―夕方・自習室にて―
[臨時床屋に滑り込んだ時には、保科の髪が、さくりさくりと散っている頃だったか。
その様子を、保元が撮っているのが少し意外だった。
いつもカメラを構えていた姿が、見当たらない。
明智は、まだ寮にいる。はずだけど。
明日、自分と保科が去り。明後日も、明々後日も、誰かが去っていく。
その人がしていたことを、此処がからっぽになるまで、誰かが継いでいくのか。
卒業式までに何度の目にしたはずの引き継ぎより、もっとささやかなものなのに。
じりじりと焦燥感が煽られ、こみ上げてくる寂しさに。
もっと後のほうまで手続きが長引いていたら、……]
…あ、あー……りす、さん?
[物思いに沈みそうになった頭に、乱暴な扉の開放音と共に飛び込んできた声>>263。
ぽかんと呆気にとられた後に訪れた笑いの発作を、頑張ってこらえた。
たぶん、背中がぷるぷる震えてたけど]
(317) 2014/03/31(Mon) 00時頃