─花壇─
[>>282食堂へ向かう利政の背中を見送って、自分は自室ではなく、裏の花壇>>65へと。部屋を出たあとの那由多が手を入れたのだろう、土は湿り、葉は瑞々しく陽の光を浴びている。
花壇の前にしゃがんで、ひとつ、溜息を零す。
園芸部に所属はしていたが、才能がなさ過ぎて、活動らしい活動はしていない。幽霊部員ではなかったが、土おこしや草取りくらいしか手を出していない。
花壇の花も──あれはパンジーだったと記憶している──枯らしてしまったのだ。原因は、多分、水のやりすぎなんだろう。自覚はないけれど。
目の前のチューリップはけなげに蕾を付けている。咲くために色んなものを蓄えている。
視線を横へ向ければ、フェンスに沿って植えられた桜が目に留まる。枝にはまだ蕾と呼べるものがあるような、ないような。開花にはまだ少し時間が必要なのだろう。
温かい日が続けばすぐかも知れないけれど。今は、まだ。
─────咲く気配もない]
(339) 2014/03/22(Sat) 14時頃