[結局彼はネコの姿を追うことを諦めて、四つん這いになりかかったところから三角座りへと姿勢を戻した。
きちんと揃えられた両膝の上にちょこんと顎を置き、目を細めても遠くが見えないことをやはり不可解に思いながら、少しだけ首を傾がせる。
丁度その頃。
>>197 201号室に降り立った灰色の「ネコ」もまた、差し出された人差し指を前に首を傾げていた。
それからアイスブルーの目を瞬かせ、ふわふわの毛を揺らしながら指の先に近づいて、額を擦り寄せる。
飼い主である彼とは対象的に「ネコ」は大変に人懐こいのだ。
それを「ネコ」自身も自らのウリであると認識しているかのように、指先に擦りよったまま上目遣いで植頭を見つめる。
飼い主の傍を離れた「ネコ」は、時折このように人懐こさを前面に押し出してわかば荘の中を散歩する。自分の姿を見て恐れる者があっても、我関せずだ。]
(205) 2013/09/01(Sun) 23時半頃