[ 宝生君>>5の口から出た「ブーム」という言葉に、成程最近の若者は不思議な考えをすると、件の青年に対する認識を改めることにした。]
ふむ、そうか。勘違いだったようですまなかったね。
君には他の趣味がある、それで十分と言ったところか。
[ 去って行く宝生君>>6の姿を見送りながら、私は納得した旨を言葉に乗せた。そして件のペット君へ視線を向けると、自然と眼鏡の奥の目元が緩む。]
宝生君のところに世話になるんだね。
私は初見という。202号室に住んでいるんだ。よろしく頼むよ。
[ 平凡な私は自己紹介と言うものがあまり得意ではない。毎年新年度になると新入生の授業で自己紹介などする先生もいるが、私はそのようなことはしない。故に謎の多い先生などと言われたこともあったが、謎にするようなこともない、ただのおじさんである。芥川の『人間失格』のような人生でも歩めば、少しは話の種でも増えるだろうか。いやしかし、私にはああいう波乱万丈な人生は似合わない気もする。
人生のほろ苦さによく似た珈琲を口に含み、わかば荘の面々が勢ぞろいした談話室をぼんやりと見つめた。]
(14) toimoi 2013/09/07(Sat) 15時半頃