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78 わかば荘の薔薇色の日常
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よくいう。
[一笑に付した。]
……俺が読みたいつった。
[体調のせいで礼を言われたと思ったのか、居心地悪さを感じてか、そう返答してから]
読んでる間書けないけどいい?
(582) 2014/07/02(Wed) 17時頃
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……
[間中のどうせ書けない、との一言に、首裏に手を当てられたままの姿勢で、その表情を伺おうとする。行き詰まった時の感覚を思う。]
大変だな。
[と、同情らしき一言だけかけた。 体調に関しては諦めたのか、首にあたる手の温度が、徐々にぬるくなってくると、小さく堪えるような咳をしてから、ノートパソコンの傍へ這って寄った。間中の手は、自然離れる形になるだろう。]
読んでもいいのは?
[画面に表示されているものがそうであるとか、事情は全くしらない。 だから、間中を見上げるようにして、振り返った。]
(585) 2014/07/02(Wed) 17時半頃
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[丁度開いてあった事から、書きかけなのかな、と想像する。 出来ているとか、いないとかはまだ聞いていない。 最後まで読み進めれば、どうせ分かることだから、わざわざ聞く必要もない。]
ん。
[間中が冒頭を表示させるというのへ、鼻声の相槌をかえした。 枝のような指が、ノートパソコンの灯りに照らされている。 慣れた様子で機械をいじっているのが、どことなく新鮮だ。]
(588) 2014/07/02(Wed) 18時頃
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ミナカタは、ジャニスの操作が終わり次第、小説に目をとおしはじめる。
2014/07/02(Wed) 18時頃
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[間中が準備を済ませたのが分かると、這って、ノートパソコンの正面に座った。暗い部屋は、奇妙な空間だとずっと思っていたが、だんだん慣れてきた。]
……
[タイトル未定のその作品は地方の酪農家の青年を主人公としているらしかった。 主人公は感情の起伏の激しいわかりやすい性格をしている。]
……けほ
[スクロールのため、「↓」キーを押したあたりで、まっすぐ座っているのがしんどくなった南方は、だらしなく、黒いローテーブルに頬杖をついて、斜めになりはじめた。]
(591) 2014/07/02(Wed) 18時頃
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……?
[水を持って隣に座った間中に、最初、意味がわからずいたが]
あー。薬は鞄……。
[そう言って、ずぼらに床に手をついて、手をのばそうとする。 届かない。]
(592) 2014/07/02(Wed) 18時頃
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[鞄をとって貰ったら、畳んだ白衣が邪魔だったので取り出し、その下にあった薬の箱を発見する。 用意して貰った水で粉薬を飲み込んだ。 次いで、ごみを捨てる場所を探し、部屋の主に助けを視線で求めて発見次第、そこに捨てた。]
ありがとう。
[と、一言親切へ礼を言って、続きを読み始めた。]
(593) 2014/07/02(Wed) 18時半頃
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[間中の対応に、なるほどこいつにも良心のようなものがあるんだなと思う。 ここまで悪化すれば遠慮して貰えるらしいという基準を知った。]
………
[スクロールバーの短さと位置を確認する。 隣に座っている間中へ]
時間かかるよ。
[と、かすれた声が一言断る。 読書を始めた勝手な客は置いて、部屋の外でもどこでも行き、好きにしていればいい。 南方は酪農家の青年の周りで起きる事件のほうへ集中しようとする。]
(594) 2014/07/02(Wed) 18時半頃
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[頬杖をついたまま、南方は物語を読み続けた。 律儀を自称する南方は、読み飛ばすこともなく、急ぐわけでもなく、熱でぼんやりとした顔を、四角いモニターに向けている。 途中寒いと言って、持ち帰った白衣を羽織り、油絵具の臭いを部屋の主に謝った。 長いと間中が言ったとおりで、時間は、相応にかかった。 喉が乾いて、水をちまちまと飲み続けていたので、グラスの中身はいつの間にか空になっていた。]
(600) 2014/07/02(Wed) 20時半頃
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[間中に告げられたおおよその所要時間どおりになった。 南方がぽつりと、白く光る四角に視線を向けたまま尋ねたのは、小説の中の青年が、台風の後、濡れた牧草地に一人佇み、雲間から射し込む朝日浴びて――……というシーンに差し掛かってからだった。]
――……これ、何かに出すの?
