……………。
[貰った棒の飴の先端を観察するように天井の方角へ翳してみたり、鼻先へと運んでみたり。極めて平均的に、常識的に観察している様子が福原の目にどう映るのかも意識しない。
泣き濡れた頬に落ちる雫の量は随分と減った。表情は何一つ変わらないまま淡々と涙を零すのは、不全であるが故の不感症にも近い。
彼自身が意識できる範疇に彼の大事なものは存在しないけれど、それは彼に大事なものが存在しないといういうこととイコールにはならない。
彼の視線はいつだって明るい色で満ちている。そのように彼は出来ている。彼がそれを望んだかどうかは、今語られる必要のないことだけれど。]
………………ん、
[肯定とも否定とも異なる、小さな声。
「飼う」という言葉に反応したのだとはやはり分かり辛いだろう。視線を福原へと向けて、ぐにゃりと首を傾げた。]
(154) 2013/09/04(Wed) 00時半頃