徹底して、そこには笑顔で返答する。]
(387) gekonra 2014/07/06(Sun) 00時半頃
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― 時は変わって梅雨明けごろの談話室 ―
[徹津くんのお誕生日パーティは大成功だ! やったね桃地さん!! 歌声ステキだったよ桃地さん!!!
間中、もしくは藤堂あたりから 「飲みに行こう」と誘われるのは、いつのことだったろう。 徹津くんのお誕生日パーティのさなかだったかもしれないし、 別のある日、仕事からかえった夜のことであったかもしれない。 南方の返答はこうだ]
ふーん。いっすよ。
[詳細は、知らなければ知らない程に返答はあっさりとしたものであったろう。 もしその日誘われたわけでなければ、日にちを訊ね「その日は仕事だから途中で合流します」などと、返事をしていたかもしれない。**]
(388) gekonra 2014/07/06(Sun) 00時半頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>397 ―
いやーだって藤堂サンも忙しかったんでしょ? 忙しいと話題もクソもないっすよね。 篭んないといけない仕事だと尚更。
趣味ぃ……は、そーうですね? つっても藤堂さんの趣味はお酒でしょ?
[そう確認をとったせいだろうか。話題は少し前のなぜか藤堂達につれていかれたバーの話題になった。飲みかけの注いで貰った酒にむせながら、顔をしかめて視線を逸らした。]
……あの時はなんかもう飲んでるしかなかったじゃないっすか。 二度といかねえと決めましたからね!アレはね!
[余程嫌な記憶であるのか、半ば藤堂のせいであるとしながらむすっとする。]
あー?風邪引いたのそんなんでしたっけ? 大丈夫っす。置いといてもらえりゃ明日朝自分で戻るんで。
[余程警戒しているのだろうか、重ねて放っておいて欲しいと言う。風邪に関しては、過ぎた事。細かな由は忘れているようだ。]
(405) gekonra 2014/07/06(Sun) 01時半頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>397 ―
お疲れ様です。はは。気ーつけたほうがいーっすよー。 めちゃめちゃ運動不足なんじゃないですか。
[締め切り。求められて描き、継続して仕事があるという事だ。 だから、うん、と頷いて、労いの言葉で、締める。]
うまいの見つかりました? 藤堂サン日本酒とか焼酎持ってくる事多い気がしますけど。
[新しい酒の話には、このように返事をした。それ程詳しいわけでもないけれど、こちらの話題のほうがまだしも穏やかだ――そう思って。]
……わけもわかんないで連れていかれましたしね。
……いやもう藤堂さんの紹介の店はね……ウン。 楽しめるってどういう意味でかわかんねえしぃ。
[後半は、冗談半分わざと嫌がった。いや事実同じような店なら二度といくまいとは思っているが。 どうやら部屋の話題はもうこれで終いになったと思い、ほっとする。]
(413) gekonra 2014/07/06(Sun) 01時半頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>416 ―
絶対した方がいっすよ。 そんだけ飲んで日ー浴びなかったら骨スカスカんなりますって。
あ。
[藤堂の話を聞いて、思わず口は彼女、と言いかけるも……隣の部屋からうっすら聞こえる話し声があればそれや、隠す気のないらしい相手との雰囲気が、九月も目前となってどうなっているかとか、連れていかれたバーの件などもあわせ、なるべく直接的な言葉は避ける。]
はー?買い出しとかまでして貰ってんすか? あーあ。便利に使っちゃって。
[甘えちゃだめだという言葉の揚げ足をとるように、悪者に仕立てるように、にやにやとしておいた。]
(420) gekonra 2014/07/06(Sun) 02時半頃
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ふーん諏訪泉。
[覚えていたら飲んでみようと頷き「どんな」と味の説明を求めた。]
いやいや。ワインも俺あんま飲まないっすし。 ビールばっかなんですよねー。んーでも…… この間飲み屋で美味いのあったな……待ってくださいね。
[銘柄をたいていすぐに忘れるために、スマホで写真にとっておいたのを探し、藤堂にスマホに表示されているラベルの内容を見て貰ってから]
うん。次あるならメシと酒がウマいとこで。 近所でよさそうなトコないんすか?
