>>112,>>113便乗
(毎日、誰かが死んでいく。そんな中でわたしが授かったのは、無実の人を救うための力じゃ、なかった)
[ふ、と笑みの気配を感じて振り向くと、見慣れた黒髪が目に入る。いつもと同じ、彼の穏やかな微笑み――そこにほんの少しの陰りを感じて、眉根を寄せた。]
……オスカー? どうしたの、大丈夫……?
(ううん……大丈夫なわけないよ、ね。ごめんね、頼ってばっかりで。……役に立てて、なくて)
[大丈夫だよ、と答える彼が、瞳に複雑な色を浮かべるようになったのはいつからだった? 少し冷たい彼の頬に、そっと手を伸ばし、額を合わせる。囁いた言葉は、きっと彼には唐突に思えたろう。]
……だいじょうぶ、だよ。
[ぎゅっと首にしがみつく。同じ形で生まれた、愛しい半身。だけど、同じ人には、到底なり得ないのだ。
何しろ、おうむ返しの言葉にきょとんと目を瞬く彼が、]
(オスカーは、わたしが守るから。
……力があってよかった。この力が、きっと、わたしをあなたの盾にする)
[――そんなこと望んでないなんて、知りもしないのだから。]
(128) redrum 2013/06/09(Sun) 00時半頃