93 Once upon a time...
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共演、するんだ。
……… 三羽の、鳥。
[アントニー>>139のたどたどしい声も、耳が、拾った。
―――…メルヘンの紡ぐ物語の一端。
鳥が一羽、羽ばたくのかと、走る妙な緊張感の合間に。 ハッピー・エンドに入った細い亀裂を、肌でも感じながら。]
(145) 2014/10/13(Mon) 00時半頃
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[執り成す、話題を繋ぐ、間も――― 腕のなかの子犬が唸る。]
なに、……… 如何したの。 おまえ。
[舞台上の緊張に続き この場の、歪み、緊張に興奮した子犬の震えが治まらない。 ぐる、ぐる、腕のなかで、咽喉を鳴らす。 ――――…仕方ない、と、離れようところで、 フィリップ>>147の何気ない一言が、耳を突いた]
…………… 次の、団長。
[繰り返す。虚を突かれた、声で。 ―――… もう、団長が居ないのだから。 理由は理解るのに、理解出来ない、目をしてしまった。]
(150) 2014/10/13(Mon) 00時半頃
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み…されないように…
…
…しいのは…のせいでもない…
じゃあ…のせいでも…ないよ…
おれは…に…しくされてない…
…
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[複雑な色を見せた目を、先に伏せる。 次に噤んだのは口だ。 亀裂を広げないように、次のことばを、口にしないように。
―――… 細く、長く、息を吐く。
何時も通りに映る団員、何時も通りに映らない団員。 その遣り取りを振り切る為に、足を動かして、離れた。]
…… 落ち着かせて来る。
[辛うじて、その一言だけ、落として。
演目は終わらない。 幕間の小休憩まで、まだ、メルヘンの夜は続く。 足取り過ぎれば、ステージの熱気は遠ざかった。同時に、指先から冷えていく感覚も、確かに、感じていた**]
(153) 2014/10/13(Mon) 01時頃
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[何人かの団員と入れ違え―――…
次期団長に名前を挙げられた ザック>>160の横を、通り過ぎる。 なにか声を掛けようとして、真逆に、口を閉じた。
頑張れ? それとも、 期待している?
腹のなかと、あまりに裏腹だ。 あまりに、空々しい。 舞台袖から離れる足取り。 皆を窘めている声>>164は、届かなかった。]
(188) 2014/10/13(Mon) 16時半頃
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――― 関係者用通路 ―――
[舞台は続いている。 メルヘンの夜は、続いている。
しかし、此処を通るのは 舞台袖を上手から下手に、あるいは逆に、移動する団員だけ。 指先が、冷たい、冷たい、冷たい。]
『団長は、 』
[蛇の口で、口にする。
冷たい指先が、ポケットの膨らみを探った。 ―――…夜が、夜の内に、明けないように。]
(194) 2014/10/13(Mon) 16時半頃
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[狼なんて、こわくない。]
[我らがマリオネットが歌った歌を、思い出す。
そうだ、これ以上、狼に壊されては、いけない。 歌い踊り喋る狼が紛れているのなら、これ以上、壊される前に。]
……………
[舞台袖は駄目だ。 観客席に近すぎる、悟られてはならない、夜を、護らなければ。
追い詰められる心地を覚えるのは 朝方から、徐々に歪み始めた、亀裂を感じてからだ。 護らなければ――――護る為に、殺さなければ。 心のなかで、蛇が鎌首を擡げる。男自身が、その歪みに飲み込まれていることに、気付かない。]
(197) 2014/10/13(Mon) 17時頃
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……… 時間だ。
[もう直ぐ、アントニーの演目が始まる。
腕の中でいまだ、低く唸りをあげる子犬を、抱え直して 男の足取りが関係者用通路を抜けていった**]
(198) 2014/10/13(Mon) 17時頃
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[関係者用通路の空気は、やけに冷たい。 舞台の熱気から離れている所為なのだろう。指も、冷たい。 唸る子犬を抱き寄せた腕に、指先に、物陰に、銃を隠して。
―――…上手から下手に、静かに足を運ぶ。]
………、うん。
[舞台袖には、何人か、変わらず団員の姿が在る。 既に言い争いもいくらか落ち着いているようで 知らず詰めていた呼吸を、息を、力を、抜かせた。]
(216) 2014/10/13(Mon) 22時頃
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――― 舞台袖・通路近く ―――
[舞台と同じように サーカスの演目にも、幕間>>199が存在する。 強弱と間をコンスタントに挟み、客を飽きさせない為だ。
今回はペギーのソロ・プログラムのお目見えも在った筈だ。
思い出したように視線を巡らせて 袖で見習いと共にアイ・コンタクトをしている姿が映る。 目許が弛む、も、思考は、来る夜の夜に、陰を覚えた。]
舞台袖の照明も落ちるのだっけ、ね……
[ならば、お守りを手放すわけにはいかない。 慎重な足取りが、舞台袖、仲睦まじい女性団員同士の会話などに、耳を傾けながらも、ステージを見に、寄る。]
(225) 2014/10/13(Mon) 22時半頃
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[強すぎる熱い照明の下で。
時に鳥のように、時に猿のように
音楽に合わせて駆けて飛び回る、獣のような子供の姿。 実年齢を知らないわけではなかったが 普段のアントニーの言動がそう感じさせる、演目。]
