93 Once upon a time...
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[最後まで闇の中。 スポットライトはあたらぬまま、指の動きはゆっくりと止まる。
眠りにつく前の大きな呼吸みたいに 大きく伸びをしたバンドネオンは、静かにその身を縮めた。 出番を待つクラウンへ、闇に慣れた瞳なら見えるだろうか。目配せをして奏者はひっそりと椅子を片手に抱え身を隠す]
……――ハッピーエンドの、始まりだ
[ステージ裏に、音もなく椅子を置いて 小さな声で、そう毀した。 いつか聞いた、団長の言葉をなぞるように。 その表情は、影に隠れてよく見えない]
(10) 2014/10/12(Sun) 00時半頃
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許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/12(Sun) 00時半頃
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[団長の、メルヘン<御伽噺>を率いる彼が言う『ハッピーエンド』とは、なんだろう?誰にとっての、幸せな結末なんだろう?
ピエロが唄う前口上。 ずっといい、と奏者は笑う。 暗闇の中、想いを伝える楽器は沈黙したまま 奏者は、笑う]
やっぱり、この空気が好きだな
[歓声が、拍手が聞こえる。 楽隊の奏でる賑やかな音も聞こえる。 皆悲劇なんて知らない。 知らないから、笑顔でいられる。
それでも奏者は、闇の中で笑っている]
(24) 2014/10/12(Sun) 00時半頃
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[ステージ裏、最初の役割を終えれば 次に想いを奏でるのは、打って変わって陽気な曲。 今は沈黙のまま。抱えた楽器ひとつ、撫で 慌しい周囲を見渡した。
椅子はアクロバットに使われるのか、もう手元にない。 色濃く縁取られた目じりを、下げるように指で押さえた。 舞台装置の準備にと、目の前をゆく一人を捕まえ、潜めた声で問いかける]
ねぇ、皆いるよね?
[一拍置いて、頷きが返る。 公演に穴はあけられない。 皆いる。まだ………大丈夫。 頷きをさらに返して、掴んでいた手を離した**]
(39) 2014/10/12(Sun) 01時頃
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許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/12(Sun) 01時頃
許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/12(Sun) 21時半頃
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[練習は上手くいった。 本番も――皆、大丈夫だと聞いたから。 奏者は再び楽器を携え、観客に見えるぎりぎりの場所で笑顔を浮かべ、息を吐き出すと同時に演奏を始めた。 序章の曲よりも、ずっと指の動きが早い、軽快な曲。
前奏の見せ場を終えれば、取り決めていた音にあわせて 動物たちが跳ねる、回る 指も一緒に跳ねる、楽器も軽やかに踊るのだ。
リズムにあわせて短い金髪も揺れる。 望んだ一体感は確実に、 微かにはたかれた白粉の下で奏者の温度をあげさせる]
(81) 2014/10/12(Sun) 22時頃
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[音は誰よりも先にステージ上から消える。 潔い終幕と共に、奏者は闇へと消え か細い遠吠えをちゃんと捉えて、一礼をした。
観客の拍手を背に、奏者はステージ裏の隅に座り込み 微かに震える指を酷使して、楽器をなんとか革袋へとしまい込む。
御伽噺は終わらない。ハッピーエンドは、まだやってこないのだ]
(87) 2014/10/12(Sun) 22時頃
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[これにて奏者の出番は終わり。 ラストの大団円にはライトの下にいるだろうが、 それまでは、邪魔をしないよう、息を潜めるのが、仕事。
か細い遠吠えが、未だ脳裏で鳴り響く中 祈りを捧げる歌声が、その声量には比例せず、力強い響きをもって奏者の中を響き渡った。
音楽の、力。 もしかしたら、それは]
魔法みたいだ ……
[ステージ裏へと戻ってくるエフェドラの姿に呟いた]
(92) 2014/10/12(Sun) 22時半頃
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[とはいえ、ステージ上の演技は 奏者にとってはいつだって、魔法のようなもの。 唯一現実から離れられないのが、想いを表しただけの音、で]
うまく、できたかな
[とは共演者への、小さな伺い。
空も飛べない。 歌も、自分ひとりでは歌えない。 何もできないのに、できないから 欲しいものは沢山ある。
観客の拍手も、そのひとつ]
(95) 2014/10/12(Sun) 22時半頃
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[共演者の小さな声には頷き返し、 少しだけ、いつもよりも眉尻下げて、短い金髪を揺らした。
「いつもより」
皆の演技は輝いているように見える。 団長がいなくとも――団長が、いないから?]
