28 わかば荘の奇々怪々な非日常
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……ぁ
[>>135苦笑する植頭の言葉が、刺さる。
植頭の顔から視線を外し、俯いた。]
……わたしは、
[ぼくは───]
(145) 2013/09/05(Thu) 23時半頃
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[視線を上げて──ぎくりと身体を強張らせる。]
……───〜
[植頭の背後。 ベッドの向こう。
窓から見えるベランダに、三色の毛色を持つ、猫がいた。]
(148) 2013/09/05(Thu) 23時半頃
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[>>#1>>#2頭の中に声が聞こえる。 這入りこむ。
聞こえるはずのない女の声が、 直接脳を揺さぶるように語りかけて来る。]
わ、 わたし───
わたしの、たいせつな、もの
[なくしたくない、もの。
ふるふると首を振って声を振り払おうとするけれど ひやりと肌に張り付くように、 纏わり付いて離れようとはしない。]
(151) 2013/09/05(Thu) 23時半頃
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[窓の外を見つめて硬直したまま、 裕の顔が目に見えて青褪めてゆく。]
……だ、だめ
[壊される。 壊れてしまう。
今の、この、穏やかな生活が。 夢の様な時間が。]
(155) 2013/09/06(Fri) 00時頃
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壊さない、で
[三毛猫はふっくらとしたマズルの端を上げて にやりと笑った──ように、見えた。
嬉しそうに笑う気配を感じる。
壊すべきものを見つけた、と。 ほくそ笑むような、気配。]
(160) 2013/09/06(Fri) 00時頃
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[>>157植頭の手が肩に触れて揺さぶられるのも、 目の前でふられる掌も、裕の目には見えていないかのよう。
頭の中には女の声が聞こえている。
「 み ぃ ―――― つ け た …… 。」]
──────ッッ!!
(162) 2013/09/06(Fri) 00時頃
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[びくんと肩が揺れ、瞳孔が開く。 怯えの表情を浮かべていた裕の顔から 感情が抜け落ちて、虚ろなものへと変わる。]
(163) 2013/09/06(Fri) 00時頃
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[弱った心は隙間だらけの空間と同じ。
確たる形を持たぬ女の霊は、 出来た隙間からあっさりと裕の内側に入り込む。
衣類を変えるような気軽さで、 三毛猫から裕へと、操る身体を変える。]
(168) 2013/09/06(Fri) 00時頃
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[裕の手が、自らの栗色の髪に掛かる。
やめて、と止める声が、心の奥。
その声を聞いて、女はくすくすと笑う。 虚ろだった裕の顔が、歪に笑み歪む。]
(170) 2013/09/06(Fri) 00時頃
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植頭、さん。 守ってあげないといけないお嬢さんって、
────誰のこと?
[嗜虐的でさえある笑みに唇を歪めた裕の手が 艶やかな細い毛束を集めたウィッグを引き、 ずるり、と。ずれたウィッグの下から、 黒色の、短い髪が表れた。]
(172) 2013/09/06(Fri) 00時頃
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──あら。 この格好でもまだ女の子に見えるのね。
[裕の身体を操る女の霊は、 姿見に映った黒髪にワンピース姿の容姿を一瞥して くす、と笑う。]
化粧して、女の服を着て、仕草を真似て──
これで“男”だなんて、 信じられる?
ねぇ、植頭さん。
ぼく、ねぇ、女装が好きな変態なんですよ?
[立ち上がり、踵を軸にくるりとその場で一回転。 ちょこんとスカートの端を摘んで膝を折り、
嘲るように、嗤った。]
(179) 2013/09/06(Fri) 00時半頃
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[驚き、軽蔑する視線を期待していた。 ここにいられなくなってしまえばいいと。
けれど、植頭の反応は女の予想を裏切るもの。
一瞬で笑みを消し、 被せられた栗色の髪を乱暴に払い除けた。
植頭から離れ、カラリと窓を開ける。
そこにもう三毛猫はいない。 見えるのは、緑の屋根と、ハーブの柔らかい茂みと 広がる空の青さだけ。]
(182) 2013/09/06(Fri) 00時半頃
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[壊れないなら壊してしまおう。
ここは皆の壊したくない場所、 らしいから。
怪我人が出れば。 上手く行って、死者でも出れば。
わかば荘は、元通りとはいかなくなるだろう。]
偽善者。 偽善者の集まりね、ここは。
[吐き捨てるように言って、ベランダに手を掛ける。]
(187) 2013/09/06(Fri) 00時半頃
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[見えるのは視界いっぱいの青。
視界の端に、 分厚い瓶底眼鏡の男が見えた気がした。]
(191) 2013/09/06(Fri) 00時半頃
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[>>192植頭に手を掴まれて、 片手をベランダに掛けたまま振り返ってきっと睨む。]
離せ…………
[可憐な唇から、低く地を這うような声が溢れた。]
(202) 2013/09/06(Fri) 01時頃
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ポーチュラカは、植頭を入れてから、部屋に鍵は掛けていない。
2013/09/06(Fri) 01時頃
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は
な
せ
(213) 2013/09/06(Fri) 01時半頃
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わたしは──、
(214) 2013/09/06(Fri) 01時半頃
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ぼくを、大事、に──?
