78 わかば荘の薔薇色の日常
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だしまき… たまご ?
[なんか皿持ってる。皿の上になんかある。 ちょっと焦げた炒り玉子?件のだし巻き玉子はどこ?
大量のハテナマーク背負って見つめた皿から、 行儀悪く指先で摘んだ炒り玉子。 疑心たっぷりな眼差しで凝視する5秒の後に 思い切って口の中へと迎え入れた。
味蕾を刺激するのは深みの無い調味料の味そのまま …しかも醤油だ味醂だ塩だ胡椒だと、 どれもこれも自己主張が強い! とは言え、まあ、食えなくも無い。]
……うま…くは、ねぇのだけど。嫌いじゃ無い。
[とかなんとか曖昧な感想。 どこかこの料理の長所を探してやろうと ド真剣な顔つきで食ってるうちに、皿は空になった。]
(183) onecat69 2014/07/04(Fri) 20時頃
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……攻太。…おかわり。
[一皿から明晰な褒めるべき点、見つからず。 かくなる上はと、真剣な表情は続行したまま、 芸の手料理第二弾を強請る事にした。
次こそは見つけよう。
それが酒盛りの肴として成立したかどうかは、 芸の腕の見せ所ということで。 この場では芸の頭撫でくりまわしてから再び玄関へと戻り、 俺は雨の中に立つ事になる。*]
(185) onecat69 2014/07/04(Fri) 20時頃
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――朝――
[結局あのあと酒盛りしたのかしなかったのか、 細やかな事は昨晩の事として朝には持ち込まない。
明け方の夢を経て踏んだ今日。目を開けて最初に。 カーテンの隙間から射す光線のような日光一筋を つつっ…と視線で辿りながらゴロッと寝返り。
ベッドに俯せて見たのは、 光に指し示されるような玄関扉。]
(302) onecat69 2014/07/05(Sat) 12時半頃
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[―…ごくごく当たり前の事みたいに、 起き上がって歯を磨き髭を剃り 誰かの手を求めずにシャワーを浴びて服を着る。
淡々と日常をこなしながら、 薄っすら残った夢を思い出した。
小さな棚に雑多なものをきれいに並べていくような 散らかっていたものを在るべきところへ戻すような、 夢の中で行った整理が功を奏してか 頭の中、とてもすっきりきっちりとしている。
支度を終えて出た部屋の扉にきっちり施錠。 ……さて、何処に行こう。**]
(303) onecat69 2014/07/05(Sat) 12時半頃
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――庭――
[三毛猫が見上げる虹。 架かるぼやけた色相には一瞥くれるだけで、 空を仰ぐ猫にさえ興味を示さないまま 持参した余らせていた猫餌の封を切る。
ちょっと形の潰れた魚を模した猫おやつ一握り、 106号室のベランダ前、派手に芝生に撒いたった。
…三毛猫のほかにも、 その辺の野良猫とか鼠とかカラスとか色々様々が 寄ってくるかもしんねぇとは考え至らず浅はかに。
めっちゃ近くで餌食うとこに会えるといいね。*]
(305) onecat69 2014/07/05(Sat) 12時半頃
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――雨上がりの街――
[乾いたスニーカーを履いて、 淡青い空を映す静かな水溜りを避けて下りる坂道。 せっかく綺麗になった靴を早速汚すと凹むし。
今日は、外出に傘は要らない。 自由な両手は道脇の紫陽花を摘んだりして遊ばせて、 坂の下、コンビニ前を通って住宅街を抜け、街へ。
今日も天露はアルバイトをしてるのだろうかって コンビニの前では一瞬だけ、足を止めたけど。
行き着いた先、扉を押し開ける。 掲げられた看板には『チャルラタン』と。]
(307) onecat69 2014/07/05(Sat) 14時半頃
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――『チャルラタン』――
……シュークリームとエクレア、10個ずつ。 化粧箱、…その白いのでいいや。入れて下さい。
[日中の明るい店内。 買うものは決めていたから、入るや否やで早速注文。
ちょうど一見するととてつもなくケーキが不似合いな 檀が間中のウェディングだバースデーだって 賑やかそうでキラキラな話題が終わった頃合いだったか。
