93 Once upon a time...
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――そして――
[居住テントを離れて、しばらく。 じわりと藍色が広がる空の下、白いドレスの裾を見かけた。]
(44) 2014/10/16(Thu) 16時頃
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トニーは、エフェドラから距離を取る。探すの言葉裏腹死角に隠れるように。
2014/10/16(Thu) 16時頃
靴磨き トニーは、メモを貼った。
2014/10/16(Thu) 16時頃
くよ
…に…こう…と…ったけれど…
…われたのが…だったら…
…じ…の…どもだったら…たなかったかもしれない…
その…さに…えようと
せめて…をはやめる…
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[背に手が触れる。どきりとしたのも束の間、静かな声に笑みすら浮かべて詰めた息を吐いた。 何も心病むことはない。ふたりでいる。]
うん。
[月明かり色をした短いきれいな髪を見上げて、幼子のように頷く。 この向こう側に、いる。]
(50) 2014/10/16(Thu) 16時半頃
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[ず、と重い衣擦れの音を立てて、エフェドラの元へ顔を出す。 彼女から感じるのは殺気か、それとも作戦の成功をほくそ笑む喜びか、恐怖か、落胆か。 子狼はそのまま食らいつきたい衝動を抑えて平静を保つのに必死で、よくわからない。]
――ドラ。見つけた。 聞きたいことがあるんだ。ペギーの、守り方。
おれ、頭よくないから、ペギーを"誰"から守ればいいのか、わかんない。 だからさ、誰に気をつければいいか、聞きに来た。
[見つめる視線。おおよそ同じ高さくらいの目線の奥、抑えきれずほんのりと紅い焔が灯っている。 それが見えたなら、エフェドラはどう思ったろう。後悔したろうか。 あれから何度も、エフェドラの隣で言葉を交わした。 標的はずっと、目の前にいた。]
(52) 2014/10/16(Thu) 17時頃
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うん…で…ける…
…
…は…かじゃないから
…か…えがあるかもしれない
…で…っているよ
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ドラは、まだ誰かが、この中で誰か殺すって、思ってるんだ。 それは誰? おれは誰から、ペギーを守ればいいの?
[問いかける口調に似合わずに、口元がにぃと弓なった。 だめだ、と思うのに、獣の血は貪欲だ。 お誂え向きに、ここは人気がない。エフェドラの目を赤と黒の混じった目でじっと見据えながら、一歩、一歩、距離を詰める。 吐息すら触れそうな距離になって、子狼は高さの近いエフェドラの肩口を地に突き倒す。 自分の身体ごと、その重さで抑えこむようにして馬乗りになる。]
なあ。誰から、守ればよかった――?
[答えはもういらない。押さえつけた肩、肉の薄い首筋、喉笛に食らい付こうと、大きく口を開き牙を剥く。]
(54) 2014/10/16(Thu) 17時半頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2014/10/16(Thu) 17時半頃
靴磨き トニーは、メモを貼った。
2014/10/16(Thu) 21時頃
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[鋭く尖った牙は、やすやすと皮膚を裂く。 木造りの人形みたいに痩せた身体でも、人には違いない。皮を破って血管も切れて、溢れ出た真っ赤な血液をすする。]
は、ぁ……んむ、
[酔う、とはこういうことなんだろうか。 公演後に酒を呷っては楽しげにする団員を見てきた。 子供にゃ早いとそれを口にすることは叶わなかったが、今は頭の芯からみんな雲になったみたいにふわふわする。気分がいい。もっと欲しい。もっと。 あの時よりもうまい、と思う。今単純に飢えていたからか、別の理由か。考えるより無心にエフェドラを味わった。]
(65) 2014/10/16(Thu) 22時半頃
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[肉も食おう。肉も。胸に腹に歯が迫る。 甘い。口に入ってしまえば歯を立てなくともとろけるようになくなっていって、柔らかいその肉をゆっくりと飲み込む頃には至福が全身を満たしていた。]
ふ、はァ、
[止められない。止まらない。 無意識のうちに呼吸は荒くなる。爛々と目は紅く輝いて、本能に任せた欲の塊になって、目の前の身体を喰らい尽くす。 意識は真っ白に真っ赤になってを繰り返す。そこに他に誰がいるかなんて、もう、見えない。]
(66) 2014/10/16(Thu) 22時半頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2014/10/16(Thu) 22時半頃
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[サイモンの投げた三本が、一本は頭の上を、一本は背中を掠めていき。 最後の一本が肩口に刺さった。]
がッ、……!
