[夢と現の狭間。完全に目覚める前のまどろみの中で、巡理は赤眼の黒犬と対峙していた。
前に感じた恐ろしさは、今は無くて。
自らのシャドウを従えた巡理に対して、変質したコタロウは、牙をむかない。
理屈じゃない。繋がってる心で分かる。]
コタロウ。もう……死んどるん?
それでも、あたしを守ってくれとったん?
[今なら分かる。満月の夜に、巡理を導いたのはコタロウだ。
でなければ、あんな時間に巡理は外を出歩かない。コタロウを失った不安が無ければ、自らの影を受け入れることは難しかっただろう。]
ありがとっ……あたし、もう、勝手に不安になんかならん。
聞きたくないからって、逃げたりせんよ。
[それでもきっと。何もかも上手くはいかないだろうけれど。
黒い犬は光に包まれて姿を変える。あまりのまぶしさに目を瞑り―
頬に涙が伝うのを感じながら目を開く。
目の前にくるくると回るカードが一枚。
書を持つ女性の姿が描かれていた。*]
(90) 2015/02/18(Wed) 21時頃