[これで、何度めのことだろう。
本番はまだしも、気持が緩んでいる時には、ついこんなミスを起こしやすい。
例えば今。人目に触れない物置の中で、気ままに踊っている時などは]
あー、もう。歌っちったー! よー! もう。
なんだよ。チクショウ。こんちくしょう。
[ステージ上では歌うことは許されない。
彼女は、サーカス団メルヘンが入手した、世にも珍しい『お人形』。
それこそ、メルヘンの世界にしか存在しないはずの、歌って踊る『生きたマリオネット』。
その設定を演じることが、彼女の役割なのだから]
もう。お腹すいた。死にたい。ばーか。
[自己嫌悪からくるやけくそなのか。
止めていた汗や息と一緒に、無意味な悪態までこぼれ落ちてくる。
こうして、メルヘンの世界をかなぐり捨てたエフェドラは。
無残に崩れ落ちた格好のまま、うじうじとぐずり続けるのだった**]
(8) 2014/10/07(Tue) 21時頃