28 わかば荘の奇々怪々な非日常
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─墓地─
[墓地の入り口に立ち、島国の中で独自の進化を遂げた、今やグローバルスタンダードの波から取り残された形の携帯電話を耳に宛て、一向に出ない相手にコールを送ること28(0..100)x1秒。]
出やしねー。 くそ兄貴、仕事中か?
[諦めて二つ折りの携帯を閉じて尻ポケットに仕舞った所で、桃地さんと呼びかける声に振り向いた。]
おう。
[短く答え、声を掛けて来た男の顔を見る。 宝生嶺二。生前の「彼女」を知っている男。 わかば荘に越して来た頃は随分と尖っていて、簡単な荘内の決まり事を説明している間でさえ、面倒そうな舌打ちを隠さないような、荒んだ雰囲気を持つ男だった。]
(54) 2013/09/05(Thu) 12時頃
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[とは言え、嶺二が表立ってフランクに喧嘩をふっかけて来るような事は一度たりともなかった。 基本的に、他の住人に迷惑を掛けなければフランクから何かを言う事はなかったし、6年前は、フランクも、今以上に不干渉の不真面目な管理人だったからだろう。]
聞いたのか。
[見てるか?という質問に答えるフランクの顔は、常の気の抜けたものから一転、ぴくりと眉を潜めて睨むような表情。]
……そうか。 ……俺だけじゃなかったか。
[嶺二の肯定を受けて、短い溜息を吐く。]
(55) 2013/09/05(Thu) 12時半頃
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出来る。
[黙らせるのは簡単だ。 しかるべきやり方で、一帯に悪意ある霊が入って来られないようにすればいいだけだ。]
…………けど、気は進まない。
[やや表情を和らげたフランクは、嶺二を伴って倒れていた墓石の所へ歩いて行く。元通り立てられた後丁寧に磨かれた跡のある墓石を前に、フランクの推測を教えた。]
怒るのには、理由がある。 俺だって大事な人の墓蹴っ飛ばされれば怒りたくなる。
[因果応報を、フランクは否定しない。 霊の怒りが、無体を働いた本人に向くのであれば、その人間がどうなろうと何も言わなかっただろう。]
でも、やったのは嶺二さんじゃないんだろ?
[だぶっとしたジーパンのポケットに手を突っ込んで、小さな墓石を見下ろしながら困ったような声。]
(56) 2013/09/05(Thu) 12時半頃
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他にもいるか。 聞いた奴。
[確認するよう問いを重ねて、複数の人間が三毛猫の──それに取り憑いている女の声を聞いた事を知ると、もう一度、今度はゆっくりと溜息を吐き出した。]
見えないのに聞こえる声は、不安になるな。
[住人を不安に陥らせる存在を放置は出来ない。
さてどうするかと、いくつかの方策を思い浮かべているところへ、きっぱりとした嶺二の声が届き>>49]
……────。
[分厚いレンズの奥の目を驚いたように開けて、思わずじっと嶺二を見た。]
(57) 2013/09/05(Thu) 12時半頃
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……わかった。
[フランクの目許が、ふっと和らぐ。 短い返事を返して踵を返す。]
なんとかしてみるよ。
[嶺二に背を向けて墓地の出口に向かいながら、声だけを残し、フランクは口端に僅かな笑みを浮かべた。]
変わったなぁ。 あいつも────俺も。
(58) 2013/09/05(Thu) 13時頃
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─墓地─
[>>61踵を返した背中に零二の申し出が届くと、足を止めて振り向いて、視線を空に向けて考える。]
そうだな。 ……支えてやってくれ。
[空から零二へと視線は降りて、鍛えられた体躯が齎す安心感を、住人に与える事を求める。 悪意を持ったばかりの霊が影響を及ぼせるのは、今は相手の心のうちだけだろう。気を確かに持てば、脅威ではないのだと、たった二言で伝わるだろうか。]
(89) 2013/09/05(Thu) 21時頃
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……ん?
