[ 福原君>>285のの望む物語を聞いて、私は思考の海に沈む。
ハムレット――父の死をきっかけに復讐を誓った青年とそれを取り囲む人々の、狂気と権謀に満ちた――確か、そのような話だったと記憶している。
普段私が扱っている文学とはまた趣が異なり、戯曲と言う形で綴られたそれらは、台詞ひとつひとつが生き物のようだ。
しかし今必要なのは私の批評ではない。彼女が求めるそれを、私が与えることができるかどうかだ。]
ああ、それなら持っているよ。
初心者の私にも分かりやすいよう、原文と訳文が交互に乗っているものがね。
[ これは是と捉えてもいいのだろうか。まあ違ったところで然したる弊害がある訳ではない。私は満足そうに頷いて、談話室を後にしようと屈めた腰を元に戻す。
叶うなら頭のひとつでも撫でたいところだったが、学生に「セクハラ!」と言われたことを思い出し自重した。何とも不便な世の中になったものだ。私は心の内でため息をひとつだけ落として、眼鏡越しに目元を緩めた。]
(294) 2013/09/02(Mon) 18時半頃