― 屋敷・奥の間 ―
[成卜を降ろして入った奥の間。少女が振り返り、その表情はとてもとても不機嫌そうだということは、感情の機微に疎い辰次でもよくわかるものだった。
「かいらしい嬢ちゃん」とは称したものの、何かおかしいことにも気づく。「最近の若いもん」(>>68)とか言われているし、成卜は成卜で「ぶれいじゃぞ」と諌めてくる(>>69)。
「夕顔ならここにおるが」……つまりは、そういうことなんだろう、と。
ようやく気付き、表情を真剣なものに変えて。]
……すまねえことをした。それじゃあ、嬢ちゃん……もとい、あなたが、“ゆうがお”様に相違ねえってわけやな。
[荷物を下ろし、真剣な表情で深々と一礼。夕顔と話せる位置に陣取って正座し]
おいらは辰次、長屋に住んでるケチな便利屋でさあ。……気を悪くしたらすまねえんだが、礼儀はおふくろの腹ン中に置いてきた。
んでいきなり本題なんだが……
ここら一体の妖の偉いさんなら当然ご存じたぁ思うが、つくも神社の桜がちっとも花を付けてくれねえ。噂じゃあ、祠を建てられんの嫌がってへそ曲げてるって言うじゃねえか。
(73) 2014/05/27(Tue) 23時半頃