【独】 水商売 ローズマリー

[ひらひらと薄紅の花が散る中。
それぞれの来た方向へと歩く姿を見送って。

思い出したように、ふふ、と小さく笑みを浮かべる。
白衣の襟に掠めてつけたルージュと、こっそり相手の白衣のポケットに忍ばせた、店の名前の入った少し古めかしいマッチ箱。]

おばあちゃんになる前に見つけてね。

[微笑みながら、いつものようにそっと窓辺に肘をついて外を見た。

一年後、十年後、百年後――]


あら、私って思ったよりも気が長いのかしら？

[彼の姿が見えるまで、ずっと待ち続けるつもりの自分に気がついて、可笑しそうに笑った。

想像は容易い。
蒸留酒と、料理を用意して、ずっと窓の外を眺める。
そんな自分の姿が、なぜか幸せな空気とともに脳裏に浮かんだ。*]

(-488) 唐花 2014/03/26(Wed) 23時頃