[この朝のニュースは、もちろんほとんどの崇神市の人々にとって少し寂れてはいるけれど平穏な町の日常をかき回すものだったし、付近の人々にとっては殊にそうだった。
市内の小中学校では一斉に部活を中止して早めに集団下校がされたし、崇神署には市民からの不安による問い合わせが殺到して、窓口はその電話対応にしばらく追われた。
けれど、本当に不気味さを感じていたのは当の警察官達だったに違いない。
というのは、崇神市では、今年に入ってから行方不明者や、市内の病院に意識不明の重体で緊急搬送される人間が例年の5倍近くにも上っていたからだった。
それに発見された死体はと言えば、後になって市内で本屋を営む我妻峰人(29歳・独身)という男性だと判明したのだが、ちょっと見たくらいでは判別ができないほどに顔が潰されており、胴体にもおびただしい負傷の痕が見られたからだった。
(#3) 2015/02/12(Thu) 00時頃