[>>-329髪を撫でる手にほんの僅か…
その指の流れにそれまでのぽんぽんと撫でる時とは違う気配が混ざったように感じて、一瞬。
一瞬――心臓が跳ねた]
あ。…ええ、そうですね。
大人の女性…ですか。
エリちゃんがお嫁に行く時が来る前に、私自身のことを考えなきゃですね。その頃の自分のことなんてまるで考えてませんでした。
私のことも、人にはやれないと言ってくださりますか?
[『もらってくれますか?』とは言わない。言えない。
口に出してしまったら、ほんのりと安らぐこの空気が壊れてしまうかもしれない。
まだ、まだ。きっとまだ先の話だ。
もしかしたら、気配に怯んでしまったただの臆病なのかもしれないけれど。
言外の意味を気づかれていてもいい。気づかれていなくてもいい。その気配を確かめるよりも、ほんのりとしたままで宝箱にしまうことを選んだ]
(-354) 詩織 2014/10/08(Wed) 09時頃