――大テント・ステージ裏――
[顔の見えない、無数の人々の拍手。
歓迎と絶賛のコールを背にして、ザックが舞台袖へと現れる>>41。
掲げられた手に、こちらも片手を返して……不意にぽかんと開いた空白の時間にのまれたせいか、本来かけるべき労いの言葉も言いそびれてしまった。
やがて、中途半端な感じで上がった口角と一緒に漏れた笑いとエール>>43]
……まかせとき。
感涙させてそのメイク、ぐっちゃぐっちゃにさせてやっから。
[そのまま離れていくザックの背。
引き留めることはしないけど、かけ忘れた労いのかわりに。
いたずら心も込めた、ちょっとした問いかけを投げかける]
ザックさー。
……団長、なんか言ってたー?
[自分のかわりに先陣を切った、ホワイトフェイスの男に向けて、と。
こうして、出番をまつ人形は、その場を離れていく男を見送ったのだった*]
(58) 2014/10/12(Sun) 13時半頃