[更に、追加の質問には目を瞬いて]
名前、どこで。 国谷は……陸上選手、だよ。
…………昔、わかば荘に住んでいた……な……。
[足元の砂利へ視線を落とし、言った。]
(90) 2013/09/05(Thu) 21時頃
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今、国谷は病院にいる。 国谷の身体は。
………………じゃあ、俺は行くよ。
[それ以上を語らず、フランクは歩み去った。]
(92) 2013/09/05(Thu) 21時頃
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[フランクは庭にいる。 庭からわかば荘の緑の屋根を見上げ、屋根の上に寝そべるまるまる太った姿と対峙している。]
…………さぁて。
[猫は墓地で見た時より禍々しい空気を纏い、黄金の瞳でフランクを睨めつける。 短期間になぜ、ここまで力をつけたのか。]
……国谷、か?
[荘に存在する人ならぬものが、通常ありえない筈の速度で霊に成長を促してしまったのか。]
(98) 2013/09/05(Thu) 21時半頃
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[フランクは携帯を取り出して、まず兄に電話を掛けた。 三度目の正直。 電話は通じた。]
……うん。 あぁ。 あぁ、そうだよ。
頼みがあって電話した。 供養を。 出来るだけ早くな。
……あぁ? 平気だって。 いいから急いでくれ。 頼んだぞ。
[手短に用件を告げ、通話を終了する。 待受画面に戻るのを待って、立て続けにもう一件。
ジャニスの持つ通信機器に、フランクの携帯からの着信音が鳴り響く──。*]
(100) 2013/09/05(Thu) 21時半頃
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[ジャニスに掛けた携帯への応答はない。 携帯を耳に当てたまま、ぽり、と頬を掻く。]
寝てんのか?
……部屋、行ってみるか。
[一旦視線をジャニスの部屋の窓へ向け、また三毛猫へと──]
っち。
[三毛猫は、その一瞬で屋根から姿を消していた。]
(132) 2013/09/05(Thu) 23時頃
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ただね…
…かを…じると…うのは…その…を…じる…を…じる…です…
…いっぱなしだと…も…じられなくなるから…
それだけは…を…けた…がいいですよ…
…
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[諦めて通話を終了しようとした時、コールが途切れて通話口から声が聞こえた。>>131]
フランクだ。 ……仕事の依頼だ。
[名を名乗った直後に、前置きもなく切り出す。]
鎮めを、頼めるか?
取り憑いてる猫から引き剥がして、一時的に力を削ぐだけで、いい。
(139) 2013/09/05(Thu) 23時半頃
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そうか。
[>>143通話口から聞こえる事情説明に短く頷く。 複数からの依頼。やはり短時間で影響が広がっている。]
助かる。
[フランクは専門家ではない。だから、準備に時間がかかるし、それを省略してしまうと、対象にどんな影響があるかわからない。 穏便に済ませたいのだ。無闇に傷つける事なく。]
何もしない。 依り代を失えば影響力も弱まるだろう。 それで十分だ。
……説得、か。 面白い事を言うな。
誰だ?
[霊と対峙して平気な相手か、見極めようと尋ねる。]
(154) 2013/09/05(Thu) 23時半頃
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エリか。
[確認して、しばし黙る。]
……本人が望んだのか。 なら、俺が止める事じゃないな。
傍にいてやってくれるか。 頼む。
[病沢エリについて、今でも多く思い出されるのは、倒れて血の気を失った、閉ざされた瞼。]
(173) 2013/09/06(Fri) 00時頃
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[身体が弱く、人との交流も得手とはしていないエリは、下手をすれば酷く影響を受けてまた倒れてしまうだろう。 それを彼自身も知っているだろう。
それでも、誰とも知らない、この世のものでさえない相手のために、恐怖と対峙すると決めたのだ。]
強くなったな……。
[ぽつり、と呟く声は、ジャニスにも聞こえただろうか。]
(175) 2013/09/06(Fri) 00時半頃
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[ジャニスと通話を続けながら、目は三毛猫を探している。 取り除くのに、肝心の依り代の確保は必要だろう。]
ある。 生まれる前の子を失くした、母親だよ。
猫、どこだろうな。
……と、裕……?