[物語に、ではなく、別の意味でのどんでん返しがあったなら、もしかしてその第一声にはならなかったかもしれないなと、言ってから思った。 それを尋ねるもっと前の段階から感じていた印象は、最後までずっとそこにあった。 南方の絵画を見て「コンクールに出さないのか」と間中が尋ねたのは、これが要因ではないかと感じてしまうような印象が。]
(604) 2014/07/02(Wed) 20時半頃
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[少し眠そうな声が、返事をしたのが聞こえた。 じっと読んでいたから、眠っていた事にも気づかなかった。 起こしたらしいと知って、可哀想な事をしたかなと感じる。 尻の横へ手をついて、背中の方へ顔を向けた。 新人賞という事はつまり、小説家になりたい、小説を書き続けたいという事として捉える。 本が好きだから、書くのだと言っていたのも、同時に思う。]
これ、最後は?
(628) 2014/07/02(Wed) 21時半頃
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……。
[最後はどうするのかを聞いた。 間中の声音は、珍しく、重い。]
(640) 2014/07/02(Wed) 22時頃
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……。
[その重い声に、質問をした。]
遊は、泣いたことねえんだっけ。 そういうので。
(642) 2014/07/02(Wed) 22時半頃
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[あまりに、しれっと、忘れたというものだから。 平然と投げ捨てられるような事に聞こえて「ない」と同じ括りとして捉えていた。]
……ちょっと別の話になるけどさ。
今朝俺にコンクールがどうのって聞いたじゃん。 俺は、たぶん、 ほんとは、少なくとも今は―― 出せねえわ。
[白状した。]
……
いつ諦めようって思うか、分かんないよな、 ああいうの。
(649) 2014/07/02(Wed) 22時半頃
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[どの口がいう。 そう思って、開きかけた口が、とじかける。 ――できれば、言いたくない。 他人の域を踏み越えるようで、ひどく、抵抗がある。]
妥協とか要領だけで作ったやつで挑むと、 当たり前だから、それこそ泣けもしねえの。 ……
だからどうしろって言う気はないよ。
[こらえきれず、線を引き直す。]
……描きたくもないものを、描くのって 意外と麻痺するんだけど―― やめちまおうと思った時に、やらなきゃ良かったとしか ほんとに思わなかったからさ。
(654) 2014/07/02(Wed) 23時頃
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どうとか―― ……
[聞いてどうするのだろうと、思う。 自分は審査員でもない。素人以下の人間だ。 モニターへ視線を向け直す。 ラストシーンを見なおした。]
――……
[小さく、いう]
(662) 2014/07/02(Wed) 23時頃
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[落胆。吐息の意味は確かめなくてもすぐにわかった。 >>663 >>664 >>665]
……
[酷な事を聞くように思う。 引き直されたラインに、間中は容易に踏み込んだ。 いつの間にか、できれば、可能なら、自分の二の舞いにはならないで欲しいと、思えていた事に気づく。たかが、集合住宅の、隣人の他人に対して。]
続けるのって、リスキーなんだよな。 そのまま、どうにもなんないやつだって居るし。 でもそれは、織り込み済みじゃねえと。 リスクを背負いたくなくてやめちゃうのは――簡単だし。
[そして、それが、自分だ。 ここに居られない、と言う間中に、目を瞬く。]
(673) 2014/07/02(Wed) 23時半頃
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――書くために要らねえなら。 此処だろうと何処だろうと要らねえよ。
逆に要るなら。 他全部無視しても、持ってないと。
(674) 2014/07/02(Wed) 23時半頃
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ほしいもの全部残るかどうかなんて。 才能の話になっちゃうぜ。 俺は才能の話は出来ないよ、遊。
[自分には、ないと感じるものだからだ。 間中には――美しさを感じる力も、楽しさを感じる力も、まだまだ、残っているだろうに。]
悪いな。
[諦めた人間は、自分を凡人と評す。]
凡人にゃ優先順位の話位しかできないね。
(681) 2014/07/02(Wed) 23時半頃
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