―芸術劇場跡・ライジと―
[花壇を見ると、妖精のために置いたビスケットは無くなっていた。あの妖精も、同族だったのなら、もっと話しておけば良かったと、鳥と共に切り離した筈の後悔やら無念さやらが甦る。うっかり、また会いたいと思ってしまえば、不様に生にしがみつく自分の未来が脳裏を過った。
着流し男の問いは続く>>267]
普通にみれば僕は恵まれて居たのかも知れない、
親をなくしはしたけど、その悲壮感も記憶には無い。
育ててくれたたあの人には…
[申し訳ないと思っている、と続けようとしてそこで言葉が詰まった。
彼女は我が子同然の自分が突然姿を消して、どうしているだろう。悲しんでいるだろうか、泣いているのではないだろうか。全てを置いてただ死ぬ事だけに囚われていた。昨日の茶会の拍手や、紳士の気遣いや、紅茶のかおりや、そんなものが一気に溢れだす。]
……早く、早く殺してください!
もっと生きていたいなんて、思いたくないんだ!!
[襲いかかる未練に半ば狂ったように着流し男に掴みかかり懇願する]
(283) 波平 2014/08/02(Sat) 02時半頃