そのまま檀が包んでくれるならそれを待つし、 アルバイト店員が代わるようならその子に任せる。]
(308) onecat69 2014/07/05(Sat) 14時半頃
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ひとつ、包まないやつ…追加で。 ぁー……待って、………ゃ、その隣の、それがイイ。
[ショーケースに並ぶシュークリームの中で 一番大きくてクリームが多そうなのを選び出して、 化粧箱からは仲間はずれな包装をお願い。 や、受け取ったらすぐ食べるから 包装無くてもいいんだけど。]
(309) onecat69 2014/07/05(Sat) 14時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
onecat69 2014/07/05(Sat) 14時半頃
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――知らない道――
[買った菓子は、様子を見に寄った事務所への差し入れ。 あちこちから集まり、あちこちへ散っていく荷物、 積まれたダンボール箱の山は素っ気ない色をしているが 手書きの送り状の文字には人の気配があって好き。
シュークリームを食べながら、 事務のお姉さんとややこしい話を少し。 少しの内勤期間を置いたあと新人と組んでの業務復帰… ってことで。来週からよろしくお願いします。 そんな感じ。
帰り道は、往路とは違う順路を選んで、遠回り。 普段は近づかない駅の南側を走る道路沿いの住宅街、 見かけた古いアパートの傍に、痩せた黒猫が。
何にも興味が無さそうな冷たい目つきをした猫が、 熱心に見上げている建物に何があるのかなって。 誘われるように近付いて、ちょっと、寄り道。**]
(325) onecat69 2014/07/05(Sat) 20時頃
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――パーティ会場な談話室――
………桃地、熱でもあんじゃねぇの。
[頭大丈夫?って、斉唱を促す管理人の額に掌当てる。
もちろんケーキは食いたいので参加はするし、 徹津が誕生日だって聞いたら「おめでとう」も言う。 それとこれとは別のお話。
ちなみに先程はじめて聞いた誕生日イベントに 事前の準備があったわけもなく。 部屋から通販で買って未開封のままだった ポラロイドカメラをプレゼント替わりに贈呈。]
おめでと。
[お祝いは、頭ぽすぽすとしてやりながら。]
(345) onecat69 2014/07/05(Sat) 22時頃
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……小学生の時ぶりだって。こんなん。
[さて。歌だ。
どう考えても恥ずかしいし、 誰も歌わなかったら桃地がかわいそうで泣ける。 仕方がねぇので俺は元気に歌ってやろう。
10(0..100)x1点くらいの歌唱力、大声で披露な。]
(346) onecat69 2014/07/05(Sat) 22時頃
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[賑やかな輪からは早々に外れて、 いつものように少しだけ距離をおいて楽しむ。 柱に擬態は出来ないけど。
自棄気味なパーティ主催お疲れ様な管理人をつかまえて、 退去時期についての相談を持ちかけるのは 騒ぎが全部終わった後で。
伝えたのは常識的な二ヶ月後の日付。**]
(361) onecat69 2014/07/05(Sat) 23時頃
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[管理人室は狭くて湿っぽいから避けたいところ。 夜風涼しいウッドデッキを選んで移動し、 窓越しの談話室の賑わいを一瞥してから話を。
疲れの浮いた顔、頼りないお父さんみたいよ桃地。 ここ何年かで白髪増えたんじゃねぇのって 軽い雑談はいつも通りに。 この人との、線引が明確な距離感めっちゃ楽で好き。]
ゃー……猫が居てさ。 庭は無いけど…天窓ついてる部屋が空いてんの。
[そういう物件見つけたからって説明は、 ここへの入居を「三毛猫と庭が気に入った」からと 決めた時と同じくあっさりとしたもの。
世間話の温度と湿度、そのままの。]
(373) onecat69 2014/07/05(Sat) 23時半頃
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……猫とは相性わりぃの、俺。
