93 Once upon a time...
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[飛び込んできた熱を、そっと抱きとめた。 身体はもう持たないはずなのに、子供だからやっぱり体温が高いんだな、なんて考えて、少し笑えて、胸の内が同じようにあたたかくなった]
トニー、一人残して ……先に来ちゃって、ごめんね
[一度だけ。 最後に、一度だけ謝った。 舞台上とは違う、短いままの赤毛を ゆっくり撫でて、ぽんぽん、と叩いた]
(55) 茄子 2014/10/23(Thu) 23時頃
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もう、本当に 大丈夫だよ 何も心配しなくていいから
………もう、痛くないからね
[泣き声が、肩の震えが止むまで、そうしていた。 死してより、暫し止まっていた奏者の心は子狼の涙に解かれ そして、メルヘンに皹を入れた狼たちへも捧げられた祈りと、死者への弔いの想いに、 生前より浮かべていた笑みそのものの 穏やかな気持ちを取り戻していた]
(56) 茄子 2014/10/23(Thu) 23時頃
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――あれから――
[厚い布を捲る。おずおずと、中を覗き込む。 そこはライトで眩しくて、いきいきとして、期待に瞳をきらきらにした人たちが、数え切れないほどにいた。 そう、あの時もこの光に、呑み込まれたんだった。 この位置から舞台を見るのは何時ぶりになるんだろう。 鳴らないはずの鼓動がとくとくうるさい気がして、ぎゅっとそばにいたニコラスの服の裾を掴んだ。]
(57) mmsk 2014/10/23(Thu) 23時頃
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[胸にあるのは、小さな不安。自分はここで受け入れられるべき存在ではない、という、自業自得の不安。 実際チケット売りのエフェドラからは、目を盗んで逃げ出して、それからはずっとニコラスの影に隠れっきりだ。 小さな身体はこんなことに大活躍だった。
あの日も、そんなふうに子供の体を滑り込ませて。 今思えばとっくにばれていたのかもしれないが、それも構わず目の前で繰り広げられるメルヘンに、心を奪われた。 大入りの隙間、席を見つけて腰掛けて、夢の夜を待つ。 まずはじめは、団長の――]
(58) mmsk 2014/10/23(Thu) 23時頃
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……トリノス。
[口上を謳う男は、ブランコ乗りだった。いつもとどんなに雰囲気が違ってもわかる、慣れ親しんだ仲間。 彼をそこに立たせたのは自分、で。自分さえ動かなければ、ここにはあのでっぷり太った団長が、脂ぎった頭をふきふき、それでも心底嬉しそうに、ショーの開幕を語るはずだったのだ。
だから、トリノスを見る表情は複雑に険しく――けれど口数少ないブランコ乗りとは思えないほど、鮮やかなハッピーエンドの幕開けだったので、次第に黒い瞳は大きく、丸く。 最後は満面、周りの子どもたちと何ら変わりないきらきらした目で、いっぱいの拍手を送った。]
(59) mmsk 2014/10/23(Thu) 23時頃
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―― ――
[それは、公演の始まる前のことか。 一人の女がテントを訪れ、その場にいた団の者に問いかけた]
失礼します。団長様はいらっしゃいますか?
[忙しいはずのこの段階で、面通しが叶ったかどうかは分からない。 難しいならば、無理は通さない。 その者か、新団長か。 ともあれ、伝えるべきことだけはきっちりと、口に出したことだろう]
託を、賜っていまして……。
[墓の付近で出会った者からと、そう告げて。 顔を隠していた布を、そっと緩めた]
(60) ginlime 2014/10/23(Thu) 23時半頃
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クラウン……と言うのでしょうか。 そういった容貌の方から……『前口上、楽しみにしてる』と。
[食いちぎられた顔にある、その双眸は白濁しており。 彼女の言うような、決容貌も光も捉えることはできそうになかったが。 ただ、それだけ告げると頭を下げ、一本しかない腕で掲げてその場を辞した]
……みなさまの公演。 私も、楽しみにしています。
[その首には、もはや生者においてその効力は、彼女しか知る由もないだろう。 赤黒い土人形が吊るされていたと言う**]
(61) ginlime 2014/10/23(Thu) 23時半頃
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― 公演の日 ―
[生きていく彼らが、そして御伽噺が続いていくこと。 確かめたかった。 そして、楽しみたかった。
トニーもそうだったようい、この奏者もまた 一人の裏方として、また「客」として メルヘンのファンなのだから]
大丈夫だよ
[そう、何度も言って 低い位置にある赤毛を撫でた。 最初は不器用だったこの仕草も、もう慣れたもの。 整然、メルヘンにいた他の子どもにも――たとえば、ペギーとか、と視線は自然と彼女を探す――こうしてやれればよかった、と ほんの少しの後悔を抱えて、開演を待つ。 出迎えの音楽を奏でているのは、まだ慣れぬ後輩だろう。 あ、またひとつ音を外した、と苦笑して、暗いテント内に慣れるよう、今はあまり意味もないが数度瞬きをした]
(62) 茄子 2014/10/23(Thu) 23時半頃
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[やがて、スポットライトに照らされたリングの中央で 新たな御伽噺が幕を上げる。
死者を見送り、そして引き継いでくれた偉大なる、新団長]
トリノス………
[心が沸き立つ。 知らず、握った拳に力が入る。 きっとトニーにも負けないくらい目を輝かせて、 そして精一杯の想いをこめて、拍手を送った―――]
(63) 茄子 2014/10/23(Thu) 23時半頃
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[前口上も団長としての大事な仕事。 けれどトリノスは空中ブランコの演目に欠かせぬひとでもある。
大事なその舞台をスーザンは舞台袖でじっと見詰める。 翼がはえたように軽やかに宙を舞うさまをみる間は 観客のひとりでありファンのひとりであり。 彼の紡ぐ『メルヘン』の世界に浸る。
そうして、舞台から戻ってくるトリノスを迎えて 滴る汗をぬぐうためのタオルを手渡し]
――…トリノス! 今日の舞台も最高だった!
