64 さよならのひとつまえ
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[成斗を待つ間、息を整えてスマホ画面に視線を落とす。 時折向けられる視線はやっぱり煩わしいが、あちらから近づいてこなければ無視を決め込んだ。
ありすをハニーと呼び始めたあの頃も、似たような視線があった。あの時はここまで気にせずにいられたし、揶揄されても笑って悪乗りまでしたものだが。今はそうできそうにない。
それは、博の想いが真剣なものだったのだと、痛いほどわかっているから。 そして、気づいてしまったから。
ゆっくりと、強がりの殻を剥がす。 零さないように、慎重に。
あの声にあれだけ苦しくなったのは。 重くなっていく想いが、同じ形をしているからだと。 博を否定されるのは、揶揄されるのは。まるで自分を否定された気持ちになったからだと。]
(230) 2014/03/30(Sun) 15時半頃
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[入学してすぐの頃、彼女が出来た。
告白されて、嬉しくて。でもあまり長くは続かず別れて。またしばらくして告白されたら付き合ってみて。 派手な噂にならなかったのは元同室の利一より頻度も人数も少なかったからか。
卒業後のことが決まってからは、告白されても断るようになった。 さよならの準備を。持っていけないものを諦める準備を。
でも。それだけは気づいたら持ち込まれていて。片づけようとしてもできなくて。 初めて自分から手を伸ばしたいと思う衝動。戸惑っているうちに、重さは増すばかりで。
触れなければ気づかずにいられたか。 気づかなければ。或いは、熱を知らなければ――――。]
(231) 2014/03/30(Sun) 15時半頃
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…はお…しだからな…
…ての…に…しくするなんて…ってこと…くわかるといい…
…でないと…なものがこぼれ…ちるぞ…
…
…は…ったよりも…だ…
…それにみんな…しこよしなんて…なんだよ…
…ず…で…いてる…がいる…
…
…お…が…の…だったら…
…に…いにいくか…
…
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(苦しい)(苦しい)(苦しい) (言えるはずない)(言ったところでどうなる) (余計に堪えて、辛いだけ) (ならやっぱり)
(くちには、できない)
(――……重傷だ)
(232) 2014/03/30(Sun) 15時半頃
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[片付いた部屋を思い出す。もうそこに自分の居場所がなくなるのだと思い知らせて。
ゆっくりと、強がりの殻を被せる。 前よりも、頑なに。
あと少し。気づかないふりをすれば。誤魔化せば。 終わるのだから。]
(233) 2014/03/30(Sun) 15時半頃
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― 玄関 ―
[ばたばたと慌ただしい足音に、顔を上げる。>>208 大袈裟に手を合わせて頭を下げる姿に、ぷ、と噴きだした。 大丈夫だ、笑えてる。]
遅い! ほら、このあと断髪式もするんだろ。 ちゃっちゃと行くぞ。
[袋を持っていない方の手で、下がった頭にでこぴんを打ち込んで。笑いながら歩き出した。]
(234) 2014/03/30(Sun) 15時半頃
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…
…ああ…そうだな…
…くにきたら…きたってことだけ…える…
…だからな…
…
だ…
…
…なこと…うなよ…それは…それは…だって…
…だって…そんなの…すぎる…
…
…に…いられるわけない…だろ…
…だっていつか…かのとこ…くんだし
…そんな…に…にいたいとか…うな
…
みたいなのが…いするから
…いしたら…だから
…だから…しく…するな…ばか
…れなくなったら…いだろ…
…もう…やなんだ…やなんだよ…ひとり…なんて
…
…けど…でも…は
…おれは…ちがうから…みんなと…ちがうから…
…っごめ…でもおれ…は…ずっと…
…
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― →団地公園 ―