[そのようにして、会話を続ける。
藤堂が趣味だと主張した酒の話を。 酒好きの年上が語るそれは、素直に楽しめたろう。 ちょこちょこと気になったところに質問を繰り返すだけで、よく識っている藤堂からは、説明や返答があったかもしれない。 食い物の店の話。取り留めもない体調の話。恋人について。他にも話題に挙がることが、絵以外であれば、それなりに食いつくことが出来る。 その頃には、一杯目の酒は消えていたかもしれない。二杯目、または盛り上がって三杯目があったかもしれないが――藤堂が一度席を立つことがあれば、その間に、南方は机に突っ伏して眠ってしまっていたかもしれない。]
(422) gekonra 2014/07/06(Sun) 02時半頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>423 ―
そのうちコケてポキッと骨折したりしますよ。 ん……?いや、最近忙しかったんでバス使ってましたけど、 俺けっこー職場まで歩いてますからね? 残念ですけど、藤堂サンと違って、運動はしてます。
[虚しいながらも、一緒にすんなと笑ってみせた。]
……あーー、お返しとか。そういう惚気。それだったら…… いや面白いから全然聞きますね。どうぞ。
[空のグラスに酒が注がれた。一杯目もなみなみと注いでもらったせいで、ほろ酔いを感じる。女の子、と言われて、それが何者であるか理解する。]
あぁ……会ったことありました? や、あれ彼女とかじゃないんで。
[彼女であると勘違いされているのなら、それは不服だとばかり、寸分の興味もなさそうに声のトーンは面倒くさそうに落ちる。勘違いを嫌うように]
用があって来てもらってたんですけど。終わったんで。
(434) gekonra 2014/07/06(Sun) 03時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>424 ―
あ、うまそう。
[米の味、ときいて興味を示す。]
あー、そうだ。 そういや俺、ちょっと前に生酒の、 えーとなんていったかな……
[酒の話題はまだまだ続く。語ると長くなる分は、酒が進む内、寧ろ長く話して貰えるほうが有り難いと説明をした。]
あ。あー。場所わかります。はは。入ったことない。 店の名前がすげーから。あそこ美味いんすか??
[飲み屋の「へっぽこ」というあまりにもあまりな名前は、通りを通った事があれば目に入る。日取りに関しては、休みになっている事の多い曜日を教えた。]
これから帰りも少しか早くなるし。 近所だから帰ってきてからでも声かけてもらえれば。
(435) gekonra 2014/07/06(Sun) 03時頃
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[>>424 そうして、話しが続いていくうち。 うとうととして眠ってしまった南方は、ちいさく身動ぎをした。 これが不幸の二つ目だ。
身動ぎの際、ポケットから鍵がおちた。 南方夏一は、気付かず、眠っている。]
(436) gekonra 2014/07/06(Sun) 03時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>442 ―
はは。当たり前じゃないすか。 藤堂さんの骨が折れても、俺の生活に何の支障もない。
[わざとらしい嘆きにシレッと笑顔をかえしておく]
そっすか?面白いですけどね、他人の惚気話。
[藤堂の話を聞きながら、南方なりに自然と像を結んだ結果]
……え。それホント大丈夫すか? 夫と別れたばっかの元DV嫁捕まえたか、 自殺しかけの高校生か大学生辺り捕まえた話に聞こえて
[鍵を渡していた女にあった用事に関しては掘り下げる気はなく]
バイトかな。
[それ以上話が進むようなら、面倒臭がって「ざっくりいうとデリヘルみたいなもん」とでも言って、視点をズラそうとしたかもしれない。]
(450) gekonra 2014/07/06(Sun) 04時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>443 ―
[一緒に飲むかと言われたら、素直に喜ぶしかない。 酒の話を肴に、酒を飲むのは続いていく。 さあ二杯目か三杯目があいたところで、藤堂はすかさずお酌をしてくれることだろう。逆に藤堂の手元が空になっているようなら、しっかり注ぎかえすつもりだ。]
絶品とかまでいう……まじすか?