[ふわ、と伸びた両の手は彼のうなじで絡ませ抱きつき 猫のような灰色の眸は伏せられ、寄せるくちびる。]
大好き。
[吐息混じりの囁きは微かな熱孕む。**]
(64) helmut 2014/10/23(Thu) 23時半頃
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――いつか――
すごーく、罪悪感はあるんだけど……。
[そう言って、エフェドラは背中の上に、ぽふりと覆いかぶさった]
何もしないでいると、成仏しちゃう気がするんだよね……。 だから……。 定期的に、『それっぽいこと』しておかないと。
[正直、死んだ後になっても、そこら辺のシステムはよく分からない。 ただ、うっかりやりそびれてしまったせいで、昇天することになったら嫌だから。 本音じゃないけど、覚悟を決めて。 後ろから抱き付いた相手の耳元で、その名をおどろおどろしく告げてやった]
サ〜〜イ〜〜モ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン
(65) ginlime 2014/10/24(Fri) 00時頃
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いーつー死ーぬーのぉぉーーー?
[ひゅ〜どろどろ]
……よし。充電完了。いつもありがとー。
[やることやったら、背中から飛び降り。 ふわふわっ、と去っていく。 今日のメルヘンはどんなかなーって、心の内に抱きながら**]
(66) ginlime 2014/10/24(Fri) 00時頃
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[団長役としての仕事を終えたら衣装を着替え、 フライヤーとしてブランコの合間を飛ぶ。 何度も練習してきたけれど、してきたからこそ緊張するが 身体はきちんと役目を終えて出番を終えた。
裏に引っ込むとすぐスージーがタオルを渡してくれる。 自分だって演目を終えた後なのにと思いつつ 甘えてしまって情けない限りだ。]
ありが、と……――――ッ!!?
[浮かぶ汗を拭うよりも先に細い腕が絡みついて、 引き寄せられるままにしっとりと唇は重なる。 目を閉じる暇は無かった。]
(67) meiji 2014/10/24(Fri) 00時頃
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[あまい囁きを耳に受けた瞬間、 硬直していた時間は動き出す。
OKここはまだ舞台袖で表ではショーが、終わりそうだ。 そして腕の中には愛しいスージーが居る。よし。]
……俺も。
[回る思考とは反対に絞り出せたのは一言だけだった。**]
(68) meiji 2014/10/24(Fri) 00時頃
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[大丈夫だよ、はいつだって、子狼の心を凪にする。 不器用でも触れてくれるその手が、ほんとうにあたたかい。 たとえ温度がなかったとしても、それは子狼にとっては、どんな暖炉より、あたたかい。]
うん。
[そしてその度、子狼は少し高いところにある金髪を見上げて、赤毛の頭で頷くのだ。 そばにいて、二人で仲間を食らった夜も。 また出会って、泣きじゃくる中そっと撫でてくれた時も。 今でも。
不安は、溶けていって。 今夜はハッピーエンドを心から楽しめそうだ。 初めてサーカスを見た子供と同じように、はしゃいで、はしゃいで、はしゃぎ疲れて、メルヘンのピンク色した、夢を見よう*]
(69) mmsk 2014/10/24(Fri) 00時頃
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[あの人狼騒動の後。 幾人もを殺され、殺しもした男は。サーカスについて、死について、人生について、色々考え――ナイフを置く事も、十分に考えて。けれど結局、何も変えはしなかった。 新たに動き出したサーカスに、男もいた]
[ナイフを投げる。ナイフが刺さる。 男のナイフ投げは相変わらず百発百中だ。 舞台を降りて、笑う。次々に喋る。 男のお喋りも、相変わらずだ]
……、 本当になあ。 ずりぃんだよ。俺は。
[時折、 無口になる事は、増えたけれど]
(70) mimu175r 2014/10/24(Fri) 00時頃
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……! っ、 ……?
[だが、そんな時には、不意に。 ぞくりと寒気を感じるような事が、何かに触れられたように感じる、声が聞こえたように思う事が、あって]
なんだよ、 ……怖い話は、団長のヨメの化粧の秘密だけで十分だぜ? なんて、な。
[やはり結局、男はお喋りなのだった**]
(71) mimu175r 2014/10/24(Fri) 00時頃
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