78 わかば荘の薔薇色の日常
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─ 201号室 ─
[床に片手をついて身を乗り出し、 南方との距離を詰める。
見えない顔を見ようと、目を凝らす。]
南方。 もう一度聞かせて。
[今は、ハッキリと、言って欲しい。]
それ 面白かった?
(4) hana 2014/07/03(Thu) 00時半頃
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それとお…が…けるかどうかは…の…なんじゃない…
…は…の…から…れ…に…がった…
…りた…や…を…ったまま…だるさと…の…に…けかける…
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[ほとんど深夜に近い時刻。 雨音は次第に弱まって来ている。
そのせいか、あるいは、 南方が紡ぐ声という音に集中しているからか 音という音は部屋から消え、 南方の小さな吐息まではっきりと聞き取れた。
それは安堵のように聞こえた。
火傷しそうに熱い手が頭に触れ、 その熱量が、南方の言葉の温度をも上げる。
他人を泣かせるくらい圧倒的であれ──。
今以上の、もっと上の覚悟を問われるような言葉だった。 それでも遊は、触れられた手に伝わるよう しっかりと頷いた。]
(15) hana 2014/07/03(Thu) 01時半頃
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[床に横になった南方の目が、苦く笑う。
ああ──]
──いいよ、正直に。
[南方の感想は、想像した通りだった。
『あんまり。』
その突き放すような言葉を受けて 遊は、ここ数日で一番スッキリとした笑みを見せた。]
(16) hana 2014/07/03(Thu) 01時半頃
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…──ありがと。
[ぽつ、と 遊の口から言葉が零れた。
辛くて眠そうな南方の額を冷えた手指で一度撫で 南方の身体を跨ぐようにして、マウスに手を伸ばした。]
(17) hana 2014/07/03(Thu) 01時半頃
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は…にするから…わなかったが…
…き…そう…になったものの…も…けなかったのだ…
…あんまり…で…ちのめされたのは…
…も…いだ…
…も…も…
…も…
その…に…で…った…があまりに…しくて…
…づいたらぼろ…きしていたのが…
…にはぐらかした…の…だ…
ちなみにその…は…という…で…ったのだが…わかば…の…は…して…るまい…
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[半年以上デスクトップに居座り続けた未完の物語は 軽いクリック音一つで簡単にデータの海に消え去った。
※復元出来るとか言ってはいけません。
北海道で酪農家を営む青年の人生を知るのは 書いた遊本人と、唯一の読者、南方夏一だけとなり、 同時に、あれほど長い間 遊に圧迫感を与え続けていた四角い液晶画面からも もう何の圧力も感じなくなっていた。]
(25) hana 2014/07/03(Thu) 03時半頃
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[>>23耳に届いた笑み混じりの呆れ声に、 唇の端を笑みの形に引いて振り返る。
視線を下へ向ければ、 病気の辛さより眠さが勝ったような穏やかな顔で 南方は目を閉じていた。
寝ている間は眉間に皺は寄らないんだ──
と、皺の痕だけの残る眉頭を見つめていたが 期限を切るよう言われて、浮かべた薄い笑みを深くした。]
(26) hana 2014/07/03(Thu) 03時半頃
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[早朝──降り続いた雨が上がり、空に虹が掛かる頃。
寝息を立てる南方の横に 力尽きて眠る遊の寝顔が並んでいる。
白い光を漏らす四角いデスクトップに 新たに立ち上げられた真っ白いキャンバスには、 キーボードで綴られる全く別の物語が生まれ始めていた。**]
(27) hana 2014/07/03(Thu) 03時半頃
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ジャニスは、ミナカタイッテラッシャーイw
hana 2014/07/03(Thu) 13時半頃
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─ 朝……昼? 201号室 ─
[梅雨明けの空に架かる虹を見損ねたと知って 遊は後に残念がることになるのだろうか。
夏布団の柔らかさとに頬を埋めるように力尽きていた遊は、 頬を撫でる風に雨の匂いがしなくなったのに気付いて、 昼近く、少なくとも、朝と呼ばれるには遅い時間になって 閉じていた瞼をふっと開いた。
幾度か瞬きを繰り返した後、 背中に感じるぬくさと気配に振り返って隣を見る。
南方は、昨日眠った時と同じ、 眉間に変な力の入っていないリラックスした顔で まだそこに眠っていた。]
(31) hana 2014/07/03(Thu) 14時半頃
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[遊は眠そうな顔でさらに数度の瞬きをしてから、 南方の顔を覗き込むように背中を丸めて、 南方の方へ屈みこむ。
南方の寝息は規則正しい。 ひとまず風邪は小康状態にあるのかもしれない。
顎と首の間の隙間に手を差し込んで体温を確かめる。
まだ少し高いような気もするが、 昨日ほどは熱くない体温に、遊の呼吸も僅かに緩む。]
(32) hana 2014/07/03(Thu) 14時半頃
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[起こさないように起き上がり、 開きっぱなしだったパソコンを 念のためテキストを保存してからそっと閉じる。
南方を踏まないようにその身体を跨ぐと 無垢材の床の上で、うんと大きく伸びをした。
それから、洗面所で顔を洗い、 濡らした手櫛で髪を整え 歯を磨いてから台所で湯を沸かす。
白い琺瑯ポットが湯気を立てて、しゅんしゅんと鳴いた。]
(33) hana 2014/07/03(Thu) 14時半頃
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は…に…を…ない…
または…に…えていない…
…の…を…ていた…
…の…だった…
なに…つとして…しさを…じない…の…りと…
…で…く…れた…い…
よく…れば…れのこびりついている…の…
…く…られた…の…っぽい…
ごく…の…だ…に…しいためか…は…だった…
…しい…を…して…の…を…いている…
…に…ったのは…しく…ではなく…の…らぬ…だ…
その…が…の…なのか…は…く…を…べない…
…になってかなりじっくり…しようとするのだが…てんでだめだ…
どうがんばっても…からない…
それは…では…り…ない…
その…きで…であることがわかり…が…めた…
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[コンロの火を止めた瞬間、 ゴツ、という鈍い音があがって 顔だけ振り返っている遊の背中に声が掛かる。>>38]
うん
[言いながら顔をまたキッチンに戻し コロンとしたアカシアのマグカップに ティーバッグと湯を入れて、それを手に部屋に戻る。
デスクの端にそれを置いて クッションに胡座をかいて再び南方を覗き込む。]
おはよう
[──仕事は?
いつもの調子で声を降らせ、 起こさなかった癖に寝坊を笑う遊の目は、 細く南方の表情を観察していた。]
(39) hana 2014/07/03(Thu) 15時半頃
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──、
なんだ。
[一回起きた、と聞いて 残念がる気配が声にも表情にも滲む。]
もう、起きて平気?
[起き上がった南方に一つしかないクッションを譲り デスクに置いたカップを取って南方の前に差し出した。]
(41) hana 2014/07/03(Thu) 16時頃
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[床にぺたんと直に胡座をかき 窓を背負って鼻で笑う南方を見ている。
間中サンと呼ばれても反応はしなかったが 言い直されると口角は笑むように横に伸びた。
南方が飲んでいるのは ミネラルウォーターを沸かした湯に 実家から届いたそれなりにのティーバッグを浮かべた紅茶で 味も香りも悪くないのだが、どうも鈍そうだ。
調子がいいと語る鼻声に こく、と頷いて]
──南方
[改めて名前を呼ぶ遊の目が、凝っと南方の手に注がれた。]
(45) hana 2014/07/03(Thu) 16時頃
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[機嫌の悪さも怒っている感じも 一切感じていない風に表情を変えず]
人を 描くのが好きなの?
