28 わかば荘の奇々怪々な非日常
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[患者のリハビリを担当するのだから、 話すのが苦手などと言ってはいられないだろう。
苦手意識を克服するために 談話室に頻繁に顔を出すようになっていた。
キザな王子様は驚いてくれるだろうか。 昨今のお姫様は、ただ待つだけでないのだ、と。
もしも「完治しなかった」と恨み言を言われても、 責任を負うことが出来る職業であるのが少し。
沢山戸惑わせられたので、 彼の顔が驚きに崩れるのも見てみたいのが少し。
自信満々の顔に、 自信の光が灯った翠を向けられるといいと思うのが大半。
―――そんないつかの未来を夢見て。**]
(118) ぶんちゃん 2013/09/09(Mon) 02時頃
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[立花の表情を平静には見られない。彼女の瞳が何を思って見開かれているのかも、今の自分にはわからない]
……っ、 けど、
[反駁の声は、続かない。 あの時見ていなかったからだ、なんて浅い言い訳は何故か言えなかった。 手が伸ばされると、体が強張る。爪の先ほどの控えめさで、それでも立花の指が指先に触れた。
触れた場所から、体中に広がる熱。 ひとが、この手に触れたのは、いつ以来のことだろう]
(119) heinrich 2013/09/09(Mon) 02時半頃
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[そして少しの間のあとに、零された言葉。 息を呑んだ。指先が震えている。 体に広がる熱が内側を満たして溢れだす]
…… す き ?
[声が震えて掠れる。けれど痞えはしなかった。 立花のくれた言葉が、すとんと胸に落ちて、満ちたものをさらに溢れさせる。あぁ、そうか、と。茫漠とした心地で思う]
すき、です。
[指先に触れる、彼女の薄い爪の先。 縋るように、指をその先へと伸ばす]
好きです。
[彼女を見つめて、くしゃり、不器用に笑った]
(120) heinrich 2013/09/09(Mon) 02時半頃
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お仕事を為さる手、です。
[畳み掛けるように繰り返す。
そうしないと、今にも否定されてしまいそうで。
彼の口から否定されてしまえば、私はもうそれ以上強く出ることなど出来ないと、知っておりましたから。如何か届きますように。 不思議な紋様の描かれた、綺麗な指先。 必死に、控え目に、触れる。ちゃんと、温かい。]
ど、どうか、嫌わないであげて、ください。
(121) mo_om 2013/09/09(Mon) 02時半頃
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[ポットを片手で押さえているから、必然的に触れる手はひとつ。
彼は、"同じだけを返せない"と口にしましたが。 この目で見たもの。 ゼリーを皆に振舞ったり、病沢を気に掛けてくれたり、他にも沢山、沢山。この目で見たものを、あたしは、信じるのです。指先の体温を、不器用に笑う表情を、信じるのです。]
はい。
[眉を下げたまま、口許が綻ぶ。 今出来る精一杯の笑みは、ジャニスと似て、不器用。]
はい。 ちゃんと、知っているのです。
[絡まる指、彼の方が年上で、背丈も異なって でもどこか縋るようで、自然と此方からも絡めて。 少し声が震えてしまったのは、大目に見て頂きたいのですが。]
(122) mo_om 2013/09/09(Mon) 03時頃
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―七か月後:翌年の春―
[熱い排気ガスを噴き出して、緑色のバスが去っていく。
わかば荘があるのはこの小高い丘の上。 見上げれば、視界一面が桃色に染まっていた]
桜並木か……
[カツリ――杖を着いて一歩目を踏み出した]
(@19) rusyi 2013/09/09(Mon) 03時頃
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[カツリ、カツリ]
(@20) rusyi 2013/09/09(Mon) 03時頃
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[心は逸るが歩く速度は遅かった]
待っていてくれよ、お姫様……
[額に汗が滲む。 七カ月という短期間で驚異的なリハとトレーニングを積んだ国谷は無理やり退院して懐かしい坂道を歩いている]
すぐに、行くよ――
[下は見ない。 上を見ていれば、わかば荘が見えてくるのだから**]
(@21) rusyi 2013/09/09(Mon) 03時頃
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は…の…
…んでいた…の…の…の…ち…り…の…
…びに…ろうとした…どもたちに…が…って…かせたのは…き…めにされた…の…
…かわいそう…
…
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[許されても、いいのだろうか。 嫌わずにいて、いいのだろうか。 ……触れても、いいのだろうか]
ありがとう……
[立花の指先が、自分の手に触れる。控えめに、けれど確かに。 不器用に見交わす笑みは温かく、絡まる指先に胸が震える]
(123) heinrich 2013/09/09(Mon) 03時半頃
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[彼女はいつもまっすぐだった。 不器用で、引っ込みがちで、でも一生懸命で。 よく笑ったり、驚いたりもして、力いっぱい生きているように見えた。 自分が捨ててきたものを、彼女はたくさん持っていた。
その彼女が、今、自分に微笑んでいて]
……そうか。そうですね。
[知っている。その言葉に頷いて。指絡めたまま、片手を引く。 その小さな体を腕の中に、抱きしめることは叶おうか]
好きです。 まどか。
[ポットを片手で持ったままだから、逃げにくいだろうことを知っていて。 耳元に囁くのは、少しずるかったかもしれない]
(124) heinrich 2013/09/09(Mon) 03時半頃
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[贅沢は言わない。 半分でも、三分の一でも、届きますように。
願って絡めた指先から、血が通う。 とくとくと伝わる鼓動は、鼠のそれのように速くて、戸惑うけれど。ありがとう、とそう返してくれたから、胸の奥に刺さった小骨がぽろりと取れて。目の前が水で煙ってしまいそう。]
い、いえ、あたしは。 なにも。
ジャニスさんがご自分をそう、お、仰るのは、厭なのでして。
[先ほどよりも更に、声が震えてしまった。 我慢しようとすると咽喉が痞える。本当に、情けない。]
(125) mo_om 2013/09/09(Mon) 03時半頃
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[ジャニスの不器用な笑顔が、涙で歪む。 両手が塞がっているので、肩に目を寄せ、ぐいぐい拭って。
よし 今度こそ
気合いを入れて、何時ものように、頬を締まり無く弛めた。]
だから、優しくされてしまうのです、よ 、 !?