(101) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[ステージ裏を見渡す。 ステージ上にいる仲間を想う。
一人一人の顔を思い浮かべる。
ついさっき「皆のこと、好き」と言った。 その言葉に偽りはない。 事実、奏者はこのサーカス団メルヘンのことを愛していたし 団長にたいしてもは特に感謝するようなこともなかったが 恨み辛みがあるわけではなかった]
(103) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[常のように頷きをくれたクラウンの背中が目に入る。 ステージ裏の特等席。 フライヤーがステージに上る時だけ、メルヘン内の子どもたちがいつもとりあっている場所にいる、クラウン。
音もなく――ステージ裏で足音をたてぬ技くらいはだれもが心得ている――歩み寄り、少し後ろで鳥が飛ぶのを眺め]
悲しいの
[短く、背中に問いかけた]
(110) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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んーん、大丈夫
[あけてくれた場所、少しだけ塞ぐように半歩前に出た]
皆、悲しいのかな、って思って ……ザックの前口上、かっこよかったから
だから、俺は悲しくないと 思う
[いつもと違う音。 いつもと違うざわめき。 自分ひとりに向けられた意識。 悲しみは、きっとほんの少しだけ、あったけれど 朝が来る前に何処かへ行ってしまったのだ]
(116) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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ん、と
[唇を湿らせる。 言葉は酷くもどかしい。 音だけで、全て伝えられたらいいのに。 でも、そうしたら――――]
皆悲しそうに、見えたからザックも? ……俺は大丈夫だよ。メルヘンは、大丈夫 ザックの口上、かっこよかったから メルヘンは、大丈夫だもの
だから ……悲しくないよ
[浮かべた笑顔は、ステージからの光で斑に照らされる。 表情の陰影は曖昧になり、さてどう見えたか。 想いはきっと、言葉では伝わりきれない]
(130) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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うーん ……うん じゃあそれも、一緒だ
[悲しいより、寂しい。 一緒だね、と、同じように人差し指を口元へ。 真似をして、さらに片目を瞑ってみせた。
そして、ほら。 今もステージ裏では「いつもどおり」ではない荒い声]
ありがとう、ザック
[頷きに、返し損ねた言葉。 相変わらず潜めた声を落として、 そして困った顔でそちらを見た]
(143) 2014/10/13(Mon) 00時半頃
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[観客の拍手がエフェドラの声を隠してくれたろうか。
感謝の言葉を置いて、奏者は斑の光から逃れるようにその場を離れる。 昂ぶった心に届く"言葉"なんて、持ち合わせていないから]
こわくない、なら ……みんなは、何がこわいのかなぁ
[おおかみなんて、こわくない。 それならいい。 こわくないならいい。 いつかの囁きを繰り返して、歓声を背に、夜へ*溶ける*]
(148) 2014/10/13(Mon) 00時半頃
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許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/13(Mon) 00時半頃
許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/13(Mon) 22時頃
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― ステージ裏、クラウンと―
[次の出番まで、まだもう少し、時間がある。 一足先に離れた背中。 しゃん、となる鈴の音。 ステージを終え、汗を拭く仲間たち。 見渡した瞳は、かけられた声に瞬いた]
…………うん
[魔法は一人では成し遂げられない。 まやかしであっても――否、まやかしだからこそ。 クラウンの真似して、頷いて そのまま足を進めた]
(218) 2014/10/13(Mon) 22時頃
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それでもかっこよかったよー…とは ……うん、言わないでおこう
[そしてステージ裏を横切る。 全部、通り過ぎる。 革袋に入れっぱなしだった芋を、はらぺこマリオネットに投げようかと、一度取り出したけれど、やめておいた。
この後の公演に使わない、急すぎる階段の先。 客席を後ろから見下ろすような位置にある高台へ、音もなく足は向く。革袋片手に、時折両手を使ってはしごを上り
そして、次のショーを、見守ることにした]
(224) 2014/10/13(Mon) 22時半頃
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許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/13(Mon) 22時半頃
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[音のない拍手を送る。 幕間の音に、演技に 空へと跳ねる鈴音に、 拍手を、声なき歓声を。
革袋から取り出した楽器が、回る照明に照らされ、輝いた]
(238) 2014/10/13(Mon) 23時頃
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[テントの外。 沸き立つ歓声をBGMに、月がひっそりと輝いている。 夜は更けていくばかり。
幕が閉じるまで、あと少し。 率いる者を欠いた御伽噺が、よろめきながらもハッピーエンドを迎えるまで、あと少し]
(239) 2014/10/13(Mon) 23時頃
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[観客は背中から聞こえるバンドネオンに振り返るだろうか。 ―――否、この時音楽は添え物。 目の前に繰り広げられる猛獣たちの振る舞いに 目も、心も奪われるに決まっている]
此処が特等席 ……だよね?
[囁きを笑みにのせ、 後ろから、ステージ上から テント全体を使って観客を包み込む]
(249) 2014/10/13(Mon) 23時半頃
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― 公演後、空気は未だ、熱を孕み ―
[全てのショーが終わり、観客が総立ちになる頃 奏者は頭上から姿を消し、地に降り立つ。 見送りの曲に哀しさ残る音はいらない。 華やかで、景気のいいやつでいこう。
「また、見にこようね」
無邪気な声が耳に届いた。 裏方は早くも片づけを始めている。 奏者は月を見上げ、首を傾げた]
(262) 2014/10/13(Mon) 23時半頃
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[奏者は今日、何も口にしていない。 水を飲むことすらなく、公演を終えて今、 手のひらで冷たく乾いた芋を遊ばせている。
赤い星を縫いこんだスーツが月の光を反射する。 一人、また一人と大テントから出ていくのを見守り]
どこ、だろうね
[ぽん、と高く跳ねさせた芋を受け止めて、 土汚れた皮のまま、大きく口をあけて齧り付いた]
(269) 2014/10/14(Tue) 00時頃
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[声が聞こえた方に顔を向ける]
悲しい、声だねぇ おなか減ってるのかな
[半分よりももっと少なくなってしまった芋を眺める。 あげようと、思っていたことを思い出した。
だって芋はいらない。 こんなんじゃ、腹も満たされないし、喉の渇きも癒されない。 嬉しくもないし、悲しくもない]
(284) 2014/10/14(Tue) 00時頃
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