南方は。
[昨日見た、裸像を思い出しながら問う。]
(47) hana 2014/07/03(Thu) 16時半頃
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[質問の途中にも関わらず 突然すっと席を立ち、冷蔵庫の方へ。
扉が開く音がして 閉まる音がして 戻って来た遊の手には ブラックタピオカレモンティーの容器が握られている。
南方の前に座り直すと 目の前でストローの殻を破って、太いそれを突き刺した。]
(48) hana 2014/07/03(Thu) 16時半頃
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[ストローに口をつけて レモンティーとつぶつぶを一緒に吸い上げ もぎゅもぎゅと咀嚼してから喉に送る。
虹の名残などどこにもない空を 振り返って一度見上げ、南方に視線を戻した。]
部屋の、あの絵 あれ以外には描かないの。
[語尾を上げない、呟きに近い問が続く。]
(51) hana 2014/07/03(Thu) 16時半頃
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[また一口、タピオカレモンティーを飲み]
じゃあ
[ストローから口を離して 真正面から、南方の目を見た。]
描こう。
[──新しいの。]
(53) hana 2014/07/03(Thu) 17時頃
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見たい。
[描いてるところが。 完成したものが。
理由とか 背景とか
そういったことを一切省いて 感じた欲求だけをストレートに口にする。]
(54) hana 2014/07/03(Thu) 17時頃
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…
…わかるのだ…で…
…に…られた…が…て…い…じゃない…くらい…
…きなんて…き…は…どうしたって
…しいほどに…められることに…いものだ…
…しているといってもいい…
…ずるい…
…その…い…は…い…そう…うのに…
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[目の前にある南方の顔を 表情の変化を つぶさに見詰める遊の目がある。
最初に驚きがあって 見開いた目が自分を見ているのがわかった。
難しい顔の理由は──。
探る刹那に、鼻白むような息遣い。
いや。 ──これは嘲りか。]
(60) hana 2014/07/03(Thu) 18時頃
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[間中サンと呼ぶ声は さっきのようにはもう言い直さない。
明確に引き直された線は 色を持たないのに視認出来そうなほどの存在感を得る。
遊はそれに返事をしない。 まだ口を開かない。
南方の沈黙を、逸らさぬ眸に捉えたまま。
口を噤んだ南方と 声を発さぬ遊の作る静寂を 液体をストローで啜る濁音が乱した。]
(61) hana 2014/07/03(Thu) 18時頃
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[晴れた空から落ちる見えない雫のように ぽつっと零された一言に 遊はまだ、何も答えない。
それは遊が求める答えではない。]
──?
[お前──と、 突き放すように言う南方に 沈黙を守っていた遊のきょとんとした顔が 当たり前のように頷いた。]
(62) hana 2014/07/03(Thu) 18時頃
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り…への…
…そういうふうに…こえて…また…に…れればいい…
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[二人の間に見えない天秤がある。
南方の皿と、遊の皿と 重さの違う沈黙が積み重なって 天秤は傾いてゆく。
限界を超え 音を立てて崩れそうな均衡を 涼しい顔で遊は支えている。]
(65) hana 2014/07/03(Thu) 18時半頃
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[やっと返って来た返答は 声を発するのさえ面倒がるような声音。
いい、とも 悪い、とも
どちらとも違う南方の返答に 遊は眼差しをゆるりと細め ゆっくりと、笑うように言った。]
(66) hana 2014/07/03(Thu) 18時半頃
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ゆるりと…の…が…くなる…
…だと…がいったとおり…は…だめだ…と…り…えてはくれなかった…
これだから…
…に…れている…き…は…だめだ…
…と…えない…き…は…よくない…
…くさがっているのを…し…しょうがないな…とならない…
…りや…の…を…じて…じゃあいいよ…とならない…
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[見たい──。
その言葉に、南方はどんな意味を見出すか。 それを南方が言葉にする前に、遊はもう一度口を開く。]
練習じゃない南方の絵が見てみたい。
(67) hana 2014/07/03(Thu) 18時半頃
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[面倒臭そうな南方の声と 気負いのない柔らかい遊の声が被って──]
うん
[好きにすれば──という言葉に、嬉しそうに目を細めた。]
(70) hana 2014/07/03(Thu) 19時頃
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…きっと…
…は…が…えた…り…が…くのに…な…の…に…うのだろう…
は…を…いしていたな…
…りの…しい…し…に…い…かと…っていた…
でも…うな…
…
お…は…くて…しいな…
…
|
[じゃあ約束。 そう続けようとしていた遊は、 突きつけられた条件に、一つ、二つ、瞬きをして。
ふわりと視線を揺らし 口許を小枝のような指で覆った。
それからまた一度、目を瞬かせ ん──と呟いて、細い肩を竦めた。]
(73) hana 2014/07/03(Thu) 19時頃
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わかった。
じゃあその時は 南方が描きたいものを、描いてるとこ 最初から、完成まで、ちゃんと見せて。
[──好きにしろって言ったよね。
故意か 偶然か。
言質を取った遊は、したり顔で緩く笑う。]
(74) hana 2014/07/03(Thu) 19時頃
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モデルが必要なら俺がやる。 バイト料もいらない。
時間は掛かってもいい。 俺は、来年もここにいるから。
──あの絵。
あの、裸の人の絵。 変わった絵じゃないけど、色が好きだった。 どんな風にあの色を出すのか、知りたい。
(75) hana 2014/07/03(Thu) 19時頃
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──約束ね。
(76) hana 2014/07/03(Thu) 19時頃
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お…の…は…く…えんが…きだ…
…
これからの…に…い…
これを…えるか…
…
…もこんな…やかで…で…の…を…う…な…を
…ってみたいもんだ…
…
その…の…みは…しく…ただ…に…えた…
…だとか…だとか…
いつもの…が…でなかったので…
|
[いい──と答えた。 南方はきっと嘘をつかない。]
楽しみ。
動かないのは、得意。
[本を読んでいる間 集中すると、何時間でも動かずにいられる。
ポーズを取れとか言われたら── まぁ、退屈で死にそうになるかもしれないが
──それも、目的のためなら善処する。]
(86) hana 2014/07/03(Thu) 20時半頃
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[10年早いと言うその技巧で 色を混ぜ、重ねて、幾重にも塗り重ねられたその色で どんな世界を描くのか。
──南方の目に、 この場所は、自分は、どう映っているのか。
それが見れるなら、少しくらいの退屈は我慢出来る。]
(87) hana 2014/07/03(Thu) 20時半頃
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[億劫そうでも 面倒そうでもなく
あっさりと、簡単に 南方が頷いたので]
じゃ、書く。
[早速、昨日の続きに手をつけようと パソコンに向かったところで、 やる気満々の空気をぶち壊すように、 腹の虫が一斉に抗議を始めた。]
(88) hana 2014/07/03(Thu) 20時半頃
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…──南方、お腹すかない?
[薄い液晶の縁に伸びた冷たい指が、 パタン──と、パソコンの画面を閉じた。**]
(89) hana 2014/07/03(Thu) 20時半頃
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かっ…くはない…けど…
…がってもらえたら…うれしい…よ
…
…
…あっちって…どっちや
…
は…いよ…い…
…
…どっちがいい…
…としては…がほしいけれど…
…が…てって…うなら…
…
あ…あんま…わんといて
…ずかしくなるか…ら
…
…あかん…もう…ちくたびれたわ
…はよ…さんが…のもんになったって…えて
…そんで…を…さんのもんにして
…
ずかしがってるのが…いからなあ…
…
…ああ…は…のだ…
…
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─ 昼近い朝と言い張る 201号室 ─
[腹の虫の斉唱を聞いた南方が 何か食べろと言っているが 冷蔵庫にはミネラルウォーターと──]
あ
[くるぅり]
……
[突然声を上げて振り返り 床の上に放置されて一晩経過したビニール袋から 気持ちくたっとしたエクレアを取り出した。]
(128) hana 2014/07/04(Fri) 05時頃
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……
[これを渡したら草芽に蹴られそう。 そんな予感がして。]
……食べる?
