[そんな一面を垣間見たその後。一度だけ、一度だけまともに向かい合って話す機会があった。向かい合って、というのは少しおかしい。正確には横に並んだ。あのでかい体に肩を貸す形で。>>95]
(……重い。)
[貧血で力の入らない巨体は想像以上に重くって、でも潰されるのだけは癪で必死に踏ん張って歩いている最中、そいつはずっとぶつぶつと何かを呟いている。深夜アニメ、その言葉がそいつの口から出てくるのが意外で、けれども知っている。こいつは絵を描くんだ。]
(やっぱりアニメとか見るんだ…!)
[またひとつわかったお堅い見た目の男の意外な一面に頭がいっぱいになっていたから、向けられた質問の内容が即座にわからなくて困ったように眉を下げたまま緩く首を振る。]
……え?何…?
………わり、よくわかんね。
[オタクとの会話を拒絶するリア充のようにも映ってしまったかもしれない。その後もそいつは気を使って話し続けてくれたけれども、うまく会話を合わせられないまま終わってしまった。]
(110) 2014/03/27(Thu) 21時頃