[後半は、不意に手を引かれた所為で崩れた。 油断していた爪先が宙に浮くのに、あ、と咄嗟にポットを引き寄せて。割れてしまわないように、咄嗟の判断。―――とは言え、触れたのは床ではなくて、腕のなか。 耳元に注がれた声。指先から、足先から、染まる。赤く。 胸に刺さった傷跡から、溢れてしまいそう。]
そ、それは、
(126) mo_om 2013/09/09(Mon) 03時半頃
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− それから −
[先程起きた204号室での顛末に付いて。 不可思議な妖怪さんに付いて。 それぞれ誰かから何かしらの説明は受けただろう。
それを温かな珈琲と共に静かに飲み込んだ]
色々あるんですね。
[わかば荘はそう言う所なのだ。 それだけ。
ただ絵流という若者に付いては、 一応親御さんに連絡は必要では?と管理人に一言告げた だけで後は管理人と宝生に任せる事に。
そして少し多い人数でのお茶会は終了しただろうか]
(127) pannda 2013/09/09(Mon) 07時半頃
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[来る者がいれば、去る者がいる。
部屋に戻ると、見慣れない珈琲が置いてあった>>2:@4]
……国谷さんですかね。
[返ってきたカップに苦笑して。 その後、こっそり彼の為に珈琲を淹れておいたけれど、 もう彼が来る事は無かった]
国谷さん…また来ますかね。
[色々浮かんだり飛んだりする現象は収まった。 それを少し残念に思いながら、まだ彼が置いていった 珈琲豆は開いていない]
(128) pannda 2013/09/09(Mon) 07時半頃
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[来なくなった妖怪の代わりに、 しばしば顔を見せるようになったのは灰猫。
とても賢く、本や壁で爪とぎをする事は無かった。 静かに、だが気紛れに私の膝やベランダで休んで帰って行く。
少しずつ私の部屋に本と珈琲以外のものが増えていく]
ネーベルさん…今日はどうしたんですか?
[密かに「霧」と名付けた灰猫さんが来るのを待っていたある日。 何か様子が違う気がした]
(129) pannda 2013/09/09(Mon) 07時半頃
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ああ……病沢さん、今日ですね。
[彼がわかば荘から旅立つ日。 戻ってくるからと部屋はそのままらしい。 寂しいが彼が道を見つけたのだから誇らしい事だ]
ネーベルさん。 ちょっと彼に挨拶して来ますね。
[まだ病沢さんは残っていただろうか。 何処かで見付けたなら、私は彼に言わなければならない]
(130) pannda 2013/09/09(Mon) 07時半頃
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病沢さん。ジャニスさん。行ってらっしゃい。
[さよならではなく。 また気が向いたら帰ってらっしゃいと、 彼の彼と共に旅立つ若者にも声を掛けただろう**]
(131) pannda 2013/09/09(Mon) 08時頃
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― 一人と一匹 ―
[「ネコ」という名の代わりにもらった「ネーベル」という名。 初めて貰った時には「なーん」と訛りのある声で鳴いて、甘えて擦りよる程度のことはしてみせた。 「ネコ」……いや、ネーベルなりの感謝の現れだ。
かつて飼い主であった彼が部屋を離れる、それを知ってもネーベルの生活は普段と変わらない。 そして彼――病沢の生活も同様だ。持っていく物は多くない。本棚の本の内容は全て頭の中に入っているし、着るものも元々沢山は持っていない。 持っていく「何か」はとても多い。今はまだ言葉に出来ない何かの感情も、ここで得た沢山の優しさも胸の中に大事にしまわれてある。痛くて、寂しくて、悲しいけれど、温かい。 溶けるラムネの甘くて苦い味を、病沢はチュッパチャップスの味で誤魔化す。 ネーベルは口を開かない。病沢も自らの胸の内について語らない。今はまだその時ではないと、一人と一匹は心得ていた。
「なーん」とネーベルが鳴く。 病沢の細い手がその頭をくしゃりと撫でた。]
………じゃあ、ね。ばいばい。
[病沢の別れの言葉を聞くのは、ネーベルだけだ。]
(132) nico 2013/09/09(Mon) 12時頃
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― そして、病沢エリは消える ―
[病沢は退出について、自主的に口を開くことをしなかった。 聞かれれば応える。或いは管理人の口から告げられる。彼について残される情報はその程度だ。 >>130植頭が病沢と顔を合わせることはない。
病沢の部屋には、少し高級なキャットフードと、 猫に関する書籍がベッドの前にきちんと並べ置かれている。 本の上には「本は全て初見さんにあげてください」とメモ書きが置かれていた。「病沢エリ」が自らの痕跡としてそこに残したのは、それだけだ。 ここでだけ使われていた彼の名は、彼がここを去れば消える。死体の名は、正しく無に還る。