[クリームでろでろのエクレアを見せて 小さく鳴いた南方の腹の虫にお伺いを立てた。]
(129) hana 2014/07/04(Fri) 05時頃
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遊。
夏だけど、まだ涼しいし──
[駄目かな。
間中サンと呼ぶのに一言訂正を入れ エクレアを袋にしまう。
お断りされたので予定通り草芽に渡すとする。]
(131) hana 2014/07/04(Fri) 05時半頃
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[エクレアが返って来た袋の中には もう一つ何か入っていて 手を突っ込んでそれを取り出すと、 切り口から袋の端をピーッと引き切り 中の飴を一粒口に入れた。
のど飴だ。 残り袋ごと、はじめから渡す予定だった南方に手渡す。]
談話室、行こう 檀さんか平井さんいるかも。
[食事にありつけるかも──と 南方を促して廊下に出る。 廊下に出たところで]
あ
[着替えずに寝たせいか若干よれている服の裾をつんと引いて]
(132) hana 2014/07/04(Fri) 05時半頃
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[南方が足を止めればその襟元に無造作に顔を寄せ、 首筋でひく──と鼻を蠢かせる。]
──汗臭い。
[先にシャワー浴びて来たら。 あと髭も。
そう言って、つるりとした自分の顎を撫でた。*]
(133) hana 2014/07/04(Fri) 05時半頃
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ジャニスは、白衣もなんとなく皺寄ってそうだし
hana 2014/07/04(Fri) 07時半頃
ジャニスは、來夏をなでなでした。
hana 2014/07/04(Fri) 08時半頃
ジャニスは、來夏をおぶって屋上まで上がり、南方のきのこの隣に並べた。
hana 2014/07/04(Fri) 08時半頃
ジャニスは、だめだこの病人二人……
hana 2014/07/04(Fri) 09時頃
ジャニスは、パチ好き女性ってのも萌える。
hana 2014/07/04(Fri) 09時半頃
ジャニスは、ドナルドを屋上に並べた。
hana 2014/07/04(Fri) 10時頃
ジャニスは、草芽wwwwwwwwwwwwwwwwwwど、どんまい……
hana 2014/07/04(Fri) 13時頃
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─ 昼頃 201号室前 ─
[臭い──とは言ったが 別に鼻をつく悪臭というわけでもない。
人のいる所へ降りてゆくのに 汗かきっ放しは本人が気まずいかと思って教えただけである。
が、強引に引き剥がされた。>>136
追加の一撃が額に飛んで来て 遊は小さく
だ
と鳴いた。]
(150) hana 2014/07/04(Fri) 14時頃
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[貰った一撃が意外に容赦なしだったので 階段を下りきるまで遊は額を擦りながら 前を歩く南方の背中に抗議の視線を送っていた。
104号室の前で南方の足は止まり 遊はそのまま談話室を目指して歩き続ける。
扉の閉まる音と 軽い施錠音を背後に聞いた。>>137]
(151) hana 2014/07/04(Fri) 14時頃
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─ 昼 談話室 ─
[談話室に現れた遊は前日と全く同じ服装だった。 白いハーフパンツに至っては今日で三日目になる。 そろそろ洗え。
コンビニ袋と本屋の袋を手に持った遊は 談話室に人がいれば]
おはよう
[と指向性のない挨拶を口にして 料理が出来る誰かを探して視線を室内に巡らせた。]
(152) hana 2014/07/04(Fri) 14時頃
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…ん…あ…あっ…ぁ…やっ…それ…
…
…あっあっ…さ…き…き…
…
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─ 談話室 ─
[入ってまず感じたのが室内を満たす冷気。]
さむ……
[思わず呟いて原因を探す。]
草芽……
[ソファの上に、それはいた。
とたとた近付いて行って 分厚い前髪の上からデコピンを見舞う。]
(158) hana 2014/07/04(Fri) 14時半頃
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─ 103号室前 ─
[南方が扉の向こうに消えて 遊の裸足の足が103号室の扉の前に差し掛かった時 丁度扉が開いて、中から誰か出て来た。]
宇佐美──
──…
[顔を見て名前を呼び、格好を見て口を閉じた。 服装は──何とも思わなかった。 遊の服装も、狩生堂のバイト時と変わりない。
何もなければ藤堂の部屋で飲み明かしたのかな としか思わなかっただろう。]
(160) hana 2014/07/04(Fri) 15時頃
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[遊の目が、宇佐美の手に抱えられたものをじっと見ている。
出会った瞬間の強張った表情と上ずった声。 丸めたシーツと、誰かのシャツ。
シャツはサイズ感から、宇佐美のものとは違う気がする。]
──、
[また宇佐美の顔を見て、 空白の後、ようはくおはよう──と答えた。]
(161) hana 2014/07/04(Fri) 15時頃
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|
[痛い──と呻く黒い塊から一度視線を外し リモコンを探した。
リモコンは黒い塊の手にあった。>>162]
──…
[一旦ビニール袋から手を離し リモコンを胸に抱きかかえ 死守する体の草芽の脇腹を擽ってみる。
それで離さなければ鼻から小さな吐息を漏らし]
…──脱げば
[と、呆れたように しかし突き放すでもなく、どこか面白そうに言った。]
(163) hana 2014/07/04(Fri) 15時半頃
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…さんから…したと…
…でもまだしばらくは…らんよ…もあるし
…こっちの…も…しいし…
…
…
…えっ…な…なんで…さんの…って…
…
|
─ 103号室前 ─
[宇佐美の心配は──杞憂だった。
他人の部屋から昼に出て来るのも 部屋主の洗濯物を持って出て来るのも それぞれに理由は考えられたからだ。
宇佐美はよく日向の風呂を手伝うし わかば荘のお母さん的存在であったので 洗濯も、ごく普通にしてあげそうに思えた。
だから何も尋くことがなかった。 ただ──]
────…。
[103号室の部屋の前を通り過ぎ 宇佐美が階段を登り始めると ふ、と振り返って、 急ぎ足で、首を捻る後姿に、凝っと視線を投げかけていた。*]
(171) hana 2014/07/04(Fri) 19時頃
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─ 談話室 ─
一枚くらい脱いでみれば
[脱衣を拒む草芽に、遊は珍しく言い募る。 あまりにぐったりしているので首を傾げ]
──何、したの
[と、尋ね、草芽の頭の横辺りに腰を降ろす。]
エクレア買って来たけど 食べる?
[指先で、前髪の一房だけを掬い 隙間から見えた片目を覗きこんで、聞いた。]
(175) hana 2014/07/04(Fri) 19時半頃
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|
[藤堂と來夏が談話室を訪れると 草芽を弄っていた手は止まり、 軽い手付きでぽんぽんと前髪の上辺りで掌を弾ませ 草芽の頭の横にエクレアの入ったビニール袋を置いた。
遊の体重を受けて沈んでいたソファが元に戻る。]
おはよ
[写真集の入った袋だけを手に 遊はテーブルへと移動した。
冷房を弱くするのは 病み上がりの南方が姿を現すまでの期限つきで保留とした。]
(178) hana 2014/07/04(Fri) 19時半頃
|
|
[テーブルの椅子の一つに腰掛けた遊は 挙動不審なところなど一つもない、 いつも通りの、涼しい顔をした藤堂の挨拶を聞いて
緩く曲げた指の関節を唇に触れさせ 凝──っと、藤堂の顔に視線を投げ掛けた。]
(180) hana 2014/07/04(Fri) 20時頃
|
|
[藤堂が冷蔵庫へ向かうと 遊も無言で席を立ち、冷蔵庫を開ける藤堂の真後ろに立った。
藤堂が振り返った瞬間上体を前傾させ 藤堂の耳の付け根とこめかみの間辺りに顔を寄せた。]
────
[目を細め、香りを嗅ぎとるように息を吸う。]
(186) hana 2014/07/04(Fri) 20時頃
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|
[すっと伸びた冷たい指先が 訝る藤堂の首筋に伸び、 止められなければ軽く顎を上げさせるように触れる。
丁度それは、廊下で宇佐美の首筋に見つけた 鮮やかな鬱血のあった場所と同じところ。]
(188) hana 2014/07/04(Fri) 20時頃
|
|
[今日はよく額を叩かれる日だ。
藤堂の掌が額でぺちりと音を立てると 驚いて目をぱちぱちさせ、 近付いた時と同じく音も立てずにすっと顔を離した。
見えたのか? の問いには]
──
[問うような視線を藤堂に向けたまま、 こくりと頷く。
また、遊の視線は一度藤堂を離れ 己の頭上を漂った後、再度藤堂の顔に着地した。]
──セックスした?
