93 Once upon a time...
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[スープの具は胃に負担を掛けぬもの。 肉があれば少しは抵抗を覚えたかもしれない。 配慮されたスープを口に運び嚥下して]
あんなことがあってもおなかは減るし ――…おいしいと思えるのね。 ひとりでなかったからそう思えるのかも。
[ぽつと呟いて隣のトリノスをちらと見る。 視線があう前に泳いだ視線はスープの器へと落ちて]
……。
[ゆっくりと、けれどしっかりとスープを食べきり カフェオレへと口を付ける。 本当ならパンも食べたいところではあるが 減量なんて言葉がちらついて手を出すは躊躇われた。]
(7) 2014/10/12(Sun) 00時半頃
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生きてる。 ――…トリノス、
[呼び掛けるような響き。 少しだけ間を置くはトリノスの言葉の意味を考えるから]
この先も、――…生きていて欲しいと思う。
[そう言って、微かな笑みを向けて。 食事を済ませれば重ねた皿をトリノスの分まで引き受けて]
ごちそうさま。 あとはやっておくから、先に行ってて。
[迫る公演の時を思い、彼にそう促し炊事場へと。]
(34) 2014/10/12(Sun) 01時頃
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おれは…ここには…ってないけど…
…になったら…にいられるのかな…
…おれは…いたいのかな…
…
め…あるいはもしくは…れ…
…きはただ…にとっての…だけを…にのせる…
…それで…いいの
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[俺も、と返すトリノスの言葉>>37を聞けば 微か嬉しそうに目許を緩ませた。
カチャリ、食器が音を立てる。 足音が薄いのは綱渡りでの癖がついているから。 炊事場で食器を洗い片付けて 控え用のテントで着替えとメイクを済ませる。]
(42) 2014/10/12(Sun) 01時頃
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いやだ…
みんなと…とも…いっしょにいたい…
けど…
…
ううん…れてれば…みんなといられる…
おれは…れてる…
…
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[白を基調とした衣装。 首元から胸元にはアクセントのようにオレンジ色。 くっきりと浮く鎖骨が豊かな胸をより強調するよう。 短いスカートの裾からはすらりとした脚が覗く。 バレエシューズのようなぺたんとした底の靴から伸びる紐が 足首でリボン結びにされている。
猫目を少しだけ強調するようなメイクは 客席から見ても見栄えするように。]
――…これでよし、と。
[落ち着いて用意が出来るのは傍に居てくれた人がいたから。]
(48) 2014/10/12(Sun) 01時半頃
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うん…にいられるよ
…
…わりよければ…てよし…って…うだろう…
…だからきっと…さ
…
うん…
…せに…わったら…
そうだ…
…が…なんて…みだって…うんだ…
…まれたら…の…より…えない…
…
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[用意が出来るとステージ裏に移動する。 その頃には団長のしていた前口上がザック>>15の口から紡がれていた。]
さまになってる。
[思いのほか馴染み響く声音に耳を傾けてぽつと呟く。 ふと後ろに気配を感じ振り向けば指導役の隻眼が其処に居た。]
――…心配しなくても大丈夫。 愛弟子が信じられないの?
[不安げに見える隻眼に声を掛ければ 彼は首を振り金糸へと手を伸ばす。 曰く、跳ねてる、と別の問題が指摘された。]
……癖っ毛なんだもん。 仕方ないのっ。
[言い遣るうちに乱れを整える器用な指先が髪に絡む。]
(53) 2014/10/12(Sun) 02時頃
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[跳ねていた毛先は幾度か馴染ませられるうちにまとまり 指導役の手指も髪から離れる。 身長差から見上げるかたちとなるものの スーザンの眼差しには甘えのようなものはなく、 舞台に立つ者の凛とした気配が既に滲む。]
大丈夫。 失敗しない。
[言い聞かせるように言葉としてステージへと顔を向ける。**]
(54) 2014/10/12(Sun) 03時半頃
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[口上が済み、踊るマリオネットが舞台に上がる。 いつもと変わらぬ様子でその演目が進むのを 女は舞台裏からじっと見つめていた。
けれどこれまで記憶にない無音の時間が訪れて。 マリオネットにより紡がれる『アヴェ・マリア』>>63
少しだけ驚いたように女は目を瞠り そうして最後の一節を聴き、祈るように目を伏せる。]
(88) 2014/10/12(Sun) 22時頃
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[次に奏でられた陽気な音楽>>65に 女は再びたぐいまれなる踊る人形へと目を向ける。]
