─中庭─
[担いだ大小二つのバケツを、利政が運んでくれたらしきブルーシートを見つけて、そこに置く。それなりの重しになるようにと、ついでに持って来た2脚の組み立て椅子と共に。
置いて手ぶらになればまだ五分咲きにも届かない桜を見上げる。
花見には早いかもしれない、明日までにどれだけ綻ぶのだろうか、陽向の桜は。日陰の桜はいつ咲くのだろうか。ああ、こういう思考に跳ぶのが厭だな、と思う。こういうセンチメンタルは柄じゃないだろ、と朔太郎との会話を思い出す。
棄てるなよ、と言われたけれど]
どーすんだよ、ほんとに、捨てんじゃねぇのかよ
俺様のばーかばーか
あー……
[>>342談話室で去り際の利政の言葉を思い返す。
助けて欲しいとき、とは、どういうときなのだろう。人に頼って解決するならまだしも、自分の心の整理なんて、誰に打ち明けられるものでもない、家族にさえ告げられない。
くしゃりと髪に手を持ってゆき、目元を覆う。
そっと。そっと、必死に抑え込んできた心の声を、風に流すように零す]
(378) 2014/03/24(Mon) 01時頃