─ 牛楽亭 ─
あー、丞ー、腹減ったなー!
[残された時間、辛気くさく過ごすよりは、少しでも楽しい思い出を増やしたかった。
だから店に着いた時は、少し大袈裟なくらいの笑顔を十文字に向けた。
衝立の奥の、二人掛けのテーブル席へ案内されて、向かい合うように腰を下ろす。
先程見たポスターのアニメのコースターが付くセットがあるというので、それを選んだ。]
……こういうとこ、二人で来るのって、そういえば初めてだよな。
[練習試合に出た後など、部員仲間全員だったり、数人だったりで食事に出たことはよくあった。
特にエースの方長や、一番バッターの忍足とは多かったか。
けれど、それらとは全然違う。
肉の皿が来るまでの間、テーブルに肩肘を乗せて頬杖をつき、じっと、目前の十文字だけを見つめていた。]
(129) nordwolf 2014/04/06(Sun) 13時半頃