――…こわくない。
[同じを舞台裏で微かに紡ぎ一つ深い呼吸をして]
(89) 2014/10/12(Sun) 22時頃
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[子猿と犬の余興は可愛らしいもの。 己の演技を前にして少しだけ心が和む。 程よい緊張感の中、か細い鳴き声に女の肩が微か揺れる。
そうして空中ブランコの演目になれば トリノスが空を舞うのを見上げ見詰め。 鳥の如きその姿にほぅと感嘆の息を吐いた。]
(100) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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―― 綱渡り ――
[練習では梯子を使った。 けれど本番でそれは使わない。 女がこれから披露するのは綱渡り。 サーカス団が魅せる『メルヘン』の一幕。
ピンと張られた綱には傾斜がついている。 左右へと伸ばした手は爪先まで神経が張り巡らされたように形よく。 綱のぼりゆく足取りはゆっくりなれど確かなもの。 凛とした横顔には未だ笑みはなく。 メインとなる平行な綱を結ぶ台に辿りついた時、漸く表情を綻ばせる。]
――――……。
[紹介のアナウンスにあわせて流麗な仕草で一礼すると 綱渡りのスーザンは華やかな笑みを浮かべた。]
(104) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[台から綱へと伸びる足先。 地面と平行に張られた綱を慎重に女は進む。 途中でふらりとよろめきバランスを取るのは無論パフォーマンス。 半ばまで来たところで、女の動きはぴたりと止まった。
曲調が変わる。 アップテンポな曲に合わせて細い綱の上で女は軽やかにステップを踏む。 不安定な場所で踊る女短い曲の終わりにつ、と片脚を上げてポーズをとった。
ふと地上に視線を向ける。 音楽を奏でるバンドネオンの彼をちらと見る。 再び音楽が響き始めるにあわせて女は両足が綱の上で揃えた。
ゆると膝を折り綱の上に腰かける形となれば 下肢はそのままに頼りない一本に背を預け仰向けになる。 大テントのてっぺんを見上げ、そうしてゆっくりと身体を起こし 女は危なげなく立ち上がる。]
(105) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[綱を渡りきろうとしたところで、 その先の台にいる人影にぴたりと足を止めた。 プログラム通りの動き。 黒くしなやかな鞭を持つのはアシスタント。 ――そのはず、だった、けれど。 スーザンの眸に映り込むのは隻眼の指導役。 舞台に立つ事のなくなった男が其処に居た。]
――……。
[くちびるが彼の名を紡ぐけれどはっきりとした音にはならない。 対面に居る指導役がにっと口の端を吊り上げ笑った。 そうして次の動きもまた相手は違うがプログラム通り。 指導役は手にした鞭をスーザンの足元へと振るう。]
(106) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[しなやかな軌跡描く鞭をぴょんと綱の上でジャンプして避ける。 ふらりとよろめいたのは僅かな動揺が滲んだせいだった。 ひやりとしながらも手筈通りの動きが続く。 もう一撃、今度は顔を狙うように振るわれる鞭。 女はしゃがんで避けて、また立ち上がりバランスを取りなおす。
ゆらりと、白く細い腕を横に伸ばして。 再び歩み出そうとした女の腕に鞭が絡む。 取られた腕を見て、それから対面の指導役を睨みつける。]
――…っ。
[ぐ、と腕に力を込め、引き寄せる。 指導役の手からするりと鞭が抜けて それは女の手許へとすんなりおさまる。]
(107) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[隻眼の彼もまた綱の上に来ればいいのに。 二人で立つ事はなかった舞台。 それは誰かのはなむけのような予定外の演出。
女が鞭もつ手を掲げる。 向こう岸に居る隻眼に向かい鞭を振るえば 今度は予定通りにアシスタント代わりは台から下りて舞台裏に引っ込む。
女は滑らかな動きで綱を渡りきり先程まで隻眼が居た台へ。 ライトに照らされる中、客席へとお辞儀して。 いつものように愛想よく笑んで手を振りつつ退場した。**]
(108) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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じゃあ…みされないように…しちゃおう
…
…しいのはね…かのせいじゃないよ
だから…う
…ああでも…し…らしちゃったから…
…
…だから…のせいかもね…
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―― 舞台裏 ――
[演目は成功と言えるだろう客席からの音>>117。 ほっと安堵の息が漏れる。 きょろきょろとあたりを見回し探すのは 予定外に登場した隻眼の指導役。 けれどその姿は見つけられぬまま]
……もう。 小道具取りにくるまでがお仕事でしょうに。
[鞭を片手に少しだけ困ったように眉尻を下げる。]
(123) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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