[別段普段と変わらぬ調子の、抑揚のない遊の声が、 冷蔵庫周囲にぽつりと落ちた。]
(190) hana 2014/07/04(Fri) 20時半頃
|
|
[藤堂の臆さぬ返答に、 遊は感心したように細い目を縦に見開いた。
ほう──と、微かに吐息が漏れて]
どうだった?
[次に、好奇心を湛えた遊の声が、嬉しそうに藤堂に尋いた。]
(192) hana 2014/07/04(Fri) 20時半頃
|
|
[藤堂の性癖を、遊は今まで知らなかった。
小説で、男同士の性行為を読んだことは何度かあるが 直接、こんな身近に、体験者がいるとは思っていなかった。
藤堂なら──尋れば詳細な話が聞けそうだ、と 遊の瞳は期待に染まっている。]
(193) hana 2014/07/04(Fri) 21時頃
|
|
[藤堂の声のトーンが跳ね上がった。>>194 珍しい事態に、遊の瞳に浮かぶ喜色は色を増す。]
それは もちろん藤堂さん。
──だめ?
[腕組みで睨まれても簡単には諦めない。
体験しろとの言のはもっともで 確かに、知識を得る一番の近道は 己で体験してみることである──とは思う。 思うし、日頃から実践してみてもいるのだが。]
──相手がいない
[そういった男友達はいないと打ち明けて 藤堂が教えてくれないか、少し期待するように見上げた。]
(197) hana 2014/07/04(Fri) 21時頃
|
…ごめん…さんごめん…が…やったばっかりにやな…いさせて…
…
|
そう。 まあ、恋人だしね。
[──しょうがない。
深いため息を聞けばあっさり頷いて 付き合ってくれそうな“相手”を二〜三思い浮かべてみる。
どっかのバーに放置されても それはそれで面白そうだと思うのだが、 藤堂の心の声までは聞こえなかった。]
…────── いない かな。
[冷蔵庫に凭れ、付き合ってくれる姿勢の藤堂に首を傾げる。]
(201) hana 2014/07/04(Fri) 21時半頃
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[大学時代の物書き仲間は 今、一人は北海道にいて 一人は沖縄にいて もう一人は妻帯者になっている。
妻帯者に頼むのは、ちょっと、遊でも憚られた。]
(202) hana 2014/07/04(Fri) 21時半頃
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そういうの──?
[ゲイバーのような場所だろうか。 藤堂の言葉を舌で辿り、想像する。
連れて行って貰えるのは歓迎するが]
──
[──釘を刺された。
と、思った。 この後宇佐美に聞いてみることは当然考えていたからだ。]
……うん
[渋々、と言った風に 藤堂から目をそらし、つまらなそうに頷いた。]
(209) hana 2014/07/04(Fri) 22時半頃
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[梅雨が開けたばかりだというのに 日差しはもう真夏の勢いを感じさせる暑さで 帽子を被らず歩いている遊に降り注ぐ。
メッセンジャーバッグに財布を入れ 裸足にスニーカーの遊は 額に滲んだ汗を手首で軽く拭って、 目的の店の前で立ち止まり、 チャルラタン──と書かれた看板を見上げた。]
─→ チャルラタン ─
(215) hana 2014/07/04(Fri) 23時頃
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─ 談話室 ─
[話が終われば、そっけなく冷蔵庫の前を離れ テーブルに置いてある写真集の袋を手に 來夏と草芽のいるソファの方へ向かってゆく。
袋を提げていない方の手で 剥き出しの二の腕を軽く擦った。]
(216) hana 2014/07/04(Fri) 23時頃
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少し。
[尋ねる來夏に、うん──と頷く。
來夏の視線を手元に感じると 袋ごと、中身を來夏の目の前に差し出した。]
あげる。 來夏、今日で21だよね。
プレゼント。
(220) hana 2014/07/04(Fri) 23時半頃
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─ チャルラタン ─
[自動扉に手を近付けると 何を感知してか、チャルラタンの扉が開いた。
中から冷やされた空気が流れ出して来て 腕や足を、ひやりと心地好い温度が撫でてゆく。
檀が店番に立つことはそう多くないと聞いていたので 今日も奥で働いていると思っていたら 浅黒い肌のいかつい顔が 堂々たる風格でカウンターの奥に立っていた。]
……来ちゃった
[仕事先に押し掛ける恋女房のようなことを言って 唇をゆるりと引いた感情の読めない笑みを作る。]
(232) hana 2014/07/04(Fri) 23時半頃
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─ 談話室 ─
[>>228案外と素直な草芽の行動に 來夏を見ていた遊の目が一度草芽に向く。]
ありがと
[來夏の頭を抱きかかえてもふる姿に目を細め 声に微かな笑みを滲ませて言う。
草芽が掴んだのはパーカーの裾だろうか。 引っ張られる感覚に姿勢を低くし また、ソファの端に浅く腰掛けた。]
…──うん 藤堂さんが連れてってくれるって
…──うん 好きな人がいたら、その方がいいかな。
(234) hana 2014/07/04(Fri) 23時半頃
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─ チャルラタン ─
声の聞こえる蜃気楼は 多分、蜃気楼じゃなくて幻覚だよ。
[涼しげに眼差しを細くしながら ケーキの並ぶショーケースへと近付いて来て、遊は言う。
何ら気を悪くした様子はなく むしろ、檀の発想を面白がるように口角を上げた。]
ケーキを買いに。 そうだな──ウェディングケーキ、とか。
[注文を、と問う檀に、 藤堂と宇佐美のことを思い出しながらジョークを口にする。]
(236) hana 2014/07/05(Sat) 00時頃
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|
いいよ、勿論。
新品じゃなくて悪いけど── 多分、來夏の好きなやつ。
[草芽に服を引かれるより先、 >>237贈り物を、腕に抱きかかえる様を見て ゆる──と、目を細めた。]
(239) hana 2014/07/05(Sat) 00時頃
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…
…そういうこと…ここで…くな…
…きしめたくて…なくなるから…な…
…
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はは
俺の、 だったら面白いけど──
[小馬鹿にしていると誤解されかねない 乾いた笑いを鼻から漏らし]
…──違う。
ウェディングは冗談。 今日、來夏の誕生日だから。
[>>240動揺する檀に来店の目的を告げる。]
(242) hana 2014/07/05(Sat) 00時頃
|
|
[來夏の身も蓋もない思考に來夏らしさを感じる。 遊は、來夏と自分は本質的にどこか似ているとも思う。
必要以上の裏を読まない。 好意に好意以上の意味を求めない。
だから他の住人と話をするときほど、言葉を必要としない。 それが心地好く、好ましい。
來夏の頭をはたく草芽には]
?
[聞き取れなかった言葉を再度求めるように首を傾げた。]
(247) hana 2014/07/05(Sat) 00時半頃
|
うん…る…
…を…らせたいわけじゃないし…
…できなくなるから…そういうのは…で…な…
…
|
[>>243不機嫌そうにしていたかと思えば もう機嫌を直したように來夏の髪を撫でる草芽を 面白がる遊の視線が見下ろしている。]
いや──
いるよ? 好きな人。
(249) hana 2014/07/05(Sat) 00時半頃
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|
─ チャルラタン ─
──納得する?