[羽交い絞めにされたままの裕の身体から もがく力が消える。
>>210そこへ聞こえた、新たな声。
鋭い眼光を受けて、裕の中の女がびくりと震えた。]
(215) 2013/09/06(Fri) 01時半頃
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[逃げ出すことの叶わぬ腕の中、 蔓草の這う五指が眼前に迫る。]
(216) 2013/09/06(Fri) 01時半頃
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[声が聞こえた。 大きくも鋭くもない、穏やかに、誘う声。
その瞬間。 身体の中から何かが抜けて行くのを感じた。
植頭の腕の中で、裕の身体が完全に力を失って崩れ落ちる。 それは、蔓草が触れる前であったか、後であったか。]
(223) 2013/09/06(Fri) 01時半頃
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[黒髪を晒した裕は意識を失い、 植頭の腕に全体重がかかる。
ほっそりした見た目の印象とは異なる、硬い身体。
裕の意識は、そのまますぅと休息の闇に落ちた。**]
(229) 2013/09/06(Fri) 01時半頃
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「 ────ありがとう 」
[優しい声が聞こえた気がした。
誰に言っているんだろう。 ここはどこだろう。 温かい、優しい手が髪を撫でている。
ここは──]
────…
[細い眉の下の、黒い睫毛がぴくりと震え 瞼の下に隠された瞳がゆっくりと瞬いた。]
(288) 2013/09/06(Fri) 23時頃
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[最初に見えたのは、穏やかな表情の植頭の顔。 靄のかかったような思考をはっきりさせようと 幾度か瞬きを繰り返し、 植頭の腕に体重を預けたまま、首を横に倒した。
植頭の顔とベランダのコンクリート天井だけだった視界に 部屋の中に集まった何人もの他の住人が見えた。]
………………──、 ぁ……
[植頭の腕の中で、裕の肩が小さく震える。
全て、思い出した。
自分が何をして、何を言ったか。 今どんな格好でいるか。]
……〜〜ッ
[淡いチークの乗った頬が見る間に赤くなる。]
(296) 2013/09/06(Fri) 23時半頃
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あ……、 ゃ、
[>>299声を掛けられ、ふるりと首を振る。 厭うように眉が寄る。
咄嗟に思う。 話し掛けないで欲しい、と。
だって、声を掛けられたら、 皆に自分が目を覚ましたことを悟られてしまう。
秘密を知られてしまった。 どんな目で見られるだろう。
嘲り? 軽蔑?
───怖い。]
(302) 2013/09/06(Fri) 23時半頃
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[頭に乗せられる柔らかく細い繊維の塊。
礼の言葉も言えず、 顔を上げられず、 植頭の腕の中から出たくないと言うように 身を縮こまらせている。]
(304) 2013/09/06(Fri) 23時半頃
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[今、目の前にあるのは、植頭の服の布地の目。
出来るだけ視界を狭く。 他者の視線を感じぬように。
そうして自分を守る裕の耳に、植頭の声が淡々と。]
(319) 2013/09/07(Sat) 00時頃
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[ふるふると首を横に振る。
否定と肯定の狭間で揺れる未熟な心が 恐怖という幻想の中に真実を探して彷徨っている。
ひと月に満たない時間の中で、 接して来た住人の眼差しは そっけなくも、温かではなかったか。]
(322) 2013/09/07(Sat) 00時半頃
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[鏡の中で会える少女ではない、 素のままの越智裕の言葉で]
受け入れてもらえるか、自信は、ありません。 ぼくはまだ、自分を、そこまで信じられない。
だけど、見て欲しいと、思う。 ……受け入れて欲しいと、思うから。
[植頭の胸から顔を上げて、真っ直ぐに目を見て言った。]
(323) 2013/09/07(Sat) 00時半頃
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[部屋を出て行くギャレットの いつもと変わらぬ調子の声が背中を押してくれる。
植頭もギャレットも大人だから、 同世代とは反応が違うだろうという思いもある。
けれど、どちらにせよ。 越えなければいけないハードルなら 今、この機会に──挑んでみようと、思った。]
(327) 2013/09/07(Sat) 00時半頃
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植頭さんは優しいですね?
…───ありがとう。
[笑う裕の顔は、化粧のせいか、まだ少女めいている。 ふわふわとした雰囲気は、 作り物ではない裕本来の個性らしい。]
え、と 珈琲、談話室で、ですか?
[管理人のかけた号令>>283を聞いていなかった裕は 住人たちが一斉に談話室へと移動した理由に 今更に首を傾げる。]
(344) 2013/09/07(Sat) 01時頃
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