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78 わかば荘の薔薇色の日常
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──。
[羨む宇佐美の声>>427に遊は沈黙し 代わりにみぃがクァァッと大きな欠伸をした。]
(448) 2014/07/02(Wed) 07時半頃
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[差し出されたメモの絵を見て]
はは
[乾いた笑いが漏れた。]
(454) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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[何とも微妙な絵だった。
上手くもなく、 画伯と言うほどエキセントリックでもなく。]
……うん
[何がうんか。
とりあえず話を変えた。>>446]
(455) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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[座布団の上で寝直したみぃは 宇佐美の動く物音を聞き取ってか、 時々ぴくりと耳を動かす。
宇佐美が帰るまで読書は置いておいて 遊はみぃのそういった動きを、 考えこむような眼差しでじっと見ていた。
そして── 宇佐美が目的のものを手にしたかしないかに関わらず 店を出る宇佐美にこう尋ねた。]
絵本は好き?
(457) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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[嫌いと言われなければ]
じゃあ──その箱の中の絵本 どれでも一冊好きなのを持ってっていいよ。
[カウンターの裏の、 客からは見えない位置に置いてある段ボール箱の中の 新しいものも古いものも混ざって積まれている絵本を指して]
俺の奢り。
[と、薄く笑った。]
(458) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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[その箱の中身は、先日本を売りに来た客が 金にならなくていいから処分してくれと置いて行ったもので ほとんど全部、あまり有名でない作家の絵本だった。
今日ここに来て最初の仕事が この中から売れそうな本を分けることだった。
一冊一冊目を通しながら、これを持って来た客が なぜこんなに沢山の絵本を集めたのか。 そしてなぜ突然不要になったのか。
想像するのは楽しかった。
今箱の中に残っているのは 日焼けが酷かったり 逆に新しすぎたりして売れそうにないものばかり。
だから奢りと言っても、元々タダなのだけれど。]
(459) 2014/07/02(Wed) 08時頃
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……。
[>>460勘違いも甚だしいが 狐面を貼り付けたような微妙な表情で聞き流した。]
(461) 2014/07/02(Wed) 08時半頃
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[宇佐美が選んだ雑誌の会計を済ませ、 絵本と一緒に雨の日用のビニールの手提げ袋に入れてやる。]
…──
[本を受け取った宇佐美に 声を掛けようとして、やめた。]
(464) 2014/07/02(Wed) 08時半頃
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[やりたいことは自分で見つければいい。
苦しくても好きなことを模索するか 出来ることを一生懸命こなすか。
どちらも間違いではない。 選ぶのは自分だ。]
ありがとうございました。
[本日二度目のありがとうございます。 みぃがまた欠伸をした。]
(467) 2014/07/02(Wed) 08時半頃
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[七時に店を閉め、書架を軽く整理して店を出た。 帰り際、ても爺が手土産をくれた。 あんこの代わりに桃の入った水まんじゅうらしい。
ただのバイトの身に余るほど、ても爺は気に掛けてくれる。 昔小説家を目指していたから、若いころの自分と被るそうだ。
本当に今月いっぱいでやめてしまうのかい──?
そう問われて、多分──と、曖昧な返事をした。]
(469) 2014/07/02(Wed) 09時頃
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[雨はまだ降り続いている。 細い細い針のような、柔らかい雨。
傘を打つ雨音さえ優しい。
帰り道、コンビニに寄ってエクレアを買った。 ついでにのど飴も。
坂道を上る遊の手に、二つの袋が揺れている。 一つには大判の写真集が入っているから、少し重い。*]
(471) 2014/07/02(Wed) 09時頃
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─ 夜 わかば荘 ─
[宇佐美の忠告のおかげで 遊は珍しくちょっとも濡れずにわかば荘に帰って来た。
途中、傘を閉じたくなったけれど 宇佐美の言葉>>462を思い出してやめたから やっぱり今日わかば荘の廊下が濡れずに済んだのは 宇佐美の功労と言って差し支えない。]
ただいま
[玄関でスニーカーを脱いで、誰にともなく言う。]
(473) 2014/07/02(Wed) 09時頃
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[談話室を覗いて壁に掛けられた時計を見る。 針はまだ、八時ちょっと過ぎを示していた。
スマホを取り出して着信を確認する。 メールが一通届いていた。
中を確認して、無言でしまう。]
(474) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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[知らない番号からの着信はなかった。 南方に緊急事態は起きなかったのだろう。
メモに連絡先を残したから、何かあったら携帯に──]
……
[そこまで考えて、重大なことに気がついた。]
(477) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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──。
[玄関に取って返して南方の靴を確認する。
ない。 まだ帰って来ていない。
多分。]
(478) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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[オーケーオーケー。 何も問題ない。
