【人】 酒屋 ゴドウィン

さて、どこまで話したかな。

さらに翌日、店に街の警官がやってきた。
この男に見覚えはないか、と言いながら一枚の写真を差し出す。眼鏡をかけた臆病そうな男。そう、あの宝籤を持っていった男だった。
「人の宝籤を換金しようとした野郎だ、しかも一億ゴドウィンのさ。怪しいと思った銀行員が、警察に通報したんだ。それでこの男を締め上げたら、この店で拾ったなんて言いやがってよ」
警官に冷えたビールを差し出しながら、店主は答えた。
「うーん、来たような気もするが……。しかしそういえば、一億ゴドウィンの宝籤を当てたのに、火事で失ってしまった男なら数日前に来たよ。燃えた宝籤が残っているとは思えないが、一億ゴドウィンという大金だ、妙な一致が気になるね。その男の話は村中の噂になっている。どこでも聞けるだろうさ」
「まさか……。何はともあれ、その男に自殺でもされたら分かる話が分からなくなっちまう。急いで探すか」
警官は慌てて、出て行った。
店主は警官の質問には答えなかったが、嘘は言わなかった。

つづく。

(55) 2014/10/16(Thu) 17時半頃