…………
[―――… 何時の間に。
一・二分が限度でも 指笛ひとつで小さな獣と共演を果たす、姿に。 彼もまた、本番で演目を変えてきた一人なのだと理解した。]
……… 羽根だ。
[耳に届くのは鈴の音で、目に見えたと錯覚したのは、羽根。 無意識の内に探している狼の片鱗では、ない。]
(232) 2014/10/13(Mon) 22時半頃
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[余興でも、本演目でも ステージに立つ獣には、出来るだけ 調教師抜きで本番を遂げられるような、仕込みをしてある。
勿論、例えば犬と猿と虎であれば仕込みの内容も異なり 覚えの速度も異なるのだ。 ―――…重要なのは、物語に、自分が存在しないこと。]
……… 良かった。
[袖に戻る、アントニーの姿に。
短く、告げたいのはそれだけ、本心で。 視線は―――… 幕間に動き出す舞台を前に 舞台袖を抜けた、一人の団員>>230の背を、追い掛けていた。]
(236) 2014/10/13(Mon) 23時頃
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[メルヘンの夜に、夜の蚊帳が落ちる、時間が来る。
子犬と共に抱いた、銃の、引鉄が、短く揃えた爪に触れる。 ちき、 ――― メルヘンに、不釣り合いな音。 完全に幕間を迎える前に、男の足取りが再び、舞台袖を離れた。
空を待った、鳥の片割れの背の、後を追う。
抜けた筈の、冷たい通路をもう一度、踏みしめて。]
(242) 2014/10/13(Mon) 23時頃
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――― 倉庫 ―――
[小鳥の演目でピークに達して 幕間に、気を落ち着かせる、観客席の波から遠ざかる。 扉を開けて見えたのは、背中。]
『フィリップ。』
[ばさりと、聞こえた羽根の音は 籠のなかで暴れるムスタング>>230のもので。 背に追い付くまでのタイムラグ。 しゅるりと、思い出したように、蛇が口を開けた。]
………… 置いて行くの。
[幕間から、一人、離れた姿に。 物語に生きる鳥にかけたのは、他愛がない。 抱いた子犬の陰にしたものを――― 除けば。]
(250) 2014/10/13(Mon) 23時半頃
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[裏方は、華形を護るのが仕事だよ。]
[そう、己に告げた一代目は、犬に噛まれて調教師生命を絶たれた。
"華形を護る為"
お守りと称されて手渡されたものが、手の内に在る。 団員は、華形は、裏方は、――…団長を。護らなければ。 受け継がれた想いは意図もたやすく、今朝、崩れ去った。]
…………
[目の前にする、サーカス団の鳥は 常に物語に生きる、練習熱心な華形。護るべき存在。 本当に、鳥ならば――― 綻びが、歪みが、蛇が、心に囁く。]
(258) 2014/10/13(Mon) 23時半頃
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[明かりの点いた廊下に反して、倉庫は暗かった。
幕間と同じ。 目の前の影が"フィリップ"だと思ったのは、羽ばたきの音から。]
『おまえは、フィリップではないのか。』
[倉庫奥の影>>255の、肩が震えた。
フィリップだと思っただけで―――…正体は別のなにかなのか。 彼が作り出した、会話の間に、思考が曇る。]
……… 羽音が聞こえたからさ。
[男の声も、自然、低くなって。]
……… フィリップでは、ないの。
[再度、尋ねる。]
(260) 2014/10/13(Mon) 23時半頃
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[目の前の影が、首を傾げている。
差し込む僅かな光を頼りに、その輪郭を追った。 同時に、指先が伸びた。 ――― その明かりに狙いを定めたのは、小さな、猟銃。]
君は、誰。
[重ねた疑問は、物語の続きのようだった。
現実味を帯びない。僕が追い掛けて来た、彼は、誰。 いらえを待つ間。呼吸すらも、忘れて。]
(266) 2014/10/13(Mon) 23時半頃
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[呼び掛けた名前に対する反応と、異なって ――― 誰、と、問いかけに返る声は早かった。
覚えのある声だ。 フィリップ>>267の声である、筈だ。]
青い鳥。
[調教師の口は、鸚鵡の口に。 繰り返す。]
……… 青い鳥の名前は、フィリップ?
[名前を告げない、倉庫の影に、重ねた。 定めた狙いを、避ける決定打を、貰えないので。]
(271) 2014/10/14(Tue) 00時頃
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そう、…… 悲しいことがあったから、かな。
[籠の中の鳥。
夜目の利く蛇は、その存在に気付いているのか 暗がりでも光りかねない黄色い目を、ぎょろ、と丸めていた。]
フィリップだと、言ってよ。
[男の声は、いっそ、乞う声でもあった。
引鉄に掛けた冷たい指先が、震える。 ――――… 貰えない。"フィリップ">>274は、貰えない。]
(279) 2014/10/14(Tue) 00時頃
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何で。
(280) 2014/10/14(Tue) 00時頃
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[メルヘンの夜の蚊帳が落ちる。
落としたのは、僕の目蓋で、指先で。 空中に舞うあの鳥が、居ないと言う、目の前の影に。]
フィリップを返して、くれないか。
………… フライヤー。
[最後に口にした、声は、]
(285) 2014/10/14(Tue) 00時頃
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