九時になる前にもう一度お邪魔してメモを処分しよう。]
(479) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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[談話室には何人くらい人がいただろうか。
草芽がその場にいれば、 買って来たばかりのエクレアを取り出し 來夏に渡した時と同じようにお土産、と言って渡す。
他にも人がいれば、いくらか言葉を交わして グラスに氷と水を入れて、喉を潤した。
重い写真集の入った袋は、そのまま自室に持ち帰る。]
(480) 2014/07/02(Wed) 09時半頃
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─ 201号室 ─
[扉を開けると、真っ暗な部屋がそこにあった。 閉じたままのパソコンが死んだように沈黙を続けている。]
──……。
[引き寄せられるように近づいて蓋を開ける。
電源を入れると、低い駆動音が空気を震わせ やがて画面に灯った白い光が、 薄ぼんやりと部屋を照らし出した。]
(481) 2014/07/02(Wed) 10時頃
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[手提げ袋を部屋の中央に放り出して、 デスクの前のクッションにストンと腰を落とす。
手が勝手にマウスを操作し、 書きかけのテキストを起動させていた。]
(482) 2014/07/02(Wed) 10時頃
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ジャニスは、九時を過ぎても、そこでぼうっと画面を見つめ続けている。
2014/07/02(Wed) 10時頃
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[談話室の真上の ウッドデッキに出て来た人の話し声の聞こえる この部屋の位置が気に入っている。
階段からは少し遠いけれど、二階の屋上も近くて 外の気配が間近に感じられるのがいい。
まさかそんな所でクレームが発生しているとは思わず 鍵の閉じていない部屋で、増えない文字を睨んでいる。]
(486) 2014/07/02(Wed) 10時半頃
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[扉を叩く音がして、小さく肩が跳ねた。 半分放心していた。]
……あいてる。
[辛うじて外に聞こえるくらいの声を、扉に放る。]
(487) 2014/07/02(Wed) 10時半頃
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[無垢材のフローリングは 遊が入居する前に201号室に住んでいた人が改装したのを 特に変える必要もないからそのまま使っている。
部屋に満ちるのは本の匂いではなく 開け放たれた窓から入る雨の匂い。
真っ暗な部屋の、四角い白い光を背負って 入って来た南方を座ったままの遊の横顔が出迎えた。]
(489) 2014/07/02(Wed) 10時半頃
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[いつも、誰にでも 無造作に放るように掛けていたお帰りの言葉はない。
心ここにあらずの表情で 凝っと、南方の顔を見上げていた遊の目が 重い足取と息遣いに気付いて、ようやく瞬きをした。]
……南方、具合悪い?
(491) 2014/07/02(Wed) 11時頃
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?
[言われた意味がわからない、という顔。
夜。 それがどうしたのだろう。]
(492) 2014/07/02(Wed) 11時頃
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ジャニスは、本を読まないのに電気をつける必要を感じない。
2014/07/02(Wed) 11時頃
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[緩やかに、首を横に振る。 体調は悪くない。]
目は、両方1.5だけど
──あ そこ
[南方が部屋の中に歩いて来るなら、 足元に気をつけろという意味で 写真集が落ちている辺りを指で示す。
本が落ちているから気をつけて、 までは口にしなかったが。]
(494) 2014/07/02(Wed) 11時頃
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風邪、あんまり引けなくて
[小さい頃から実家の果樹園の手伝いをしていたから 見た目よりも基礎体力がある。
寝不足続きで濡れても風邪をひかないのは きっとそのせいだろう。
自力で患えないから、お裾分けに預かろうと思ったが──]
あ
[注意した瞬間、南方が体勢を崩した。 鈍い音も、小さく聞こえた。
ハードカバーの写真集は 角が当たれば相当痛いだろう。]
(499) 2014/07/02(Wed) 11時半頃
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大丈夫?
[──足。
咳き込み、その場に膝を突いた南方に 見当違いの心配をして立ち上がると、 傍らに寄って姿勢を低くし、背中を撫でた。]
(500) 2014/07/02(Wed) 11時半頃
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──それ、 今日入荷したから、來夏にあげようと思って。
[南方が見ているのは、 本日最後の女性客が売りに来た本の中にあった、 來夏が好きな写真家の写真集で、 さほど有名ではないせいか、扱っていない書店も多いので プレゼントしようと思って買い取って来た。
聞かれたわけでもないのに、 しげしげと本を確かめる様子を見て、何となく口にした。]
(502) 2014/07/02(Wed) 12時頃
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ジャニスは、本を受け取って、少し離れた位置に置き直す。
2014/07/02(Wed) 12時頃
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……いや、中古。
俺のバイト先、古本屋さんだから。
[──気にしないで。]
それより
[南方の、背中に触れた手が少し──]
熱い。
(504) 2014/07/02(Wed) 12時頃
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……────。
[──退散してやるから
その言葉に、唇を閉ざす。]
(506) 2014/07/02(Wed) 12時半頃
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