[ここの三毛猫しかり、 今日会った黒猫も始終可愛げは微塵もなかった。 懐くとか懐かないとか、そういう所に興味は無い。
白髪を気にする管理人、 お父さんどころかお母さんに見えてくるわけで。 ちょっと、「家出るわ」って言い出した日の 実家の母親の顔とか思い出した。]
(378) onecat69 2014/07/06(Sun) 00時頃
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[座らないままの立ち話、 視線は管理人の眼鏡越しの目を見つめる目元が ちょっと緩む。]
ここ、家っぽいしさ。…居心地良いし。 でもダメじゃん。ずっと家に居たら。
……本当にずっとは居られねぇのだし。
[談話室、誕生パーティ、団欒、温かさ。 幸いに満ちた日常は与えられて得るべきではないなって。]
(379) onecat69 2014/07/06(Sun) 00時頃
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――パーティ、終わりがけの柱への接近――
[擬態、見破って。
部屋の隅で柱と化していた檀に接近して、 やっぱり柱に凭れるようにして半身に寄り掛かる。 内緒話に適した距離を作るために。
先のウッドデッキでの管理人との話で 二ヶ月後退去で処理は進むと確定した上で。
こそりと、それを伝える。]
……引っ越すんだけどさ、俺。 撫でられたくなった、会いにくる。 薫さん。
[彼と三毛猫との親密度がどうなるのかは気になるし 一緒にまた菓子を作ったりもしたいし。 そんな、檀の耳元へ口元寄せての打ち明け話。]
(393) onecat69 2014/07/06(Sun) 00時半頃
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――ウッドデッキでの会話の続き(>>389)――
……桃地のそういうとこ、好きだよ。
[煙草の煙が風に舞う向こう、 溜息つく管理人の反応はこの上なく大人で。 そういうとこは、母親には似てなくて安心する。
立場の境界線を挟んでの会話は 始終穏やかなまま進み、終わる。
俺にとっては実家を出て初めて暮らした家がここで 普通の管理人とはどういう物かは知らないが。 たぶん単なる管理人にするべきじゃないくらい 親密に彼の肩を叩いて、 談話室へと引き返した。*]
(396) onecat69 2014/07/06(Sun) 00時半頃
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…撫でたくなったら、呼んでくれてもいい。
[安心をくれる表情の変化が少し渋い。 檀の手の下、髪をぐしゃっとやられながら、 両手で彼の頬を包んで撫でたり解したりと。少し。
携帯の番号は、退去前に改めて確認しあおうかな。 これまでは廊下を少し歩いてノックすれば良かったし 談話室で顔を合わせて話も出来た。
自発的に会いに行ったり来たりって、 本当にそうなれば…それはそれで楽しかろうと 俺は前向きな笑顔を作る。]
……餌置いといてくれたら、 勝手に食いにくるかもしんねぇし。
[撫でたついでに、額同士をゴツ…と一度。]
(402) onecat69 2014/07/06(Sun) 01時頃
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ゃー……俺、猫じゃねぇので。
[むしろ犬の、絶対的に許してる目を真似られたら… とは思ったものの残念ながら俺は人間だ。 それでも信頼を浮かべた眼差しが檀の顔を見つめる。 その目を、撫で付けてくれるような掌に応じて細く。
額を合わせたまま、 怪我してもって言葉にちょっとふきだし笑う。]
……居ねぇでしょ。たぶん、此処が特別。 薫さんも、新しく来る人に、 怖がられないように。
[きっとそんな心配不要なんだろうとは思いつつ。 近付けたついでに鋭い目元に唇すり寄せてから そろりと顔を離した。]
(417) onecat69 2014/07/06(Sun) 02時頃
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――談話室・閑話――
[桃が入った箱を見たのは、談話室へ戻ってすぐ。 貼りっぱなしの送り状が見慣れたものだったから、 中身よりも先に外側に意識を向けた。
箱の表記も送り状の送り主欄も、 おそらくは間中 遊の実家だと推測に容易い内容。 ―…意外だ、と見やった間中はケーキの支度中。 他人を想って他人のために動いている間中。