[外から見る店の雰囲気しかしらない南方は驚いている。]
ん。そうしましょう。早上がりも増えますよ。 ……ほんと名前で損してるな。
[そんな話になったころには、南方の目も赤らんできていた。 顔は赤くなりにくい体質のようだが、若干手元は怪しかったかもしれない。]
(451) gekonra 2014/07/06(Sun) 04時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>444 ―
[疲れと酒で、南方は、眠りっぱなしだ。 藤堂の背中に体重を預けて、ぐったりとしている。 104号室の鍵があいた。 扉をあけると、キッチンの向こうには、間仕切りが見える。 部屋の中は、カーテンで仕切られており、ドアから中の様子は見えない。]
(452) gekonra 2014/07/06(Sun) 04時頃
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─ 体験ツアー帰り道 ─
[騙されたように連れていかれたその場所は、赤っぽいライトが灯り、雑然としていて、そして、なにより、むさ苦しかった。 圧迫感があった。人間との距離が非常に近かった。自由はきかなかった。
南方は、10回くらい藤堂に帰りたいという意思を込めてじっと助けを求めて見てみたが、気づいては貰えなかった。 わかば荘の住人たちを見ながら、こいつらどの位ここに居座るつもりでいるのだろうかと思った。
そして、「なるほど、もう酔っ払ってしまったほうが平穏が得られるのでは」と考えた。 腿を撫でられながら下したあの判断は、誤っていたろうか。**]
(458) gekonra 2014/07/06(Sun) 06時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>464 ―
[惚気は面白い。大丈夫か、なんて言葉も本気の心配なわけがない。犬も食わない話を、食べずにからかっているだけだ。 冗談ついでに好き勝手な感想を述べたところ肯定されたのだから当然益々面白い。 藤堂は眉をひそめている。南方は頬杖ついて、口元を手でみえなくした。]
当てちゃった。 よっぽどひどい。ふうん。
[復唱する。それってどんなだろう。 好奇心で言葉を待ってみるも、教えて貰えないかもしれない。 ついでに酷い男とやらよりも、酷いとか言いながら尽くしてしまう人間の聞く耳持たなさを、より簡単に想像してしまうのだが、それに関しては何もいわない事にした。 大事にしてやりたいとか誠実げな言葉が出てきたのへ、首を傾げて]
今度はいい人でよかったねって事に出来るといいですもんね? ふーん。仲良くやってんだなあ。面白い。
[相手の予想がたってようとなかろうと、歳を訊いてみたり、顔の可愛さを訊ねてみたりして、南方は藤堂に喋らせて面白がろうと考えているようだ。 藤堂がどんな風に答えていたのかは、さて話をしている彼らしか知らない。]
(471) gekonra 2014/07/06(Sun) 12時半頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>465 >>456 ―
[ほぼ開きかけた瓶を眺めながら、「あぁそういうのいいですね。」とへっぽこという店への興味を示していたのも、何十分と、あるいは一時間位は前の事であってもおかしくはない。
藤堂に背負われて自室である104号室まで連れて行かれた南方は、ベッドに寝かされて、酒気まじりの息を寝苦しげにひとつ。
彼が起きるのは、藤堂が部屋を出ようと、間仕切りのカーテンが音を立てたその時だろう。 それまでは、眠ったまま。 たとえ絵をいくらじっくり眺められても、起きることはなかった。]
(472) gekonra 2014/07/06(Sun) 12時半頃
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FSM団 ミナカタは、メモを貼った。
gekonra 2014/07/06(Sun) 13時頃
FSM団 ミナカタは、メモを貼った。
gekonra 2014/07/06(Sun) 13時頃
FSM団 ミナカタは、メモを貼った。
gekonra 2014/07/06(Sun) 13時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>475 ―
[物音で南方は目を覚ました。 慣れた寝床の感触で、運ばれたという事ははじめ、わからなかった。わからなかっただけに、自分以外の音が、室内にあることに驚いた。 跳ね起きる。すこし眠ったせいもあってか、いっぺんに頭の酔いが覚めるような心地がした。]
――……
[部屋のなかには藤堂の姿があった。 目を大きくする。頭のなかで状況を整理した。 体に残った酒の理由は談話室でのんでいたから。 何故鍵があいたのか。尻ポケットに硬い感触はない。 沈黙が、ひたり、と部屋のなかを横たわっている。 口を、ひらいた。]
……そのまま置いといてくれって言ったじゃないすか。
[呆然と言う。寝起きが理由にも思えるような声音で。]
(477) gekonra 2014/07/06(Sun) 14時半頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>479 ―
[相手は苦笑いをしている。そこで、要は自分の不注意によるものと、漸く後悔がやってきた。 改めて鍵を探る。落としたのだろうか。鍵は作業台にでも、乗っていたかもしれない。] ……、
[まだ混乱していた。謝られて「いえ」と小さく返した。 鍵さえ開かなければ、部屋など開きようもないのだからと油断していたこともあって、納得出来なさがまだあった。だからそれ以上何も言えなかった。]
……? なにが……
[すごいな、と言われた。ぽかん、とする。 思わず思ったままの言葉が口をついて出ていた。 何が?]
