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[逸らした視線の先を定められず、かといって立花に視線を戻すこともできなくて、うろうろと眼球が左右に動く。居場所が無い閉塞感ではなくて、居ることを許されることへの戸惑いは体験したことが無い。何処にいてもいい、なんて、そんなことは彼の生涯において初めてのことだ。
留まっていたままの足は、>>6コップを持ってきた宝生のところへと逃げるように向かった。感謝の言葉もなくひったくるようにコップを奪ってから、疑問符につられて後ろを振り返った。
扉の向こうから現れる少年>>2の何に対して、宝生が疑問を抱くのかが、彼には分からない。目と鼻と口が正しく存在している、常識的な人間の形。
しかもそれは、見覚えのある形をしている。服装やメイクなどは、彼にとって気に留める必要のあるポイントではないのだ。]
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[じーっと越智の姿を眺める彼の目はただ形を確認するだけ。非難も驚きもなく、ただそこにいる越智の姿を認める。
人が増えるならいよいよ椅子に座るのは躊躇われて、人の視線から隠れるように部屋の隅の床に座り込んだ。両手でミルクの入ったコップを包み込んで、両膝を立てて、いつも通りの三角座り。]
(8) nico 2013/09/07(Sat) 12時頃