― 204号室 ―
[大丈夫、だなんて根拠のない薄っぺらな言葉だ。しかし、それでも真っ直ぐと立つために自分を奮い立たせるぐらいの用は果たせる。
>>#2嘆く声から耳を塞がずに、悲しみと怒りを受け止める。精神力が削られていく音が聞こえるような心地がする。
それでも動かずに、白く細い指先で靄の曖昧な輪郭をなぞる。
悲しい、寂しい、苦しい、辛い、どれも当たり前に存在しているもので、それを無くすなんてことは出来ない。
生きている間の恨み辛みを死んでからも引き摺る辛さはきっと、彼には想像もつかないものだ。その全てを和らげ、癒すなんてことは出来ないけれど。]
…………ん、 大丈夫。
辛くて、眠れない なら、子守唄を 歌うよ。
寂しくて苦しい なら、 傍に、居るから。
だから、 大丈夫、だよ。
―――――― 母さん。
[この声が、眠りを導く一時の安らぎになれば良い。
ほんの僅か、口角が持ち上がる。両手を伸ばし、黒い靄の輪郭を引き寄せて頬を寄せた。
自分が母親に出来なかったことを、そして「彼女」が子供に出来なかったことを、分かち合うように。**]
(242) 2013/09/06(Fri) 11時半頃