(480) gekonra 2014/07/06(Sun) 15時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>483 ―
[藤堂は何故かわらっている。 言われて視線を向けた先の風景画。 見物していったのだと知る。まだ、呆けた顔をしていたろう。 先程の「なにが」は消えない。どの口が言うのだろう。]
……そうですかね。
[藤堂がこういう絵は描けない、と言った。 ある絵本をおもう。口元を、かすかにわらわせた。息をこぼすような、声をたてない笑いの気配があった。]
単に藤堂サンの絵には要らないでしょ。
ゆかり先生でしたっけ。 しらないかもしんないけど、大学一緒で、わかっちゃって。
[藤堂の話をすれば、自分の絵から話題は遠ざかるだろうか。 落胆のせいか、徐々に落ち着いてきた脳が、投げやりに出した案に従う。]
(484) gekonra 2014/07/06(Sun) 16時頃
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[風景画を藤堂が肯定する事へよりも、絵そのものに対しての刺っぽさが、つい篭もる。呆れ半分ぽつりと零した。]
どうすかね。
[――いいと思うよ。と、言ったろうか。 子供の絵を褒めているかのような言葉にも思う。 そうしてモヤついていることに、内心辟易とする。 ――できれば、これ以上、何も言わず返ってくれればいい。]
(485) gekonra 2014/07/06(Sun) 16時頃
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[きっちり物を仕舞っているのは、それこそ、においがつくのを嫌って、という面もまた大きいのだが、徹底なんて出来ようがないのもその通りだ。 ベッドの上にあぐらをかいた。 気づいていたとしたら、お互い触れないというのが、正しい線引だったのに。どうして態々崩したのだろうか。 「そうですか」と相槌をかえしてから]
わざわざ話すような事でもなくて。
[見たいなと思っていたと言われて、困り笑いを浮かべて、首を傾げてみせた。]
趣味でやってるようなもんですからね。
[最悪の言葉だと思う。]
(486) gekonra 2014/07/06(Sun) 16時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>483 ―
[こういう絵を描きたかった。趣味として手を広げてみたいという話なのだろう。己と呼べる絵を武器に戦っている人間が本意で言う言葉ではない。 南方には、そうとしか思えない。]
はは。今からまた道具揃えてみたらどうすか。
[やや笑いが乾く。キャンバスにのっているものを通りすぎて、藤堂は油彩という手段を羨んでいる。]
――
[感性に任せたような藤堂の言葉はてんで心に届かない。 そうしてその瑞々しさのない所が彼と己の差なのだろうと南方には思える。 風景画、というものへの好みを話をする彼に、肩をすくめて]
そりゃ違う場所に立って描いたんでしょ。
[作者のみている景色が見えているようだ、という意味として理解することは出来るが、要は腕前の話だろう。そして彼が浮かべているのは誰かの絵であり、此処にはない。]
(489) gekonra 2014/07/06(Sun) 17時頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>483 ―
――
[藤堂の言葉に、肌が粟立つ。 趣味で絵を描くことを、悪いと言ったように、聞こえたのか。]
……、――
[落胆から凪いでいた気持ちが、苛立ちでふつりと煮えはじめた。 知らないとでも、思っているのだろうか。 それを知らずに、絵画を趣味と言ったと思っているのだろうか。 全日を絵に捧げることを諦めた由を、一度も手放した事がないからこそ、想像もつかなかったろうか。 失うおそれすら、感じたことがない?]