数秒か十数秒か数十秒か…じぃと静かに眺めていたが それにはすぐ飽いた。
……次にまた間中を意識して見たのは、 檀に桃の箱渡している場面で。 今度は、思わず口元に笑み浮かせた。*]
(425) onecat69 2014/07/06(Sun) 02時半頃
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――後に――
[その次に間中 遊に会ったのはいつだったか。
それがどういった場面であっても、 俺の視界で間中が白猫のように映る事は無い。
猫という生き物に 所在地を持たない不思議で不安定な存在だという イメージを抱いていたせいだと思う。 間中という男に抱いていたイメージは、そうだった。]
……間中。やっぱり、ただの人間だった。
[いつだったか、彼に向けた自分の言葉の否定。 呼び止めるためにか掴んだ間中の手首、 温度も手触りもあの時と変わりは無いのに。
だからってなんだって感じに、 そうとだけ言ってしまうと掴んだ手は解放した。*]
(431) onecat69 2014/07/06(Sun) 03時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
onecat69 2014/07/06(Sun) 03時頃
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[とても間近に聞いた動揺を露わにした声も、 触れた目元の体温や微かな動きも、 唇を掠める睫毛の感触も、記憶に深く刻まれる。
この目が笑ってくれるところを見るのが好き。 だから離れる間際に愛しむような淡いキスを残し。
ついでに…と言うには度が過ぎるかとも思ったけど 悪戯心のまま、そこをちらりと舐めたりも。]
……猫みたく、ザラザラしてねぇでしょ。
[そして、檀が目元に指先添えるのと同じように、 さりさり…自らの唇を人差し指の背で撫でながら 談話室を離れる。
一度だけ振り向いた時、 桃を持参した間中の姿を見たのだった。*]
(478) onecat69 2014/07/06(Sun) 14時半頃
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――夏から秋にかけて――
[あの梅雨明け日から、二ヶ月。 包帯はもう要らないし、元通りの自由を得た。
思い切り動けるってやっぱり素晴らしいと実感して 調子に乗って芸と一緒に庭で筋トレしてみたり。 世話になっていた礼のつもりで 休みの日は宇佐美の洗濯物請負業務を手伝ったり。 (大雑把な干し方を何度か指摘され、干し方を覚えた。)
進がクリアした件のRPGゲームの結末に息を呑み、 彼が選んだ三次元での新たな冒険の話から いつかまたって曖昧な約束をして。
…なんやかんや、 平井の作る丁寧な食卓を60回くらい食べてるうちに 夏が過ぎて雀色時が目立ちはじめる時期になっていた。
その間、ほとんど毎日、檀の部屋の扉を叩いた。]
(510) onecat69 2014/07/06(Sun) 18時頃
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――引っ越しの日――
[九月の末・某日。 まさか台風直撃か…という心配は杞憂に終わって、晴天。
午前中に搬出を済ませて空っぽの部屋。 …ちなみに、引っ越す旨はご近所さんでは檀と進にしか 直接は伝えなかったので、突然の騒音ごめんなさい。
互いに仕事を終えた夜の時間を使って 幾つかの料理と菓子の作り方は教わっていたが、 檀に手書きの餞別レシピノート渡されてちょっと驚く。
手書きで丁寧に描かれたノート、ぱらぱら捲って。]
ゃー……餓死はしなくて済みそう。ありがと。
[徒歩20分もかからない距離に越すには大袈裟な 神妙な顔で別れの握手を求め、右手を差し出す。 たかが徒歩圏内。されど徒歩圏内。だ。]
(511) onecat69 2014/07/06(Sun) 18時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
onecat69 2014/07/06(Sun) 19時頃
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――夏の思い出――
……味噌、醤油…麺つゆと海苔にゴマ油… …を、混ぜて入れれば…大概美味い。覚えた。
[料理指導の日々、檀には大変苦労をかけたと思う。 芸と同じ道を歩む予感をひしひし感じさせる 物覚えの悪さと危なっかしい手付きを散々見せつけた。
