64 さよならのひとつまえ
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―東寮・屋上(貯水槽の上)―
[東寮の屋上に通じるドアには大きな南京錠がかけてある。 しかしそれは幾分古びて錆びたもの、少し触れば鍵がなくとも開いてしまうことを寮生の何人が知るだろうか。 屋上の貯水槽がある一角によじ登り、コンクリートを敷布団に そして人質を枕がわりにして寝そべった。
陽も傾いていく空に一筋の飛行機雲。 腕を伸ばして見てもそれは遠く。 やはり指先を曲げて掴むような動作はできず。
フッと笑うこともないまま、無表情で空をただ見上げている。]
(444) 2014/03/24(Mon) 11時頃
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理髪師 ザックは、メモを貼った。
2014/03/24(Mon) 11時頃
…
…
…の…い…たちに…いつの…に…が…
…けといえば…は…の…けは…みましたか…
…んでいない…てしなく…な…がらせを…しておいてください…
…
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[十年後よりも確実に先に来るであろう、小鳥谷からの地味な嫌がらせ。 その予告に顔文字オンリーの本文を送りつけていれば、屋上の扉が開く音がした。 体を少しだけ起こせば、下に見えるのは特徴的な赤い色。 染色か地毛か、と。 あまりにも鮮やかなその色に初めて声をかけたときそんな会話が始まりだった事を思い出した。]
………悩み事かね、青少年よ?
[身を寝転がせば、下からこちらが見えることはない。 声で身元はばれるだろうが、何となく小熊に向けて声をかけた。]
(459) 2014/03/24(Mon) 13時頃
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ひもいや
…しめさか…
…さっきはごめん…
…
いきなりごめんな…ちょっと…かける…
みつけてくれたのが…で…かったかも…
このわびはかならず…
いりえ
…しめさか
…ずかしい
…
さっきはありがとう…
この…びは…ずするから…
ちなみにこの…って…す…
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ノンノン。 私はさっちゃんなどではない。 この屋上に住まう崇高な精霊・ザックである。
[初めて出会ったときと変わらぬ声は芝居じみた調子を作った。 からかい半分、残りの半分は友に寄せる気遣いだ。]
今私は、貴様の心に直接語りかけている。 ちなみに言うが、そのさっちゃんとかいう猿顔の某大怪怪盗に似た生徒は 悩みらしき悩みなど持ち合わせておらぬぞよ。
[自分のことは棚にあげて戸棚を閉めて鍵をかけてその鍵を窓からすてておくとして、だ。]
屋上に来るなぞ大抵は、不良が煙草を吸うかエロ本を読むか。 青少年が悩んでおるかの三つじゃ。
(470) 2014/03/24(Mon) 13時半頃
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ザックは、どうやら偏見まみれの精霊のようだ。
2014/03/24(Mon) 13時半頃
…
…わ…い
さくらもちが…べたいです
さくらもち
…
…
…
…がんばってもらう
さくらもちは…にお…いしました
さくらもち…
…
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そうであろう、崇高なる精霊だからな。 崇めよ、そして讃えよ。
[信じているのか乗ってくれているだけなのか。 いずれにしてもこの小熊の、こういった素直で気のいい部分は好きだ。 自分に悩みがないと知って、ほっと頷いてしまうようないいやつだ。]
やつのことはよく知っておる。 だから声も似せてあるのじゃ。
……そうじゃのお。 生徒は腐るほど見てきた、ここに居りたいというやつも。 ここから逃げ出したいというやつも、色々おったのお。
なんじゃ、貴様はここから居なくなりたくないのか?
[精霊は生身の時と変わらず、ずけずけと聞かれたくない部分に触れるだろう。]
(479) 2014/03/24(Mon) 14時頃
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おお、それは好物じゃ!!! ………あ、あの猿顔のな!!!!?
[精霊は少し狼狽えた、がツナマヨおにぎりを置いていくようにと囁いた。]
やつが来はじめたのは三年に上がった頃からじゃったかのう? よく物思いに耽っておったわ。
ぷち家出とな…貴様、家の者と仲違いでもしておるのか?
[初耳の事柄には素直に驚きを口にした。 山本理髪店は仲のいい家族であった、誰かが自営業として円満なのだろうと予測を立てるほどに。]
今に、居りたいと? 確かに時を操る事の出来る精霊もおるが、貴様ら人間はそのような力などなかろうに? 時は早くも遅くも過ぎ行くものじゃろう。
未来が怖いか? それとも、今が恋しいか?