そう じゃあ、結婚しようかな。
誰か紹介してよ、檀さん。
うん、來夏の。 はは、祝うよ。 來夏は俺の──弟みたいなもんだし。
[檀の失礼な驚きようはいっそ愉快で、楽しい。 腰を屈めてカットされたケーキを眺めていたが]
……ああ
[ホールで買うか聞かれると、それもいいかと思えた。]
(251) hana 2014/07/05(Sat) 00時半頃
|
|
じゃあ、そうする。
ん と これ──。
[指さしたのは3
1.艶やかなグラサージュの施された大人っぽいオペラ 2.真っ赤な宝石のようなベリーがふんだんに盛られたタルト 3.ふんわり焼きあがったチーズスフレケーキ]
(252) hana 2014/07/05(Sat) 00時半頃
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…せやな…じゃあ…らないとこで…うわ
…
…きたいんやったら…かせたるよ…
…なんせ…やからけっこう…うなる…うけど
…
そうしてくれるとありがたい…
…
…
…それは…きたいような…どうしようか…
…
|
[き──
で、一度言葉を途切れさせた檀を 遊の狐目が凝っと見やる。
が、追求はせず]
……そ。 残念。
[さして残念そうに聞こえぬ口振りで言って 綻ぶ檀のいかつい顔に目を細めた。]
(259) hana 2014/07/05(Sat) 01時半頃
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|
[もう一つ選べと言われれば さすがに本気で驚いて、 瞳孔が縦に──はならないが、 猫ならそうなったであろうほど、細い目を精一杯丸くした。]
……うん ありがとう
[いいの? とも 本当に? とも聞かず、 素直に好意に甘えることにして]
じゃあ、これ──。
[二つ目は、赤い宝石を散らしたような ベリーのタルトを選んだ。
來夏が撮る写真のように キラキラした色彩が綺麗だと思った。]
(260) hana 2014/07/05(Sat) 01時半頃
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[会計を済まし、大きな箱が二段積まれた袋を手に チャルラタンを出る間際]
そうだ
[扉を潜る寸前だった遊は振り返り]
南方 昨日風邪引いて熱出したから 夜、何か栄養のあるもの作れない?
材料 必要なら買って帰る。
[涼しい顔で、図々しい頼み事をした。**]
(261) hana 2014/07/05(Sat) 01時半頃
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ジャニスは、トレイル[[who]]のおっぱい枕に頭を乗せて見た。固い。。。**
hana 2014/07/05(Sat) 02時頃
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[黒っぽい厚着の兄貴風こじらせボーイは 最近、なんだか、富に面白い。
他人のセックスを嫌がる草芽の思考ロジック解明は 來夏の誕生日を祝うのを優先し、保留とした。 いつか聞いてやろうと、心に留めておく。
好きな人が誰か、尋かれればすぐに答える気でいたが 尋かれなかったので黙っていた。 草芽の反応が面白かったから──というのも、多分にある。
だめだだめだと繰り返す草芽の頭に伸びる手。 そっと置く程度の力でフードの上から頭を撫でる。 それから草芽に頭を抱えられた來夏の頬をぷにと突付き 冷たい指で來夏の頬の輪郭をなぞる。]
おめでとう
[成長期の果実に注ぐ穏やかな眼差しが 一時二人を見つめていた。]
(272) hana 2014/07/05(Sat) 08時半頃
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|
[來夏が写真を広げるならそれをしばらく眺めて 半刻ほど談話室で寛いでから 遊はソファから立ち上がり]
外、行ってくる
[それだけ言って、どこかへ出掛けて行った。**]
(273) hana 2014/07/05(Sat) 08時半頃
|
ジャニスは、ラ神……!!!
hana 2014/07/05(Sat) 09時半頃
ジャニスは、朝なのに!?
hana 2014/07/05(Sat) 10時頃
いつか…だけで…らせたらいいな…
…
…なあなあ…さん…これから…するん…
…
|
[チャルラタンでケーキを買った帰り道、 保冷剤とケーキ二段の入った大きな紙袋を手に 遊は坂道を上っている。 傾き始めた陽に家々の屋根は橙色に染まり、 アスファルトに出来た遊の影も長く伸びた。
波長の長い赤い光があちこちで跳ね返り 見慣れた町並みがキラキラと輝いて見える時間。 この時間に外を歩いていると、 なぜか胸が締め付けられるように切なくなることがある。
セピアが郷愁を刺激するのか あるいは──失われ往く時間を惜しんでか。]
(314) hana 2014/07/05(Sat) 19時頃
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─ わかば荘 ─
[坂道を登り切り、 わかば荘の生け垣が見えるまであと少しという所で 後からやって来た中型の運搬用トラックに追い越された。 トラックの側面に三毛猫宅配便の文字。 トラックはそのまま緑の垣根の横に停止した。
わかば荘の誰か宛に荷が届いたらしい。
誰に──だろう。 急げば間に合うだろうか。
誰かが荷を受け取る瞬間──宅配員と受取人が対峙する時、 そこにはもう、一つの物語が生まれている。
急げば、丁度受け渡しの瞬間に立ち会えるかもしれない。
そう思って歩調を早めた時 ポケットの中の携帯がぶるぶると震え出した。]
(315) hana 2014/07/05(Sat) 19時頃
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──……はい
[見知らぬ番号からの着信に 画面に表示されたオブジェクトをタップすると、
『三毛猫宅配便でーーーす!!』
明るく威勢の良い声が、 受話口と停車中のトラックの窓から同時に聞こえて来た。*]
(316) hana 2014/07/05(Sat) 19時頃
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─ 談話室 ─
……
[談話室の端に、ぎっしりと中身の詰まった Lサイズの段ボール箱が6個並んでいる。
箱の側面には
安曇野のおいしいもも ──間中果樹園
と、プリントされ、 辺りに甘い薫香を漂わせていた。*]
(317) hana 2014/07/05(Sat) 19時頃
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─ 談話室 ─
[テーブルの上に チーズスフレケーキとベリータルトが並べて置いてある。
スフレケーキには2の形をした蝋燭 ベリータルトにも1の蝋燭が真ん中に刺さっている。
皿とスプーンは、人数分揃っている。 バイト中かもしれないが、天露の分まである。 ポットの中では、誰かが提供してくれた紅茶の茶葉が 程好く開いて琥珀色の液体の中を泳いでいる。
檀の好意で、大きなホールケーキが二つに増えたので 來夏の他にも、住人に声を掛けて人を集めた。
ある程度人数が揃ったところで、 フランクが100円ライターで蝋燭に火を点けた。]
(323) hana 2014/07/05(Sat) 20時頃
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[住人同士の関わりあいの深いわかば荘ではあるが、 こんな風に集合して 誰かの一人の誕生日を祝うことが以前にあっただろうか。
幼い頃、両親や祖父母や近所の友人達に囲まれて 誕生日を祝ってもらったことを思い出した。]
(324) hana 2014/07/05(Sat) 20時頃
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─ バースディパーティ ─
[管理人の掛け声で、下手くそな斉唱が始まる。
ハッピーバースデー徹津 ハッピーバースデー來夏
無口な來夏がいつになく照れているようにも見える。
ハッピーバースデーディア來夏 ハッピーバースデートゥーユー
住人それぞれが、それぞれの言葉で來夏の誕生日を祝ったり 主役よりも先に手を伸ばし 切り分けられたケーキを確保しようとしたり──。
談話室は、いつにも増して賑やかになった。]
(327) hana 2014/07/05(Sat) 20時半頃
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[声の輪の中で、歌唱力33(0..100)x1の遊も 小さな声でバースディソングを口遊んだ。
鮮やかな紅のタルトを一切れ皿に取り フォークで一口分に切って口に運ぶ。
艶めくラズベリーの甘みと同時に 爽やかな酸味が鼻腔に広がり──]
(328) hana 2014/07/05(Sat) 20時半頃
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ジャニスは、テッドを慰める振りをした。
hana 2014/07/05(Sat) 20時半頃
…これ…よかったら…んでみてや
…
…おめでとう…これからもよろしく…
…
…
…の…どや…
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─ パーティ中 ─
[來夏の誕生日をこの上なく盛大に祝い ともすれば感涙を堪えて俯き 言葉も発せないくらい喜んでいる來夏の様子に 満足そうな薄い笑みを引き、 ケーキを食べ終えると遊は自然に椅子を立った。
置きっぱなしの桃の箱は 既に誰かが手をつけたようで減っている。 そのつもりで置いてあるので問題ない。
中の一つを手にとり、 談話室を出ようとする永利>>356の側に近付いた。]
……はい
[掌の上の、まだ少し固い桃を差し出す。]
(358) hana 2014/07/05(Sat) 23時頃
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[わかば荘で唯一遊を遊くんと呼ぶ永利の声は、 ぼさぼさ頭のイメージと違って、柔らかく耳触りが良い。
この声に呼ばれるのは好きで ソファでうつらうつらしている時、 時々髪を撫でてゆく指先も好きだった。]
……部屋、戻るの
[声を掛けたのに大きな意味はない。 用事もない。
ただ──なぜか少し、寂しそうに見えたからだ。]
これはまだ── 新聞紙に包んで、数日柔らかくなるまで置いておく。
そうすると、甘く柔らかくなる。
(374) hana 2014/07/05(Sat) 23時半頃
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で…
…
…そうなんや…したら…んでも…
…なんやろなあ…そない…みでもないんやけど
…めっちゃすきやわ
…
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烟草 おいしい?
