[小さな喉を鳴らして、同族の血液を飲み干していく。
手のひらほどの大きさの妖精の牙など、人の子には蚊に刺された程度の痛みしか与えない。
しかも相手が同族とあれば、傷はすぐに塞がってしまうから、貪るのも中々に難儀であった。
それでも。
飢えを訴えていた腹が少しばかり膨れた頃、妖精の瞳は満足そうに煌々と赤に満ちる]
……ふう、ご馳走さん。
[ぺろ、と亀吉の傷口をひと舐めし、口角を拭った。
ふわりと闇へ翅を瞬かせたその時、意識を失ったままの男の足許、切れている鼻緒に気づき。
亀吉の着物の裾を掴み、小さな牙を立てて引き千切った。
合わせや袖口へ頭を突っ込み銭を探し一枚取り出して、切れ端を通して足許へ。
切れ端で鼻緒を直し、我ながら上手く出来たとばかりケタケタと笑い声を響かせ、
その場へ崩れる青年を残して、飛び去った。]
(44) 2014/07/26(Sat) 13時頃