それでも日が経つにつれて。 食わせてもらった美味いものに笑みを浮かべて 檀がそれにつられるように笑ってくれる回数と、 俺が作ったものを檀が食べて笑ってくれて それに安心した俺が笑う回数がほとんど均等に。
頭を撫でて、撫でられて、猫を待ち、猫に逃げられ、 たまに誕生会の夜に談話室の隅でしたような 少しばかり踏み込んだ接近で額や掌を重ね。
―…日々は流れた。]
(581) onecat69 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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餓死とか…ゃー……たぶん、しねぇって。 米より、シュークリーム食いたい。桃のやつ。
あれ…美味かったな。
[頭の上の厚い掌の心地良い重みはすっかり馴染んでいて、 そうされると、俺は檀に一歩近付く。 ふたりで買い物をした雨の日に詰め分より もう一歩進んだ、今の俺と彼の間に横たわる距離。
いつかのシュークリームの味、思い出して。 緩むまま緩ませた無防備な笑みで頷く。 困った時は、真っ先に頼ります…って。]
(582) onecat69 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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…また、すぐ会いに来る。
[ちょっと甘えるくらい許されろ。
こっそり残した別れの挨拶への 檀の反応はひとしきり見た後。 ドヤ顔で言い残すと、荷物詰めた鞄を背負って、 わかば荘とさようならをして坂を駆け下りた。
いってきますじゃなくて、さよなら。わかば荘。**]
(585) onecat69 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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――十月中旬――
[日増しに秋も深まる夜長の頃。 運転席に置いた文字盤の大きなアナログ時計、 針が示しているのはまだ17時少し前だ。 アクセルを踏み込み進む坂の上、空はもう夜の色。
緑屋根の古アパートの前で配送車を停め、 荷台からこの住所宛の小包を幾つか抱え出し。 最終の配達のために、配達員は玄関を開いた。]
どうもー……三毛猫宅配便でーす。 ぁー…ついでに珈琲ごちそうして下さい、桃地さん。
[十月からこの区域を担当する事になったくせに やけに親しげに図々しく呼びかける配達員の声は わかば荘の新しい日常の一つになる。
なんせ、仕事ついでに甘ったれてここで一服するのは この男の、この半月ほぼ毎日の日課である。*]
(601) onecat69 2014/07/06(Sun) 23時頃
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――106号室に毎日届く小包――
[ほとんど毎日わかば荘を訪ねる配達員は、 決まって一階廊下奥…106号室の扉前に荷物を置く。
宛先はもちろん「檀 薫」 差出人はやっぱりもちろん「日向翔平」。
その荷物のだいたいが小さな箱。中身はと言うと。 猫餌の詰め合わせであったり、 招きパンダの置き物・ゲイ太だったり、 クール便指定の手作りクッキーであったり、様々。 花の鉢植えや、ブリキの飛行機だった日もあった。
部屋の主が、仕事で不在な時間ばかりを狙った、 ちょっとした悪戯であり、コミュニケーション。
106号室を離れる時、配達員は決まって、 その部屋の扉を愛しそうに撫でた。**]
(606) onecat69 2014/07/06(Sun) 23時頃
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――真意――
[わかば荘よりずっと古いアパートなりに、 二階に位置する俺の新居はなかなか居心地が良い。 天窓から落ちる日光はいつだって明るいし、 雨の音も風の呻きも間近に感じられる。
そんな天窓から秋の月星が見える夜。
甘い香りを連れて訪ねてくれた檀(>>=98)を、 また少しずつ物が増えつつある室内へと迎え入れ。]
……何で…って、 キスする意味なんて…一個しか無いんじゃねぇかな。
[貰ったばかりの桃のシュークリームを齧りながら、 じりじりと檀との間の距離を削っていく。 削って、削って、そのうちゼロに。]
(611) onecat69 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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