[何かあったと問う声を無視し、 提示された箱を見て、また永利に視線を戻す。]
何度か試したけど どうも、いまいちだったな──。
桃は──甘い方が、売れる。 熟した方が香りもいいし。
でも、俺は──…… その年最初に収穫した、まだ未熟な桃も好きだった。
[数ある桃の中から、どうしてそれを選んだのか。 熟しきった甘い実でなく、未熟な果実を選んだ理由。]
(380) hana 2014/07/06(Sun) 00時頃
|
|
[揺れる烟草の、紙と擦れる微かな音は 永利の声とどこか似ていた。
想像していなかった永利の返事>>390に 遊の目が、 パッケージの破れ目から覗く烟草の端に引き寄せられる。]
へぇ
──面白い。
[向き合う相手を内に求めるか。 それとも──煙が描くあやふやな幻に求めるのか。
食べ頃はいつ──と尋かれ、遊は凝っと、 桃を見詰める永利の表情を見詰めた。]
…────じゃあ、明日の──朝。
(398) hana 2014/07/06(Sun) 00時半頃
|
|
─ 談話室>>404 ─
[きっとまだ固くて青いけど──とは言わなかった。
ただ、フレームで切り取られた永利の瞳が 思いの外柔らかかったから
──ああ。もう少し甘くても良かったかな
とは、思ったけれど。
差し出された烟草の箱。 差し出した永利の目と、交互に見て]
……うん
[頭を出した一本を、指で摘んで引き抜いた。]
(414) hana 2014/07/06(Sun) 02時頃
|
|
ありがとう
[柔らかいけれど抑揚に乏しい声で礼を言い、 出てゆく背中を見送って 貰った烟草のフィルターを、軽く歯で噛んだ。*]
(415) hana 2014/07/06(Sun) 02時頃
|
|
[永利が談話室を出て間もなく、 桃の詰まった段ボール箱を重ねて二つ、細腕に抱え]
檀さん、これ──
[と、檀の前に詰み]
お店に。 ──…使えたら、だけど。
いつものお礼。
[遠慮など聞かぬ体で踵を返し、談話室を出た。 永利が談話室を出て間もなくのことだった。]
(421) hana 2014/07/06(Sun) 02時半頃
|
|
─ 201号室 ─
[部屋に戻ると、遊はまず服を脱いだ。 三日間、バイトも買い物の間も同じズボンを穿いていたため 臭くはないが何となく気持ち悪かった。
脱いだものを洗濯機に放り込み、 洗剤と柔軟剤を投入してスイッチを入れる。
シャワー室で水を出し 湯になる前に烏の行水を終えると、 サルエルパンツとTシャツという楽な格好に着替えた。
オカマバーに行こう──。 談話室を出る前、誰かがそんなことを言っていた。 興味があったので行く、とは告げて来た。
そろそろ戻らないと置いて行かれるかもしれない。 そうは思ったが──]
(429) hana 2014/07/06(Sun) 02時半頃
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|
[──五分だけ。
と、パソコンを開き、 書き始めたばかりの小説に向き合った。]
(430) hana 2014/07/06(Sun) 02時半頃
|
|
[五分のつもりだったことなんて 書き出してしまえば忘れている。
白い光に顔を照らしだされ、 暗い部屋でキーボードを打ち込む遊の意識は 小説の世界から、ノックの音で現実に引き戻された。
いつも決まって二回、來夏はドアをノックする。 一定のリズムで、同じ位置で。
来訪者自体そう多くない部屋のこと。 外にいる人物が來夏だとはすぐに気付いた。]
あいてる
[扉に顔だけ向けて、声を掛ける。 入っておいでと言わないけれど、來夏なら必要ない。]
(441) hana 2014/07/06(Sun) 03時半頃
|
|
[今まではパソコンを開いても、今ほど指は走らなかった。 今は、書き始めなせいもあってか、言葉は勝手に湧いて来る。 急いで書き記さなければ取りこぼしそうで怖いくらいだ。
來夏が入って来ても、浮かんだ文章を打ち込んでしまうまで すぐに前を向き、句点を打ってやっと振り返った。]
ううん 大丈夫。
もうすぐ出掛けるけど、 來夏が来なかったら忘れてた。
[入って来た來夏に目を細め、 手招きしてクッションを半分開ける。]
(447) hana 2014/07/06(Sun) 03時半頃
|
|
[クッションの上の体重移動を感じ取り 一瞬前までキーボードを叩いていた指が來夏の腕を取る。]
來夏
邪魔じゃない。
[名を呼んだ後、僅かに間を開けて、はっきりと言う。 置いて行かれたら遅れて行くだけだ。 別に少しも困らない。]
……飲む?
[来夏の手首に触れたまま、 その手の中にある物を見て、眼差しを和らげた。]
(449) hana 2014/07/06(Sun) 04時頃
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|
──
[液晶の明かりが透かした薄桃色に気付いて 一度、立ち上がって天井のライトを点けた。]
桃の酒 かな
[季節柄か、このところよくよく桃に縁がある。 先日ても爺からもらった水まんじゅうも 今日届いた桃も──。
桃の酒は香りがよい。]
うまそう グラス持って来た?