[学校の裏手にある団地。その近くにある公園まで成斗を連れて行く。
出迎えたのは、そこかしこで寛いでいる猫の鳴き声。 がさごそとスーパーの袋を開けて、プルタブ式であけられる猫缶と紙皿を取り出した。]
じゃーん! ……ってこれ、猫缶足りるかな。 ほら、ナルも手伝えよ。
[まだ封を開けてない猫缶を隣に押し付ける。 缶詰のパッケージだけで、すでに足元に懐きはじめる猫を宥めながら。 餌の匂いに釣られ、続々と群がってくる猫達に向けて、自分も缶を開けると紙皿を地面へ置く。]
はは、そんな慌てなくてもまだあるって。 慣れてるなぁ、ススムよくここ来てたのかな。
[紙皿が置かれれば、現金なもので。足元から餌へと移っていく猫を追いかけるように屈み、食事中のその背中をゆるりと撫でて目を細めた。]
(235) 2014/03/30(Sun) 16時頃
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[いくつか紙皿を置き終えてから。 思いついたようにスマホを取り出して、パシャリと群がる猫を撮ってメールを作成する。]
ススムに頼まれてさ。 ナルはここ行きたがるだろうからって。 よかったよ今日晴れて。
じゃ、俺らもお昼にしよう。 これナルの分な。スーパーの鯖サンドだけど、食うだろ? でもってこっちは俺のコロッケパン。
[飲み物は何がいい?と、自販機の方を指差しながら。*]
(236) 2014/03/30(Sun) 16時頃
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…
…ああ…みつからなかったらごめんな…からやるっていえばよかったな…
にいたいと…に…うことくらい…
…の…だろう…でばかなやつで…かったな
…
と…うことの…が…いんだ…
…も…くないだろ
…らは…なにも…
…
…いやなら…うざいって…き…せばいい
…でも…は…お…を…き…せない…
…してくれたのに…すまん…
うだけなら…だけれど…その…は…じゃなくなるよ
…くないかもしれないけれど…されることでもないよ…
…の…にいたい…と…の…にいて…しい…は…てるけど…み…わない
…てるかもしれないから…じゃぁ…だ
…はいざというときに…れられるかもしれないけれどさ
…は…れられなくなっちゃうから
…
…どこか…らない…
…すっごい…いてる…だけどさ
…また…のせいで…かせたくないよ
…
…なんで…がどっか…くのが…なんだ…
…
…でも…
…だって…にだって…しい…じゃない
…にだって…は…さないし…
…が…いてても…に…たいわけじゃない
…それだけは…ってくれ
も…てすらも…え…ってしまいそうだった
だから…に…く…
…を…にして…なんてちっぽけなのか…
…いようで…い…が…と…の…に…かれている…
…
…こう…
…かせて…かった…
…
…ん…みつかった…よかったな…
…でも…せっかくなんで…くにいったら…くよ…
いずれは…どこか…くでしょ
…はいいかもしれないけどさ
…は…の…で…いてる…に…にいてやりたい…がいる…って…えるの…
…
…いたのは…の…ですから
…そんでもって…ここに…たのは…の…
…
…
…それ…だけでも…えちゃってよ
…れてるのよりは…でしょ
…きめのだけど…りないかも
…
…
…
…おつかれさま
もっと…れよう…
わかっちゃいたけど…みんな…そうだな
らいじは…にしないの
…
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― 団地公園 ―
どういたしまして。 それだけ喜んでもらえると、連れてきた甲斐があるよ。
[猫と自分以外誰もいないからか。人目を憚らず、驚いてはしゃぐ声。へにゃりと笑う顔。>>244 つられたように表情を柔らかくしながら。教えてくれたのは丞に心の中で感謝する。こんな彼の姿を最後に見せてくれたことを。
淡いトラ縞の猫の写真を撮る振りをして。こっそり、数枚だけ笑った彼も映りこんだ写真も撮ってから自販機に向かった。]
はい、カフェオレお待たせ。 それがススムからもらったスケッチブック? あとで見せてよ、俺も見たい。
[二本買って戻れば、猫から離れ難いとばかりの様子で鯖サンドを食べている頬に、片方の缶をぺとりとあてる。 こっちも見て欲しいとか、そんな些細な悪戯だ。驚いた顔が振り返れば、悪戯成功とばかりに笑って。]
(247) 2014/03/30(Sun) 20時頃
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