[読者諸君にこの光景を見せられないことが、筆者は残念でならない。
船体に書かれた、《激矛沈々丸》の男らし過ぎる筆の運び具合。それはまるで、この旅の暗部を象徴しているかのような迫力である。
豪華客船で同性愛者達のオフ会が参加費無料で開催されるなど、何か裏があるに違いない。
筆者の、記者の勘がそう告げているのである。
たとえ何も裏が無くとも、豪華客船で行われる同性愛者のオフ会だなんてネタの宝庫だ。
ちなみに、これを記している筆者もゲイである。もし本当に今回の体験を記事にすることになれば、新たな記者名を考えなくてはならないだろう。]
──。
[頭の中にて高速で文章を並べ立ててから、イアンは声をかけてきた男の方を向いた。>>10]
ア、どーも。しばらくよろしく。
まあ、船の中に入っちまえば船名なんて関係ねーよな。
[筆者はそう言って苦笑し、鞄を肩に担ぐと船に乗り込もうと歩き出した。]
(11) 2014/06/07(Sat) 02時半頃