[夢を、見ていた。半年ほど前の出来事。
「コロ?」
散歩の途中、コタロウが違う名を呼んだ男性の元へと走り出す。リードを持った手が引かれるままに共に軽く走れば、男性はしゃがんでコタロウを撫で回す。
「あの、コタロウのお友達ですか?」
恐る恐る問いかければ、その人はこちらを見て笑った。
それが、本屋の店主ではなく、我妻峰人という個人を認識した、最初の出来事だ。
家か散歩中かしか他の人と出会わないはずのコタロウを別の名前で呼び、親しいなんて、変だなと思っていたけれど。彼は言っていた。
「彼とは、仲間なんだ」
その言葉の意味は。
夢が変わる。次に見えたのは、どこかの山の中。
シャドウと戦う、我妻とコタロウと、他にもう一人の姿。
「いけっコタロウ!ここは食い止める!」
傷を負ったコタロウが走り出す。助けを呼ぶために。それまで生きてて欲しい。
ああ、だけど。
何かに持ち上げられて。
そして、すべては黒に塗りつぶされる――]
(89) 2015/02/18(Wed) 21時頃