……
[その上、油彩という形式でしか人の絵を見ずに、それを言う。 なにが好きで描く世界だ。]
(495) gekonra 2014/07/06(Sun) 17時半頃
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藤堂サン。
[それらの絵からは、何を感じ取ることも、なかったんだろう。 みずみずしい感性には、さぞ退屈に見えたことだろう。 思えば分かりきっていたことだった。 我に返ったような心地になった。]
帰りましょう。
[――そして彼の言葉は、単に、きっと、 絵が、混じりけ無く、疑いようもなく、単に好きだからこそ、選んだものであるのだろう。]
(496) gekonra 2014/07/06(Sun) 17時半頃
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[あまりに小さくて、聞こえなかったろうか。 できれば、もう、聞かせないで欲しい。 細々と守ってきたものを、崩されるような心地がした。 追い打ちのように、楽しんでいるかを問われた。 いや。説教をされている。 惨めにすら思われているのかもしれない。 この部屋の由など、理解できないだろう。 多分この人は挫折を知らない。 欲しいものを持っているからこそ、折れたことなどないからこそ、楽しんでいるかどうか、「勿体無い」などといって、諭すように口にする事が出来るのだろう。 「たかがそんな事が何故できないのか」と問われている心地だ。]
――藤堂サン。
[もう一度、呼んだ。声音が、強張る。 笑ってしまった。あんまり腹が立って。 明らかに、嘲った。 卑屈に歪めた口元が、言葉を続ける。]
聞こえなかったっすか。 帰ってください。
(503) gekonra 2014/07/06(Sun) 17時半頃
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― 幾分先の話。八月の終わり>>504 ―
[藤堂の軽く肩を竦める仕草。 そうだよな。その程度の、ものだろう、と、南方は思う。]
……。
[ため息と共に去っていく客が、謝り、背を向ける。]
そうですね。 だから黙ってたんですよ。
[余計な事だったかな。 その言葉に肯定を返した。]
――
[いつか気が向いたら見せて欲しい。 なんの意味があって、最後、そんな言葉をかけてみたのか、その時はとても理解は出来そうにもなかった。**]
(509) gekonra 2014/07/06(Sun) 18時頃
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― 八月の終わり ―
[書き溜めるだけでは勿体無い。 では試しに使い道を訊いてみればよかった。 何になると答えるつもりだったのだろう。 なんの為に描いているように見えたろう。
『描けなくなった』と思わないで済むように、 ひたすらに描き続けた絵たちを見る。]
(514) gekonra 2014/07/06(Sun) 18時半頃
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[殆ど怒りにまかせて藤堂追い返した後、扉が閉まって、 去来したのは、どうしようもない虚しさだ。
間中にもこの部屋でいわれた事は、そういえば、 藤堂が言うのと似たような内容であったように思う。]
(515) gekonra 2014/07/06(Sun) 18時半頃
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[描きかけの絵の傍へ寄り、しゃがみこむ。 四角の画面が絵の具で上から塗りつぶされて、 新鮮な空白で満ちている。 殆ど反射や癖で、埋める方法を、頭のなかでなぞった。
翌日予定がないのをいいことに、 長い時間、じっと、それをみていた。 頭ががんがんと、脈打つように痛んでいた。
明け方になって、扉が鳴って、間中がやってきた。 普段とかわらず面倒くさそうに迎え入れ 間中が勝手に寝始めたので、あわせて、横になった。**]
(516) gekonra 2014/07/06(Sun) 19時頃
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― 九月のはじめ ―
[イーゼルに置かれたキャンバスに、色を乗せた。 深い集中のさなかにあるのだろうか? 南方は、黙々と作業を続けた。**]
(520) gekonra 2014/07/06(Sun) 19時頃
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― 九月 ―
[七月からの忙しさがまだ継続しているのだろうか。 南方は変わらず忙しそうにしていた。 バイトに来ていた院生の一人に辞める相談をされたのが、丁度よく感じられた。
談話室に顔を出す機会も減った。 あったかどうかも定かではない。 引っ越す者があったとして、ろくに挨拶も出来ず仕舞いになる事もあろう。
それでも、別段、わかば荘の住人と、顔を合わせればいつも通りだ。 他人と接する南方に、なんら変わりはない。 悪態と冗談と当り障りのない話をする。]
(536) gekonra 2014/07/06(Sun) 20時半頃
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― 十月某日 ―
