78 わかば荘の薔薇色の日常
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で…
…ん…
…みじゃないのに…きになってもらえるとか…しいな…
…
…こういう…に…えてるのか…
…
のはじめ…
…こんなに…いままでも…
…つまらなかったろうか…
…を…っておもった…
すっかり…
…に…ってしまった…
それでも…かなければ…
ただでさえいずれ…せるものが
…の…を…めるのは…かりきっている…
あんなに…に…えた…たい…という…も…
…の…とともに…を…めて…になる…
もとより…できる…のないものだ…
けれど…だ…と…ってしまったそれは…
…を…り…ける…に…かった…
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─ 七月 ─
[陽射しは徐々に勢力を強め 談話室の設定温度は日増しに低くなって来る。 草芽が半死半生の体でソファに伸びている時間も伸びて来た。
中旬。月の頭から書き始めた話がなんとか佳境を迎え 三日間寝ずに結末を書き上げた。
テキストをワードソフトにコピーし 定められた規定の形式で印刷するのに半日。 誤字脱字をチェックし簡単な校正を行うのに一晩。
出来上がったものを封筒に入れ わざわざ郵便局まで歩いて行って窓口で配達を頼む。 窓口の、夢見がちな目をした女性職員に封筒を手渡し ようやくほっと一息つけたのは締め切り当日の朝だった。]
(524) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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─ 八月 ─
[保存のために、狩生堂の温度と湿度は一定に保たれている。 適温に保たれた静かな環境で本を読み 客が来れば相手をし、時間になると店を閉めて帰宅する。
帰りの時刻。 太陽は沈み、暗くなった坂道を わかば荘までのそう遠くない距離歩き切るだけで 肌はじっとりと汗ばむようになっていた。
シャワーを浴びて着替え、談話室を覗き 檀も平井もいなければ買って来たサンドイッチを齧る。 かつて天露がバイトしていたコンビニでは、 最近新しく入ったらしい店員が、 時々必要のないものまで温めようとするので気が抜けない。]
(525) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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[暑いのに、來夏はよく外で撮影をしている。 記録的猛暑の日にも重たいカメラを抱えて出掛けて行った。 若さだろうか。 底なしのバイタリティにただただ感心する。 誕生日に日向から貰った贈り物が気に入ったらしく 建物と言わず人と言わず、 ポラロイドカメラで撮影している姿もよく見かける。
草芽はもはや死体と区別がつかない。]
(526) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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[この頃南方は予備校が忙しいらしく 帰宅は遅く休みも減っているようだった。 平日、調子良く明け方近くまで書いて 眠気を感じて南方の部屋を訪れたら 翌日仕事だからと叱られた。
休日を狙って再度訪れると、 今度は大人しく部屋に入れてくれた。
南方の部屋は、染み付いた油の匂いのせいか 短い時間でもよく眠れる。
談話室もまだ利用していたが それでも以前よりは頻度は落ちている。]
(527) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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─ 九月 ─
[連絡はまだ来ない。 この頃は、わかば荘にいる間も携帯を持ち歩くようになっていた。 いつ連絡が来てもすぐ出れるように、 時々無意識に携帯を触っている。
何度でも挑戦すると決めているのに 早く結果を出したいと逸る気持ちのあることを知る。
自分のそういった心の動きが、 珍しく、少し意外で、面白い。
最近多くなった、 片時も携帯を離さず下ばかり向いている通行人と大差ない。]
(528) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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[九月末日。 バイトを終えて帰る道の途中で わかば荘ではない方角へ向かう日向とすれ違った。
ぼんやりしていたせいか いつかのように手首を掴まれ、呼び止められた。 掴まれた手首の先には、鳴らない携帯が握られている。
日向の手は、真夏の太陽のように熱い。
日向の目に自分が映っている。 きっと、あの日と同じ、驚いた顔をしている。 今度もまた猫に例えられるのだろうか。 そう思って、言葉を待っていると──>>431]
(529) hana 2014/07/06(Sun) 20時頃
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─ 十月 ─
[たった数日がやけに長く感じられる。 応募した作品の受賞発表は紙面で行われる。 その前に、作者には連絡があるはずだ。
雑誌の発売は十一月頭。 そろそろ連絡が来ないとおかしい。
いや── 連絡があるのは受賞作品の執筆者だけだろう。
────今回は、駄目だったのかもしれない。]
(532) hana 2014/07/06(Sun) 20時半頃
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─ 十月某日 ─
[朝。 開け放しの窓から冷気が舞い込み、頬を擽った。
昨日もあまり眠れなかった。 黎明が朝焼けに変わる頃 疲れが出たのか、眠気に身を任せたまでは覚えている。
億劫だが起き上がり、顔を洗ってベランダに出た。
以前永利さんから貰ったまま、 結局吸わずに取っておいた烟草に火を点けてみた。
深く吸い込もうと口に近づけた時 不意に、デスクの上に放ってあった携帯が ブルブルガタガタと煩く鳴った。
見知らぬ番号のそれを 何の感慨も抱かず通話に変え────]