[事切れた女を食い荒らしていた獣は、意識を突然走った痛みに持っていかれる。 肩を抑えて呻く。片手は血に染まって爪が食いこんだ。]
(73) 2014/10/16(Thu) 23時半頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2014/10/16(Thu) 23時半頃
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[咆哮。 びくんと肩が跳ねて、そちらを向く。 吼えたのはニコラスだ。ニコラスが吼えている。 どうして、という驚きに、一瞬痛みを忘れかけた。 こちらへ駆け寄ってくる。ニコラス。どうして。 言葉を忘れてしまったように、唇は動かない。 呆然と、それを見るばかりで。 そばに来たニコラスに、血まみれの身体を寄せる。]
(80) 2014/10/17(Fri) 00時頃
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だよ
…べちゃおうよ
…そうすれば…もう…いことするひともいない
…しくなることもない
…しいみんなのままで…べてしまおう…
…
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[引き寄せられた身体に鞭を打つようにして、立ち上がる。 長身の奏者に凭れるようにしながら、ゆっくりと離れた。 ナイフから庇われているのには気づいたが、どうすることもできず。 行こう、というのに頷いて、出来るだけ足を早めた。
その夜、自分のテントに戻ることはなかった。]
(89) 2014/10/17(Fri) 00時半頃
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べよう…
…は…しかったでしょう…
…
…くない…だよ
…
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[子狼は、震えながら眠った。 痛みに脂汗が滲む、浅い浅い眠り。 そのくせに胃や頭は幸福をまだ訴えていて、このまま眠ってしまえば幸せだと、重ねて言い聞かせてくる錯覚。
手を伸ばせばニコラスのいる距離。手当を終えてもここにいてほしいと縋ったのは自分。 朝を待ちながら、目を伏せる。気配の希薄な彼だから、そのまま離れられたなら、気づかないかもしれないが**]
(102) 2014/10/17(Fri) 01時半頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2014/10/17(Fri) 01時半頃
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――楽団テント――
[血が止まり、耐えられるくらいに痛みに慣れてきた頃には、眠りは深くなり。 楽団の集うテントの中、未だ静かな寝息だけを立てている。 傷ついた身体が求めるままに、ひとときの休息を得ていた。]
(128) 2014/10/17(Fri) 22時半頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2014/10/17(Fri) 22時半頃
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[薄く目を開けた。厚い布地が光を遮るから、今が何時なのか、どれくらい日が高いのかわからなかった。 もう少し寝ててもいいという誘いに乗るように、うつらうつらとしかけるも、幕を捲るニコラスの動きに気づいてそれを目線で追う。]
――、
[ニコラスを呼ぼうとしたのか、何をするのかと問おうとしたのか、寝起きの唇はうまく動かなくて、音を作れない。 結局ただ覚めきらない目線がぼうっと向くだけだ。 肩がじくりと痛い。]
(136) 2014/10/17(Fri) 23時頃
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[向こう側に人がいる。獣の耳は、会話の声を鋭く捉える。 ザックの声だ。聞こえてはいる、聞こえてはいるが、幕引き、の意味までは明確に捉えられない。 ただ、ナイフ使いの言葉が出た。自分たち二人が何であるかを、サイモンは知っているはずだ。
よいことは起きない。確信に近くそう思う。 緊張の糸を細く張りながら、息をすぅとひそめる。]
(141) 2014/10/17(Fri) 23時頃
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[子狼は息を殺し続ける。 それが今出来る最善だった。細い息をし続けることに慣れてはいない。 苦しい。ただ、苦しい。それでもはさりと身体の上に布がかかれば、その意味は充分にわかる。 苦しさ程度で身動ぎをしてはいけない。
音楽テントの布の隙間、シェロが滑りこんできていても、それに気づいても、動きはしない。 ただ、早く去れと頭の中で繰り返し繰り返し唱えるだけ。]
(158) 2014/10/18(Sat) 00時頃
|
み
それをもし…われたらきっといつかの…いを
それでもしまいこんで…なお…う…
…どもが…ぬのは…たくない…と…
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