[いつも通り、平日と同じ時刻に目が覚めた。 二度寝をするでもなく、起きていた。 三度のノック。 秋の始まりを感じるこの頃には、随分これにも慣れていて、音だけで相手の予測がつくようになっていた。 クロッキーブックをイーゼルに置く。 スリッパが板を踏む。 鍵を開けに、ドアへ向かった。]
(537) gekonra 2014/07/06(Sun) 20時半頃
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[ドアノブを掴む。 ドアを押し開けた。 南方は間中を面倒くさそうに出迎えた。]
なんすか。 寝る時間には遅くないすか。
(538) gekonra 2014/07/06(Sun) 20時半頃
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― 十月某日、104号室 ―
[間中の口端が持ち上がる。 細い目をゆるりと柔く更に細めて、したり顔をしている。]
―――……
[南方は、大きく目を見開いた。 言葉の意味を理解した。]
(549) gekonra 2014/07/06(Sun) 21時頃
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[間中の頭に手をのせた。 ぐしゃぐしゃに髪をかき混ぜた。 南方も顔をくしゃくしゃにして笑って、何度も頷く。 驚いて、すぐには言葉が出なかった。 ようやく発した一言は、本当に、心から喜んだ声での]
――、よかったな。 すごいじゃん。
(550) gekonra 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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[梅雨明け宣言前の深夜、高熱を出しながら読んだ作品も。 それを書く間持っていたらしい不安も。 先月あたりはしきりに連絡を気にしていたことも。 書き物を朝方まで続けて、疲れて眠るところも。 それらを見ていたからだろう。 いつの間にか、喜べるようにされていた。 意外そうに見上げられた事で、「なんだよ」といつもの調子を少しづつ、取り戻していく。 それでも、嬉しそうに目蓋を伏せている様子は微笑ましい。]
ふーん。審査員特別賞。 おお……本まででんの?
(559) gekonra 2014/07/06(Sun) 22時頃
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[間中は、単に、祝って貰いに来たわけではない。 第一声だって「モデルをしに来た」と、たしかに、言った。 言葉を聞く内、いつしか、南方の顔から笑みが消えていた。]
――……。
[暫く間中を見下ろしていた。 変人は、約束を果たしに。欲を、律儀に満たしに来ていた。]
……したね。
[確認をとるような、間中の声に、肯定をかえす。 見せて、と言われ、視線を足元へおとし―― 踵をかえした。 扉は、いつも通り、放ったらかし。 重みに任せて、閉まりかける。]
(570) gekonra 2014/07/06(Sun) 22時頃
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――……
[部屋に戻った。 クロッキーブックには、数ヶ月で書き溜めた下絵があった。 それをベッドの上へ放り出す。 引き出しを開けた。釘抜きと金槌を引っ張りだす。 立て掛けられたキャンバスを掴む。 うたれた釘をすべて外し、キャンバス地をはがした。 木枠だけが、残る。 丸まったキャンバス地をクローゼットから引っ張り出し、手慣れた動作で、木枠に新たな布地を貼り付けていく。 皺がよることもなく。たわむ事もなく。 新しいキャンバスが完成させる。]
(578) gekonra 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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[作り続けることは、間中と約束を交わして以来、 ずっと、ただずっと、黙々と、続けられていた。 最大限欠かさない努力をし続けた。
連日続けていたそれは、ただ小器用で、要領がいい、間中が見た最初の一枚と似たような出来の作品を、モチーフを変えて新たに作り出しつつあった。
木枠を持ち上げられ、それは、壁に、放置される。]
(579) gekonra 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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[間中に名を呼ばれても、返事はしなかった。 或いは、出来なかった。 黙ったまま、必要な準備を整えていく。
仕舞われていた油絵の道具が詰まった画材の箱を、 引っ張り出した。]
(588) gekonra 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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[新しいキャンバスを、イーゼルに乗せた。 椅子を、椅子の傍へ、傍に引っ張って寄せた。 それから、暫し、声もだせず、黙ってから]
――
[ぽつりと言う。]
モデル出来るつったな。