開いたままのベランダから、少し涼しい風が吹き込んでくる。]
………なーん。
[ひらり、と風にメモが煽られると共に、屋根の上でネーベルが鳴いた。]
(133) nico 2013/09/09(Mon) 12時頃
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― それから、いつか ―
[わかば荘がある限り、ネーベルはそこに居続ける。住人が変わろうと、歳を取ろうと、生きものとしての生が潰えようと。 206号室もまた同じ。 住人が変わろうと、他の何が変わろうと、変わることなくそこにいた誰かの痕跡を残し続けていた。 しかし、そこに住んでいた病沢という住人はもういない。
屋根の上でネーベルが鳴く。 その額を、白くて、少しだけ太くなった指が撫でた。 屋根の上を見る者があれば、そこにある人の姿を見ることができるだろう。 かつて屋根の上に上って外を見ることを習慣としていた病沢という青年が使っていた場所と同じ場所で、病沢とは少しだけ雰囲気の違う青年がネーベルと並んで外を眺めている。 随分伸びた長い髪は女性と見紛うかのようで、けれどその長髪の先には痛んだ灰色がある。 かつての病沢と同じ色であり、ネーベルの毛とお揃いの色だ。
206号室のネームプレートはいつの間にか、 「柳沢 明日人」という名に変わっている。 それが、いつかここに”帰って”くる、新たな住人の名だった。**]
(134) nico 2013/09/09(Mon) 12時半頃
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―夕暮れに―
[買い物から帰ってきた。 手の袋の一つは、卵。 今回使った数から彼の常備を考え、落とさせてしまった分も込みで3パック。 新居は卵が好きなんだろうかと思いながら、礼とともに]
うまかった。 また頼む。いつものやつとか。
[ちゃっかり次回への期待も添えた。
休みの楽しみのひとつだ。 拒否されない限り、甘えるのをやめるつもりはない。]
(135) kokoara 2013/09/09(Mon) 12時半頃
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[手の袋の一つは、生活雑貨。 歯ブラシだとか、絵流が持たない生活必需品が入っていた。 絵流が買い物に同行して、かつ衣類ももたなければ、数点追加で。]
捨て猫になる前のとこから、持ってこれないのか。
[言ったが、持ってこられるのかどうか。 あまり期待はしていない。 衣服のセンスはないから、選出は予算だけ伝えて当人に任せた。
ともあれ、そういった外出を済ませ、自室で寛いでいるところに、来客があった。]
(136) kokoara 2013/09/09(Mon) 12時半頃
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[>>95機嫌の良くなさそうな福原の登場に、男は小さく首をかしげた。 どうした、と聞けば告げられる要件に、ぱちぱちと瞬きが入る。]
………… ……
[どうかな、と、見上げられる視線。]
(137) kokoara 2013/09/09(Mon) 12時半頃
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…………ん。
世話に、なる。
[無意識に考えていたものを、放棄して。
伺う視線と重なった男は、どこかくすぐったそうで、嬉しそうと形容できるものだった。]
期待する。
(138) kokoara 2013/09/09(Mon) 12時半頃
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─談話室─
[談話室へ来るまで、裕はずっとにこにことしていた。
植頭が、自分の変身を──そう、 まさに変身と読んで差し支えないくらいの変化を 何でもないことのように言ってくれて 越智裕は越智裕だと肯定してくれたから 勇気を、出せた。
植頭と並んでにこにこと歩いて来た裕は、 にこにこしたまま、談話室の前で立ち止まった。
すー、はー、と気づかれない程度に深呼吸をする。 そうしないと、身体が竦んで ドアを開けられそうになかったから。]
(139) hana 2013/09/09(Mon) 14時頃
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[先に中に入ろうとはせず、 裕の一歩後ろで待っていてくれる植頭の息遣いが そっと裕の背を押してくれている。
思春期の、しかも負い目を持った少年は まだ自分一人の足で立つだけの決意も信念も足りていない。
この場所でなかったら。 この人達でなかったら。
きっとここまで来ることさえ出来なかった。
そう思うと、冷えかけた腹の底から 温かな熱が湧いてくるような気がして ぐっと奥歯を噛み締めて、ドアノブに手を掛けた。]
(140) hana 2013/09/09(Mon) 14時頃
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