[家に帰るのは憂鬱だった。真弓の父は決して悪い人間ではない。努力家には違いないし、税金も人の何倍かはしっかり払っている。花河の家の相続争いに首を突っ込んだ話も聞いていたし、その時の顛末は決して悪いものではないと思った。
しかし、高屋敷氏は長く田舎に住み続けた人間の性か、少し頑迷で考え方に旧態なところがあったし、いささか自慢話が多いのもいただけなかった。何より、真弓に対して少々過保護というか、束縛的な部分が多いのはどうしても忌まわしい事だった。
市役所への入庁にあたっても完全な希望だったのだが、周りからいろいろと影で言われたりもしたらしい。
とかく、父という存在は真弓にとって目の上の瘤だった。最近は仕事が終わると自室にこもり切りがちだったのもそのせいかもしれない。]
…そう言えばもう満月頃ね。
[自宅の車庫に車を止めながら空を見上げる。少し、赤く見える月の気がした。]
(200) 2015/02/13(Fri) 22時半頃