[母を乗せたことに茶化しはなかった。
それには少し笑んで。
利一の口数が少なくなれば、無理して喋らなくていいようにラジオをつける。
高速道路は空色から、逢魔が時へ。
夕闇は赤から深い群青へ、その途中にある白の空はいつも本当に美しいと思いながら。
遠くの鉄塔、山並み、それらが、鮮やかな色合いからグレイッシュトーンにおち、少しだけ冷えてきた空気とともに、やがて影となる。
一つトンネルをくぐると、オレンジの世界。
トンネルの天井に回る羽をいくつかすこし数えながら、抜けると、道路の両側の眼下はすっかり夜だった。]
――……花火は、まだやってなかったな。
すまん。帰ったらするよ。
[花火のことを指摘されて、どこに置いたっけ、と考えながら。煙草を突っ込まれると、小さく笑いを漏らした。]
(155) nostal-GB 2014/04/06(Sun) 17時半頃