― さよなら日向翔平さんの日 ―
[その日俺は、ここ数か月の中で一番不機嫌で、目元を赤くしていた。日向の引っ越しを直前まで知らされていなかったから。兄のように慕っていたのは俺だけだったのかと。]
色柄もんと白いもんは一緒に洗ったらあかんで
ちゃんと信号は守ってな
なんぼ慌てても横断歩道を渡るんやで
間違っても猫を庇って飛び出したらあかん
…それから、絶対遊びに行くからな
[せっかくの門出の日に恨み言を言うわけにもいかず。一通り心配事を述べたあと]
これ、良かったら。俺やと思うて可愛がって
名前はそうやな――ゲイ太や
[数か月前、部屋の前に置かれていた芸からの土産の招き猫型パンダを、押し付けた。これなら、芸と俺、両方の思い出を一緒に連れていってもらえるだろうと。
……決して、厄介払いをしたわけではない]**
(600) vetica 2014/07/06(Sun) 23時頃