―芸術劇場跡―
[相棒を放った鳥男は、独りになったが独りではないという現状に陶酔していた。茶会の後、同族だと示してくれたライジに声を掛け>>233]
どんなに身体を切り刻んでも、毒を沢山飲んでも死ねない。
僕は僕を殺したい。
教えて欲しい、どうすれば死ねるのか。
[その問いに、ライジは一瞬気圧されたような表情を見せたが、特に理由を問い詰めるでもなく。そうして翌日、己を伴って歩く着流し男は鳥を放った独りぼっちのただの元道化に、何故死にたいのかを初めて尋ねた>>234]
理由なんて、そんな大袈裟なものじゃないけど、
僕は僕じゃない何かになりたいんです。
死ぬ以外に、その方法が思いつかなくて。
[ライジの着流しの裾が揺れるのを見ながら、そんなふうに答えた。改めて言葉にすると、本当につまらないなと、もっと心の奥には言葉にすることなどとうてい出来ないような複雑な物が絡み合っているというのに。しかし、元道化はその気持ちを吐露することはなく、それすら自分の一部として消滅したいと思った。]
(264) 波平 2014/08/02(Sat) 01時半頃