全焼、完焼、圧焼。
やがて男の家は燃えガラと炭の塊になった。どうしようもなかった。男は呆然と立ち尽くし、やがてふらふらと立ち去った。
男は村の酒場にやってきた。灰まみれで一文無しのその男を、他の客は煙たがったが、酒場の店主は快く迎え入れた。小さい村のことだ、すべて事情は分かっている。
店主は、男のコートを脱がして灰を払ってやり、隅のほうに座らせると、一杯の酒をおごった。
「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ちついてほしい」
男は黙って、ゆっくりと、末期の酒でも味わうかのようにゆっくりと飲み干し、何も言わずに店を出て行った。男はコートを忘れていったが、店主も何も言わずに見送った。
やがて閉店し、店主は男の忘れていったコートに手を伸ばす。店主は脱がした時に気付いたのだ、コートの内ポケットに、何か紙片が入っていることに。そしてその紙片は、ああどうしたことか、あの一枚の宝籤だった。
宝籤を手に、店主は呟いた。
「まず落ちつくことが、あの男には必要だったな」
つづく。
(4) 2014/10/15(Wed) 16時半頃