(533) hana 2014/07/06(Sun) 20時半頃
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──────……。
[受話口から聞こえた声に 烟草を挟んでいた指から力が抜けた。
木材の自然な色合いの床に、 ちいさな黒い焦げ跡がついた。*]
(534) hana 2014/07/06(Sun) 20時半頃
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─ 十月某日 104号室 ─
[早朝と言うには遅く 昼と言うには早い時間。
休日であるはずの南方の部屋を、 遊はいつもより心なしか早いリズムで、 コンコンコンと三度、打ち鳴らした。]
(535) hana 2014/07/06(Sun) 20時半頃
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[いつもと同じ、 急ぐでも慌てるでもないマイペースな足音が近付いて来る。
クロップドパンツに白い長袖パーカーを羽織った遊は 両足にバランスよく体重を乗せ 自然体で、扉の前に佇んでいる。
切れ上がった一重の奥の目は 第一声に何を言おうか考えて、扉の周囲を揺れ動く。]
(539) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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[ドアノブをに手が掛かった音がして 手前にドアが押し開けられる。
いつもと変わらぬ面倒そうな顔を見て、遊は──]
…──おまたせ。
モデル 引き受けに来た。
[口端を引き上げ 細い目をゆるりと細めたしたり顔で 現れた南方に、常より若干、ほんの心持ち、 得意気に笑い掛けた。]
(540) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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─ 七月 201号室>>521─
[アルコールを摂取するためというより 薄桃色の色彩のそれがどんな味かを確かめるように アカシアのカップに注がれた酒に口をつける。
果実酒のようなそれは果実酒ではなかく 甘みの中に仄かな米の香りがあった。
甘みだけでなく酸味もある爽やかな酒は 來夏の舌にも飲みやすそうに思えた。]
虹?
[朝──というか、昼前、 起きた時に空には何も──雲以外見えなかった。
執筆を開始したら周囲が見えなくなるので 今はパソコンに向かわず、來夏の頭を見下ろしている。]
(542) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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[問いかけ>>522に、頭の中で虹を思い浮かべる。
山と山を繋ぐ雨上がりの虹 庭にじょうろで水を撒くときに見える小振りの虹 滝壺の水飛沫に浮かび上がる雄大な虹。
透明な光の色を折り重ねた、七色のアーチ。
いや── 言葉にすれば七色でも、実際にはもっと細かい 無限の色の集合体だ。]
内側──…
[いくつか見た虹の景色を思い浮かべ 質問に答えようとするが、その前に 來夏が答えを教えてくれた。]
(545) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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ああ──
[内側の色は白。
そう、確かに、虹の内側は白く霞んでいる。 目に見える現実として“そう”あるから、 そこの理由を求めたことはなかったが]
へぇ
[來夏に教えられ、初めて知る。
虹の内側の色は、 無限の色彩が撚り合わされて出来た白なのだと。
単純に、來夏の博識に感心し その目に映る世界の姿を想像する。]
(546) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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…──俺?
[けれど、次に來夏が言った言葉>>523に 遊は意味を問うような視線を向けた。*]
(547) hana 2014/07/06(Sun) 21時頃
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― 十月某日、104号室 ―
[予想したのは 面倒臭そうな声で、眉間に皺を寄せて あっそ、と肩を竦める南方だった。
試すように条件を突きつけた相手が 素直に喜んでくれるなんて想像もしていなかった。
祝福など ほんのおまけのように口にするのだと思っていた。]
(552) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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[南方の手が頭に乗る。 熱すぎない、 陽射しにぬくまった果実と同じ体温の手が 短く整えた髪をくしゃくしゃに掻き回す。
眉間だけでなく、 目尻にも皺を作って南方が笑う。
何度も頷き、そうしたまま少しの時間をおいて やっと、心から喜んだ声を発した。]
(553) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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[だから────]
……うん
[遊は意外そうに南方を見上げた後、 珍しげに首を傾げそうになったけれど すぐにまた瞼を伏せ、素直に喜びを笑みに変えた。]
(554) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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さっき電話があった。
受賞だって。 大賞ではなかったけど、審査員特別賞。
──本は 出して貰える。
(555) hana 2014/07/06(Sun) 21時半頃
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