(591) gekonra 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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[間中が拾った布地にあるのは、ただの、訓練の痕跡だ。 あがき続けただけの。手にたくさんのタコを作って、不格好に描き続けた人間の。 間中自身が、「楽しい?」と尋ねるような、ただの習作。
南方は、返答をきいて、間中を振り返った。 眉根を寄せた顔をしていた。 いつも通りに見えたろうか? 自分の顔は自分では見えない。 それは間中にしか分からない。
南方は、歩み寄って、間中の手首を掴んだ。 間中が持っていた習作を掴み、作業台に、不要品であるかのように、ぞんざいに置く。 引っ張って、いつも裸婦モデルを立たせていた、カーテンからすける日の当たる場所へ、連れて行く。
それから、手首を掴んだまま。 間中の細い目の上を視線がさっと通りすぎて、首を、肩を、胸を、腹をと、足元まで、視線が降りた。]
(604) gekonra 2014/07/06(Sun) 23時頃
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――……。
[間中の姿は、ひどく、所在なさ気にみえた。 なんだか可哀想で、手を放してやった。 椅子を一つ掴んで、間中の横へ置いた。 背を向け、本棚から、丁度いい大きさの、ハードカバーの本を引き抜いた。 中身は西洋美術に関するものであったが、内容は関係がなかった。本の表面くらい、絵の上で変えることは容易い。それを間中にもたせてやる。仲間を与えてやるような心地で。]
読んでて。
[ベッドに放り出してあったクロッキーブックを拾い上げた。 いくつもの、紙がくたくたになるまで試行錯誤を重ねた頁を通り過ぎ、頁を捲る際に、何枚かが背から外れて、床に落ちる。 それを邪魔くさそうに拾い上げて、作業台の上に、また、ぞんざいに乗せた。
イーゼル前の椅子に座る。 クロッキーブックのある頁で、視線は止まる。]
(610) gekonra 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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[それから、膝の上にエスキースを広げた状態で、椅子に座ったまま、間中遊のある部屋の光景を、みていた。
時間が、一秒づつ、経過していった。
無言だった。 一時も、その光景から、目は離さなかった。
一時間半以上が経過した頃だろう。
ぽつりと、かすれた声が言った。]
(613) gekonra 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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[この日が来るのが、楽しみだったのか。 この日が来るのが、恐ろしいのか。 この一月の間、ずっと、わからなかった。 結論、恐ろしかったのだと思う。
だから、呆然として、言う。]
遊。
ごめん。 なんか。
描けないわ。
(615) gekonra 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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[一時間を過ぎても、手が持ち上がらない。 ただおりて、膝の間で、あたりをとるための鉛筆を持っていた。 状況が奇妙で、つい言葉を発した。 不思議と、ただ、驚いているだけだ。 以前間中にいったとおりの「泣けもしない。」なのだろうか。 こんなにぽっかりと、悲しい気持ちであるのに、涙は一向に出そうにない。ただ、ぼうっと白いキャンバスをみていた。]
――……
[いつの間にか、間中は傍に寄ってきていた。 キャンバスをみている。 アイボリーの、ただしろいだけの、キャンバスには、なにひとつ描かれていない。]
描けないね。
[もう一度、確認するように、言った。]
(624) gekonra 2014/07/07(Mon) 00時頃
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[背を、髪を、間中の手が撫でる。 それに、気づいているのかも、どうだろう。 呆けたままの声で、謝った。]
遊。ごめん。
約束、なかったことに出来ないか。
(625) gekonra 2014/07/07(Mon) 00時頃
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[いいよ、と、いう声は、約束を破棄する声の前にあった。 どういう意味だったのか、わからない。]
……
…………。
[間中の体が傍にあったので、寄りかかるように、頭を寄せて、まだキャンバスを見ていた。 ――間中は、絵のかわりの対価として、ひとりの挫折で、満足はしてくれるだろうか。 話のたねであれば。なんでもいいのだろうから。]
(627) gekonra 2014/07/07(Mon) 00時頃
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[タコの出来た手から、鉛筆がとりはらわれた。 なぜだか不思議と、ほっとしていた。
アイボリー色の、なにも色ののらないキャンバスは、 これはこれで、美しかった。**]
(635) gekonra 2014/07/07(Mon) 00時頃
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