(454) hana 2014/07/06(Sun) 04時頃
|
|
[グラスを忘れたのが、声でわかった。 ぽんぽんと頭に掌を乗せ、 もう一度立ち上がってキッチンに向かう。
戻って来た時、遊は、ガラスのグラスと、 朝南方に貸したアカシアのマグカップを手にしていた。
グラスの方を來夏に渡し]
これで、乾杯出来る
[自分はアカシアのマグカップを持って、 注いで──? と言うように、來夏前に差し出した。*]
(456) hana 2014/07/06(Sun) 04時半頃
|
|
─ オカマバー体験ツアー帰り道 ─
[藤堂の案内で、生まれて初めて訪れたその場所は 過去に読んだ小説の中に出て来る店と違い 雑然としていて安っぽく、働いている男──…もとい、 お姉さんたちも目立って綺麗な容姿のものはいなかった。
それでも、小説と同じ赤っぽいライトの下、 働くオカマたちは皆驚くくらい賑やかで、明るかった。
いつもの調子で飲むな、と藤堂から釘を刺されていた遊は 途中から、迷惑そうな店員の視線もなんのその 氷水ばかりを飲んで、店と、店員と、 店員に絡みつかれるわかば荘の住人たちを 涼し気な目の奥で、しげしげと観察していた。]
(457) hana 2014/07/06(Sun) 05時半頃
|
で…
…ん…
…みじゃないのに…きになってもらえるとか…しいな…
…
…こういう…に…えてるのか…
…
のはじめ…
…こんなに…いままでも…
…つまらなかったろうか…
…を…っておもった…
すっかり…
…に…ってしまった…
それでも…かなければ…
ただでさえいずれ…せるものが
…の…を…めるのは…かりきっている…
あんなに…に…えた…たい…という…も…
…の…とともに…を…めて…になる…
もとより…できる…のないものだ…
けれど…だ…と…ってしまったそれは…
…を…り…ける…に…かった…
|
─ 七月 ─
[陽射しは徐々に勢力を強め 談話室の設定温度は日増しに低くなって来る。 草芽が半死半生の体でソファに伸びている時間も伸びて来た。
中旬。月の頭から書き始めた話がなんとか佳境を迎え 三日間寝ずに結末を書き上げた。
テキストをワードソフトにコピーし 定められた規定の形式で印刷するのに半日。 誤字脱字をチェックし簡単な校正を行うのに一晩。
出来上がったものを封筒に入れ わざわざ郵便局まで歩いて行って窓口で配達を頼む。 窓口の、夢見がちな目をした女性職員に封筒を手渡し ようやくほっと一息つけたのは締め切り当日の朝だった。]
(524) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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|
─ 八月 ─
[保存のために、狩生堂の温度と湿度は一定に保たれている。 適温に保たれた静かな環境で本を読み 客が来れば相手をし、時間になると店を閉めて帰宅する。
帰りの時刻。 太陽は沈み、暗くなった坂道を わかば荘までのそう遠くない距離歩き切るだけで 肌はじっとりと汗ばむようになっていた。
シャワーを浴びて着替え、談話室を覗き 檀も平井もいなければ買って来たサンドイッチを齧る。 かつて天露がバイトしていたコンビニでは、 最近新しく入ったらしい店員が、 時々必要のないものまで温めようとするので気が抜けない。]
(525) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
|
|
[暑いのに、來夏はよく外で撮影をしている。 記録的猛暑の日にも重たいカメラを抱えて出掛けて行った。 若さだろうか。 底なしのバイタリティにただただ感心する。 誕生日に日向から貰った贈り物が気に入ったらしく 建物と言わず人と言わず、 ポラロイドカメラで撮影している姿もよく見かける。
草芽はもはや死体と区別がつかない。]
(526) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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|
[この頃南方は予備校が忙しいらしく 帰宅は遅く休みも減っているようだった。 平日、調子良く明け方近くまで書いて 眠気を感じて南方の部屋を訪れたら 翌日仕事だからと叱られた。
休日を狙って再度訪れると、 今度は大人しく部屋に入れてくれた。
南方の部屋は、染み付いた油の匂いのせいか 短い時間でもよく眠れる。
談話室もまだ利用していたが それでも以前よりは頻度は落ちている。]
(527) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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|
─ 九月 ─
[連絡はまだ来ない。 この頃は、わかば荘にいる間も携帯を持ち歩くようになっていた。 いつ連絡が来てもすぐ出れるように、 時々無意識に携帯を触っている。
何度でも挑戦すると決めているのに 早く結果を出したいと逸る気持ちのあることを知る。
自分のそういった心の動きが、 珍しく、少し意外で、面白い。
最近多くなった、 片時も携帯を離さず下ばかり向いている通行人と大差ない。]
(528) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
|
|
[九月末日。 バイトを終えて帰る道の途中で わかば荘ではない方角へ向かう日向とすれ違った。
ぼんやりしていたせいか いつかのように手首を掴まれ、呼び止められた。 掴まれた手首の先には、鳴らない携帯が握られている。
日向の手は、真夏の太陽のように熱い。
日向の目に自分が映っている。 きっと、あの日と同じ、驚いた顔をしている。 今度もまた猫に例えられるのだろうか。 そう思って、言葉を待っていると──>>431]
(529) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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|
─ 十月 ─
[たった数日がやけに長く感じられる。 応募した作品の受賞発表は紙面で行われる。 その前に、作者には連絡があるはずだ。
雑誌の発売は十一月頭。 そろそろ連絡が来ないとおかしい。
いや── 連絡があるのは受賞作品の執筆者だけだろう。
────今回は、駄目だったのかもしれない。]
(532) hana 2014/07/06(Sun) 20時半頃
|
|
─ 十月某日 ─
[朝。 開け放しの窓から冷気が舞い込み、頬を擽った。
昨日もあまり眠れなかった。 黎明が朝焼けに変わる頃 疲れが出たのか、眠気に身を任せたまでは覚えている。
億劫だが起き上がり、顔を洗ってベランダに出た。
以前永利さんから貰ったまま、 結局吸わずに取っておいた烟草に火を点けてみた。
深く吸い込もうと口に近づけた時 不意に、デスクの上に放ってあった携帯が ブルブルガタガタと煩く鳴った。
見知らぬ番号のそれを 何の感慨も抱かず通話に変え────]
(533) hana 2014/07/06(Sun) 20時半頃
|
|
──────……。
[受話口から聞こえた声に 烟草を挟んでいた指から力が抜けた。
木材の自然な色合いの床に、 ちいさな黒い焦げ跡がついた。*]
(534) hana 2014/07/06(Sun) 20時半頃
|
|
─ 十月某日 104号室 ─
[早朝と言うには遅く 昼と言うには早い時間。
休日であるはずの南方の部屋を、 遊はいつもより心なしか早いリズムで、 コンコンコンと三度、打ち鳴らした。]
(535) hana 2014/07/06(Sun) 20時半頃
|
|
[いつもと同じ、 急ぐでも慌てるでもないマイペースな足音が近付いて来る。
クロップドパンツに白い長袖パーカーを羽織った遊は 両足にバランスよく体重を乗せ 自然体で、扉の前に佇んでいる。
切れ上がった一重の奥の目は 第一声に何を言おうか考えて、扉の周囲を揺れ動く。]
(539) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
|
|
[ドアノブをに手が掛かった音がして 手前にドアが押し開けられる。
いつもと変わらぬ面倒そうな顔を見て、遊は──]
…──おまたせ。
モデル 引き受けに来た。
[口端を引き上げ 細い目をゆるりと細めたしたり顔で 現れた南方に、常より若干、ほんの心持ち、 得意気に笑い掛けた。]
(540) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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─ 七月 201号室>>521─
[アルコールを摂取するためというより 薄桃色の色彩のそれがどんな味かを確かめるように アカシアのカップに注がれた酒に口をつける。
果実酒のようなそれは果実酒ではなかく 甘みの中に仄かな米の香りがあった。
甘みだけでなく酸味もある爽やかな酒は 來夏の舌にも飲みやすそうに思えた。]
虹?
[朝──というか、昼前、 起きた時に空には何も──雲以外見えなかった。
執筆を開始したら周囲が見えなくなるので 今はパソコンに向かわず、來夏の頭を見下ろしている。]
(542) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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[問いかけ>>522に、頭の中で虹を思い浮かべる。
山と山を繋ぐ雨上がりの虹 庭にじょうろで水を撒くときに見える小振りの虹 滝壺の水飛沫に浮かび上がる雄大な虹。
透明な光の色を折り重ねた、七色のアーチ。
いや── 言葉にすれば七色でも、実際にはもっと細かい 無限の色の集合体だ。]
内側──…
[いくつか見た虹の景色を思い浮かべ 質問に答えようとするが、その前に 來夏が答えを教えてくれた。]
(545) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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ああ──
[内側の色は白。
そう、確かに、虹の内側は白く霞んでいる。 目に見える現実として“そう”あるから、 そこの理由を求めたことはなかったが]
へぇ
[來夏に教えられ、初めて知る。
虹の内側の色は、 無限の色彩が撚り合わされて出来た白なのだと。
単純に、來夏の博識に感心し その目に映る世界の姿を想像する。]
(546) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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…──俺?
[けれど、次に來夏が言った言葉>>523に 遊は意味を問うような視線を向けた。*]
(547) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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― 十月某日、104号室 ―
[予想したのは 面倒臭そうな声で、眉間に皺を寄せて あっそ、と肩を竦める南方だった。
試すように条件を突きつけた相手が 素直に喜んでくれるなんて想像もしていなかった。
祝福など ほんのおまけのように口にするのだと思っていた。]
(552) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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[南方の手が頭に乗る。 熱すぎない、 陽射しにぬくまった果実と同じ体温の手が 短く整えた髪をくしゃくしゃに掻き回す。
眉間だけでなく、 目尻にも皺を作って南方が笑う。
何度も頷き、そうしたまま少しの時間をおいて やっと、心から喜んだ声を発した。]
(553) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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[だから────]
……うん
[遊は意外そうに南方を見上げた後、 珍しげに首を傾げそうになったけれど すぐにまた瞼を伏せ、素直に喜びを笑みに変えた。]
(554) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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さっき電話があった。
受賞だって。 大賞ではなかったけど、審査員特別賞。
──本は 出して貰える。
(555) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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南方 約束したよね。
──見せて。 南方が描きたいもの。
(556) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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そこで…かに…を…えるも…
…い…すことも…に…すこともなく…
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[見せて──、 の 返事がない。]
それが目的だったから
[最初は。
受賞がデビューに繋がる新人賞を選び 家族を説き伏せるための肩書きが欲しくて応募した。 南方なら、それももう知っている。]
でも──…
[今は、そんなの関係なく、ここにいる。
出された条件はクリアした。 今度は南方が、報酬を渡す番。]
(574) hana 2014/07/06(Sun) 22時頃
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────。
[言葉はなく、 真っ直ぐに見上げる眼差しが、南方の答えを待っている。]
(575) hana 2014/07/06(Sun) 22時頃
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[閉じかける扉を細い指で止め、 踵を返した南方を追って、当たり前のように、遊も中へ入る。]
(576) hana 2014/07/06(Sun) 22時頃
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[部屋と玄関とを区切るカーテンも、 今では境界線の役割を果たさない。
一切の抵抗を感じずあっさりとカーテンを潜り]
──南方?