[2階のベランダを端から端まで、視線を流すように見ていたフランクの目に、すぅっと開く窓が見えた。 出て来たのは、黒髪の、短髪の少女の姿。
正確には、男。入居の際の書類をチェックする立場のフランクは、裕が男性だと最初から知っていた。]
(195) 2013/09/06(Fri) 01時頃
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[気になって見ていると、裕はベランダに手を掛ける。 高校生にしては華奢な体躯の裕の周りに、うっすらと黒い靄のような物が見えた。]
おい、204号室だ。
[短い言葉はジャニスへ向けて。]
(198) 2013/09/06(Fri) 01時頃
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裕!!
危ないから動くんじゃない!!
[通話を切って携帯を放り出し、204号室のベランダの下に駆け寄る。 めったに声を荒げない男の、全力の大声が響いた。]
(200) 2013/09/06(Fri) 01時頃
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[2階程度の高さなら、下で受け止めれば、少なくとも裕は大した怪我は負うまい。
ベランダで揉み合う声を聞きながら、フランクはジャニスの手袋の下の手が裕の顔へ向かうのを見ている。]
(219) 2013/09/06(Fri) 01時半頃
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[ジャニスの手によって裕の身体から引きずり出された黒い靄は、細かくその身を震わせて、ジャニスの手から己が身を切断しようともがく。 それが叶えば、部屋の中にいるエリへと向かって行こうとするだろう。]
(228) 2013/09/06(Fri) 01時半頃
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ん。
[ジャニスの声に軽く手を上げる。
裕にも、円と龍之介にも、また、他の住人の誰にも怪我がなくて良かったと安堵する心中は、一見無表情に見える顔からは窺い知れまい。]
(274) 2013/09/06(Fri) 22時半頃
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[円と龍之介のいるベランダに近寄って]
終わったそうだ。 ……二人とも、ありがとな。
[短い感謝を告げる。]
(276) 2013/09/06(Fri) 22時半頃
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なんも壊れたりしてねぇよな……。
[204号室を見上げ、呟く。 物も人も。今回はフランクが直す必要はないらしい。]
……とりあえず、だ。
(279) 2013/09/06(Fri) 22時半頃
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おい! 珈琲淹れるから飲みたい奴は談話室!
[両手を口に宛てて一声。
手を下ろすと、ちらと204号室に目をやって、まだ問題は残ってるか──と短く嘆息しつつ談話室へ向かった。 談話室に来た者へは、ことのあらましを掻い摘んで説明するつもりでいる。
それをどう受け取るかは、住人次第**]
(283) 2013/09/06(Fri) 23時頃
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ここの…が…あなたを…う…だと…っているんですか…
ここの…が…あなたを…う…だと…っているんですか…
…は…そんなに…ませんか…
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─談話室─
[人が談話室へ来る頃にはもうフランクはミニキッチンに立っていて、ポットの中で湯がこぽこぽと音を立てる。
何人来てもいいように、部屋の数+1のカップを並べ、ドリップコーヒーのパックを開けて一つ一つカップの端に引っ掛けている。 いつもはインスタントコーヒーで満足してしまうフランクにしては、個包装のドリップコーヒーというのは特別なものなのだが、珈琲好きには不満かもしれない。]
おう。
[>>307>>312リクエストには背中を向けたまま声だけの返事。
廊下から談話室に近づく足音。ドアの開く音。入り込んで来る話し声。集う気配に、振り返らぬフランクの顔は穏やかに緩む。]
(316) 2013/09/07(Sat) 00時頃
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[丸盆に珈琲の入ったカップを適当に乗せて、談話室のテーブルの上に並べて行く。 >>315事情説明を求める源蔵には、無言のまま頷く。]
残り、持って来る。
[一度では運びきれない珈琲を取りにキッチンへ戻る。 二度目の配膳で運ばれてくるカップの中には、一つだけ、珈琲が飲めない誰かの為の紅い液体が混ざっている。]
(330) 2013/09/07(Sat) 00時半頃
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[談話室にいる人数分、宝生のペットも含めて、きっちり飲み物を配り終えてから、出された茶菓子に目を細め、新顔を含め賑やかに会話を交わす面々を眺めてから、ふっとその目を、庭のハーブの茂みへと向けた。
フランクの目に、「彼女」の笑顔が見えた**]
(347) 2013/09/07(Sat) 01時頃
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