[ 病沢君>>42の言葉に、一瞬彼を撫でていた手が止まる。それはとても細やかで、けれど贅沢な願い。その望みは決して永遠ではないことに、彼は気づいているだろうか。若さ故の純粋さが生む痛みに懐かしさが込み上げて、私は笑みを深める。再び髪を梳きながら、ゆっくりと口を開いた。]
ならば、今を大切にしなさい。
積み上げる思い出が、一枚の頁になるように。
[ 説教臭かっただろうか。まあいい。年齢のせいにしてしまおう。病沢君が何やらごそごそと作業をしている姿に目を留め、次いで聞こえてきた軽やかな音に瞬きをする。]
嗚呼、夏の音だね。
透き通っていて、とても綺麗だ。
[ まるで君の心のようだとは、さすがに胸の内に留めておくことにした。水晶のような彼の心に、わかば荘の思い出が染み渡ることを祈って、私はただ静かに珈琲を飲む。先程よりずっと甘く感じたのは、きっと彼のおかげだ。]
(44) toimoi 2013/09/08(Sun) 02時頃