[無言のままの南方の背に、大きくはない声を掛けた。]
(580) hana 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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に…を…けて…は…かに…みした…
…かれても…だ…すように…けていた…
ひたすらに…があって…き…けた…
…と…
なんの…ちもこもらずに…
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…──。
[目の前で、何かが組み上がってゆく。 組み上がる前の絵は練習用だったのか 何の感慨もなく木枠から剥がされ 床に貼られた板の上でくたんと折れ曲がった。
なぜ返事をしないのか、探る心は逸るが急かしはせず、 新しく描くためのキャンバスを作っているのだと判断して じっとカーテンの前に立って待った。]
(587) hana 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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…──────。
[立ち止まり、南方の背を見詰め続ける遊の まだ微かに浮かんでいた笑みが消える。]
(589) hana 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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だったんだろうな…
…
あれは…の…だったんだろうな…
…
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[これは──いつもの南方とは違う。
面倒がりつつも律儀で 不機嫌でもなんだかんだ答えをくれていた 遊の知る、人の好い男ではない。]
……なかた
[圧迫された喉から、微かな呼気に押し出されるように 掠れた声が名前を呼ぶ。
キャンバスの落ちる床を踏み越え 画材の詰まった道具箱を取り出す南方を止め 話を聞かなければいけない──。
そう思っても、背中から感じる拒絶の気配は 今まで見たことのないほど強固で、見えない線の前に立ち竦む。]
(593) hana 2014/07/06(Sun) 22時半頃
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[いつものように簡単に側に寄れない。 数歩歩み出て、床に落ちた布地を拾うのが精一杯だった。
そうするうちにも 新たに組まれたキャンバスはイーゼルに乗り 椅子が、その側に据えられる。
やっと聞けた南方の声に、温度を感じることが出来なかった。]
……うん
[ただ頷いて、動かない足で冷たい床を踏んでいる。]
(599) hana 2014/07/06(Sun) 23時頃
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[振り返った南方の表情は いつも通りであるかにも見えた。
眉根の寄った、 不機嫌そうな────……?]
……
[瞬間だけを切り取れば、そうであったのかもしれない。 來夏のカメラが景色を写し取り 一瞬の時間を四角い枠に圧縮して閉じ込めるように 南方も、前後の繋がりを無視すれば、 “いつも通り”──と、思えたかもしれない。]
(605) hana 2014/07/06(Sun) 23時頃
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[けれど──。]
みなかた
[部屋の前で頭を撫でて、笑ってくれた南方を思えば。 目尻に寄った人の好さそうな皺を思い出せば。
今、そこにある“いつも通り”は、不自然でしかない。]
!
[寄って来た南方に手首を取られ、 その手が掴んでいた生地は不必要なもののように奪われた。
手を引かれるまま、裸足の足が部屋を横切り 陽光が斜めに差し込む場所で止まる。]
(607) hana 2014/07/06(Sun) 23時頃
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[値踏みするような視線を感じた。 モデルとして、価値があるかを確かめているような。
──ああ。 確かに、思ったのだった。 描きたいものは、自分ではないかもしれないと。
南方は今、それを確かめているのかもしれない──。]
(608) hana 2014/07/06(Sun) 23時頃
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なんだ…そんなことでいいのか…
…
…いいよ…だけじゃなくて…いつでも…っても…
…も…くなったら…るし…
…
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[ぬくい──が、優しくはない手が離れて 隣に椅子が置かれた。
西洋美術史の本を渡されて、読めと言われた。]
……。
[遊は頷いて、椅子に腰をおろし、軽く足を開いて まだ開かない本を膝の上に乗せた。
遊の目は、まだ南方を見ている。]
(612) hana 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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…しいと…じていないではなかった…
…それでも…に…が…ち…がらなかったのだ…
…
に…する…の…からの…ゆえの…をうけた…
…い…る…
…に…する…すらその…だったのだろうと…
…に…った…
…まで…けていたものは…だったのだろうか…
…けるために…から…したかった…な…が…でもわからなかった…
それが…わかった…
…かれたくなかったのだ…
いつしか…ただ…しくなっていたことを…
ほとほと…れ…てていたことを…
なまま…にだけ…って…
それだけのために…き…けた…は…
…んな…ちを…り…れさせた…
この…しいと…ったことは…もなかった…
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[待っても、南方は見ているばかりで描きはじめようとしない。 仕方なく、足を組んで、背を軽く丸め 既に一度、南方の部屋で読んだことのある西洋美術史の本を もう一度、端から、詳細に、舐めるように読み始めた。]
…────。
[いつの間にか、没頭していて──。
南方の声に気付くのが一瞬遅れた。]
(614) hana 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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──…?
[何か言われた気がして顔を上げる。 下ばかり向いていた目に、窓からの光が少し眩しい。]
(616) hana 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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──。
[痛い。
南方の声が。 呆然としたようなその声が。
やっぱり自分じゃ無理か──という 諦めにも似た気持ちが湧いて来て、 想いはすぐには言葉にならなかった。]
(617) hana 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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[本を閉じて組んでいた足をおろし 椅子から立ち上がって、 イーゼルに立てかけられたキャンバスの前に立った。
──キャンバスは、真っ白なままだった。]
(618) hana 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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[本を足元に置いて、キャンバスでなく、 呆然としている南方のこめかみから目尻の辺りに 笑っていない遊の視線が留まる。]
…──────。
[言葉の代わりに、遊は 空になった冷たい手で、南方の首筋に触れた。
触れて、少し体温が混ざった辺りで 南方の背を、髪を、ゆっくりと撫で下ろした。]
(619) hana 2014/07/06(Sun) 23時半頃
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いやいやいやいやいや…て…て…て…
こう…うのはお…いちゃんと…き…う…を…ってだな…
いやそうじゃなくて…き…う…にこう…うのは…
じゃなくてだな…
…
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いいよ
[ぽつ、と遊は言い]
…──いいよ。
[もう一度、同じ言葉を繰り返した。]
(623) hana 2014/07/07(Mon) 00時頃
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[南方の声から、なにがしかの感情は感じ取れた。
傷ついている。 驚いているのかもしれない。
南方は、描かない──ではなく 描けない──と言った。]
いいから────……。
[もう、描こうとしなくていい。
──無理をさせた自分を悔いた。]
(626) hana 2014/07/07(Mon) 00時頃
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[南方の手から鉛筆を、奪うではなくそっと取り上げ、 キャンバスを支えるイーゼルの端に置いた。
ゆっくりと息を吐き、 撫でていた手を離すと、南方の背後に回り込んだ。]
(631) hana 2014/07/07(Mon) 00時頃
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[冷たい、温度のない、 小枝のような遊の指が、南方の瞼を覆い 視界に映る、かつてモデルが立っていた空間も、 遊が座っていた椅子も、白いキャンバスも、イーゼルも。
全て──全てを、闇に覆い隠した。]
もう、描かなくていいから──
[抑揚のない遊の声が、暗示を掛けるように、 視界を塞いで、引き寄せた南方の後頭部に、ゆっくりと囁いた。]
(632) hana 2014/07/07(Mon) 00時頃
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