[あの時、何か会話を続けることができたのならまた何か変わったのかもしれない。こんな気持ちにまではならなかったのかもしれない。接点はそこで途切れて、けれどもその日からそいつへの見方が変わった。
真面目そうに見えて、けれどもそれだけではない。不思議な奴、本当はどんな奴なんだ?自然とその姿を追いかけ始めたのは、きっとその辺りからで]
(……あいつワーリーより見つけやすいんじゃねえの……。)
[あまりに見つけやすいその姿が赤い縦縞模様の派手なシャツを着て絵本の中で隠れ回っている主人公を彷彿とさせて、その姿を見つける度に楽しい気分になった。
扉をくぐる時に天井を気にする仕草が自分の思っているタイミングと嵌ったりするのが面白くて仕方なかった。
たまに覗いた自習室でノートに何かを描いている姿を見つけると、声には出さずにRPGで宝箱を見つけた時の効果音を口ずさんで喜んだ。
ちらっと絵が見えて、それが少しずつ上達していく様子がわかると誰も知らない連載漫画を読んでいる気分になれてすごく嬉しかった。
「余所見しないで。」
付き合っていた彼女達からそう言われる頻度が多くなったのはその頃からで。*]
(113) 2014/03/27(Thu) 21時頃