(483) 2014/03/24(Mon) 14時半頃
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後で賞味しよう、おいておくがいい。
[腹の音が鳴ったのは気のせいだ。]
やつは捻くれておるからの。 一人になりたくもないのに、一人になりに来とったわ。 悩みがあっても、口にせん。
ほう、送り出されておるのなら信用されとるんじゃのお? 親は大事にせんとな。
[仲はいい、円満に、家を継いで、当たり前のように。 違う未来を描き始めたことを言えない間柄は、本当に仲がいいと言えるんだろうか。 精霊のふりをしながらも、言葉は返し刃に変わる。]
(488) 2014/03/24(Mon) 15時頃
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ふむ。
[精霊は少しの間黙りこくった。 それから、漸く口を開く。]
貴様はその、まーちゃんとやらに捨てられた 若しくは捨てられるような気がしておるのじゃろう。 寂しいんじゃな。
[そこにどんな形の感情があるのかまではわからない。 けれど他とは違う何かがあるのだろうと、そう思う。 朔太郎に、触れられぬ髪があるように。]
……――恋しい故に。
[それはぽつりと、風に乗る。 どれにも届けぬ囁きがあれば、こうして人へと届ける囁きもある。 そんな悪戯すぎる、春の風に。]
(489) 2014/03/24(Mon) 15時頃
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猿を餌付けとは、貴様なかなか…。
[噴きかける笑いをグッとこらえ、上で寝転がる体は肩を揺らした。]
大学とやらの未来を見据えてのことじゃろう。 高笑いも貴様のケツに火をつけるためかもしれぬ。
[家族思いなのだと、語尾が濁る言葉でわかる。 反対に自分はどうだろう。 何もかも捨てようとしている自分は。
続いた言葉と床を叩きつけるような音には、見えない場所で目を丸くした。 単純に音に驚いたのもある。 それから、傷つけてしまったかと思ったせいもあった。]
(492) 2014/03/24(Mon) 16時半頃
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…
…こら
…あれはやめろ…また…ころすきか
ついしん
あるみさっし…かとおもった
かたいぞ…って…しんぱいした
…
…
…
…るべし…
…おま
おまえ…なぜそれを…おそろしいこ…
…
…
…
…えすぱ…すすむ
…あれ…おまもりにしてた
なくしちった…けど
だからひよこ…うれしかった
さんきゅ
…
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それでは恋しいと言うとるようなもんじゃぞ?
残念じゃのお。 朔太郎は恋しいと言うておったぞ? 捨てられたくないと言うておったぞ? 捨てたくはないとも、言うておったぞ?
[けれど棄てていくという矛盾を抱えて、もう何ヵ月たったのか。]
そういう思いとはまた、違うのじゃろうか? 床を叩くほど、否定したくなるような強い思いは。 すまんのお、精霊にはよくわからんのじゃ。
[強い感情など抱いたことがない。 いや、種はあっても芽吹いていない。 蕾があっても咲いていない。 自覚がない、それだけの話。]
(495) 2014/03/24(Mon) 16時半頃
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……――ただ。
今のままじゃと、床を殴り付けたその手も。 すっきり晴れぬままの気持ちも。 変わることなくそのままなんじゃろうのお。
[時間が過ぎて、未来へ辿り着いても。]
それはなんだか、哀しいのお。
[精霊の声は少し、愁いを帯びた**]
(496) 2014/03/24(Mon) 16時半頃
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理髪師 ザックは、メモを貼った。
2014/03/24(Mon) 16時半頃
…さくたろ…
…ごめんな…
…がないから…とかいえば…お…しが…しまくるのがわかってたので…それだけ…
…
…
…
…
…かった…か…する
ところでどれくらいの…きさまで…なんだ…
…
…わらず…のみ…
理髪師 ザックは、メモを貼った。
2014/03/24(Mon) 20時半頃
…
…すまん
うん…わけがわからん
…の…ならもっとちゃんと…づけくらいするはずだし
だからこんな…いわせるのは…くらいだし
さっきの…がそんな…ついたんならやめるし
わからないのに…られても…ち…いし…
ていうかそんなに…づけたくないなら…で…きついても
もう…らないからな…
…
…
そういうことは…る…に…えって…
…められるような…い…の…とかないし
…とか…じゃないから…
…
たまちゃん
…ぷりんげっと…
…
…ってのあったから…ってみた…
あと…どでかぷりんの…てたから…ったよ…
どっちにするか…えといて…
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[バカな、恋なんか、友達のままで、サヨナラ出来れば。 繰り返し叫ばれる言葉はこんがらがった糸のようだった。 支離滅裂で、打ち付けるような声で、けれどそれはまっすぐで。 だから、精霊のふりをしているのもなんだか違うと。]
……、…。
[恋しいと言う話が、恋という話に変わっているようだった。 つまりは、男である小熊は男である入江に、恋をしているのだろう。 そういうこと、なのだろう。]
バカなこと、あるわけねぇべ。
[バカだなんて、気持ち悪いだなんて、どうして思えないんだろう。]
(542) 2014/03/24(Mon) 21時頃
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