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カイルは、エルゴットに水をやっている
sunao 2014/07/27(Sun) 21時頃
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― そして… ―
[呪の心臓に刻まれたV字《勝利の証》。 禍々しい身体は罅割れ、砂のように脆く崩れてゆく。 カイルは浄化されゆく世壊呪と世壊樹を見上げていたが。]
―――――。
[呪から解放された、見慣れた優しい顔>>2:141にカイルもニイッと微笑む。 やがてそこには灰色の石だけが残り、それも夜明けの光を浴びて金剛石へ姿を変える。 それでもカイルは微笑んだまま、金剛石へ語りかけた。]
(51) sunao 2014/07/28(Mon) 21時半頃
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…礼なんかいらねえよ。 これはお前も一緒に掴んだ奇跡だ。
お前はお前を信じた。 俺達もお前を信じた。 だからこの夜明けがある。
へへ、ウルトラかっこよかったぜ、ボリス。
[聖剣クリスマスをトンと肩において、あいた方の手を金剛石へ向けて親指を立てた。
―――――その時だった。]
(52) sunao 2014/07/28(Mon) 21時半頃
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――――…え?
[耳元で聞こえた、罅割れの音。>>0 肩においていた剣身を起こすと、罅割れは加速して。 瞬く間に光の欠片へと姿をかえて、空へと消えていった。]
クリスマス…ッ!!
[思わず、声をあげて空へ消える光へ手を伸ばそうとしたが、それはすんでの所で握り拳へと変えられた。]
………、…っ
[カイルはぎゅっと拳を握り締め、俯く。 トレイルの震える声。>>12 彼が送り出した光を見届ける事は出来なかったが。]
(53) sunao 2014/07/28(Mon) 21時半頃
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[暖かな光>>4が辺りに満ちて、カイルはゆっくりと顔をあげた。 そこにあった光景は。 そこにあった姿は。 まさに奇跡。
光に包まれたクリスマスの身体はゆっくりとトレイルの元へ舞い降り、優しく抱きとめられる。 それは聖マリアンヌ教会に飾られているシメオンとアイリスの再会を描いた大壁画とよく似ていた。]
………へっ、あいつら。見せつけてくれやがって。
[そう言いながら、指で鼻の下をこする。 口ではそう言っていても、カイルの顔には満面の笑みがあり。 心から二人を祝福していた。]
(54) sunao 2014/07/28(Mon) 21時半頃
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――――…聖剣クリスマス。ちゃんと返したぜ。
[約束は必ず守る。 預かりものが帰るべき場所へと帰った事を見届けると、カイルはその場を立ち去るべく二人へ背を向けた。 そこには去り行く男の背中。>>32]
ああ、そうだ。 これから俺達の世界が創まる。
そこにはお前も…って、おおい!聞けよ!
[話の途中で去り行く背中へ声をかけると、ふとその歩みが止まってジェフが振り返る。]
(55) sunao 2014/07/28(Mon) 22時頃
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………ジェフ?
[カイルは不思議そうにジェフとジェフの視線の先を交互に見ていたが、もう一度彼が背を向けるとニイッと笑った。]
ああ、同期《ブラザー》。 ―――――また会おうぜ!!!
[黒いコートを翻して歩く背に、力強く親指を立てて見送る。 そして傍にあった金剛石へももう一度顔を向けて。]
お前も、また会おうぜ、ボリス!
[にひっと笑い、最後にクリスマスとトレイルの方へと向き直った。]
(56) sunao 2014/07/28(Mon) 22時頃
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――――おい、トレイル!!
俺との約束は延期にしといてやる!! 首洗ってまっていやがれ!
それから!!! もうひとつの約束…あれも忘れんなよ。 破ったらぶっとばすかんな!!!
[もうひとつの約束。 それは峡谷で半ば強引にとりつけたもう一つの約束。
『クリスマスの事、頼んだぞ。哀しい顔させたらぶっとばす!』
もう一つの、男の約束。]
じゃあな!
[それだけ言うとカイルは再び二人に背を向けて、右手親指を高くビッと掲げた。]
(57) sunao 2014/07/28(Mon) 22時頃
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あーあ、穴開いちまって…あいつ怒ってっかな。
[道すがら、拾いあげるのはサクラコから貰ったマント。]
………ん?
[拾い上げたマントの下に、小さな緑を見つけ、カイルは瞬く。 芽を出したばかりの双葉は瑞々しい緑で、煌く朝露にその身を揺らした。]
ははっ。 そういやまたひとつ、約束しちまったなあ。
――――…お前も、またな。
[ぽり、と頬をかいてマントを肩にかけ。 カイルはゆっくりと歩き始めた。]
(58) sunao 2014/07/28(Mon) 22時頃
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― それから ―
[月日は流れ、世界が落ち着きを取り戻した頃。 男は緑の大地を歩く。 人の手が及ばぬ、道無き緑。 だが、男が迷う事はない。 この地を歩くのはもう慣れたものだった。]
(59) sunao 2014/07/28(Mon) 22時頃
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[男は何があっても曲げない信念を持っていた。 それは約束を守る事。 それが例え一方通行であっても、男は自分の発言に最後まで責任を持つ。
そして今も、その約束>>1:121を守る為にこの地を歩く。]
………俺の教育も少しは役に立ってんのかね。
[生い茂る緑を見上げながら歩き続け、目的地へ着くのにそう時間はかからなかった。 人々から忘れられた庭園《ロストエデン》。 それは動植物達だけの悠久の楽園《パラディソス》。 聖命に溢れたその場所は深い森の奥でありながら、木漏れ日の差す暖かさで。 母なる樹の傍で泉が静かに煌いていた。
男は泉へ着くと、その泉に佇む少女へと声をかける。]
(60) sunao 2014/07/28(Mon) 22時頃
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よう、久しぶり。調子はどうだ?
――――世界樹《マーゴット》。
[世界を抱く母なる樹。 その化身は嘗てのような枯れ木のような姿ではなく。 長く豊かな髪も魔に染まった黒ではなく、それはまるで新緑のような――――**]
(61) sunao 2014/07/28(Mon) 22時頃
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カイルは、ひとっぷろ**
sunao 2014/07/28(Mon) 23時頃
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― ある晴れた日の事 ―
[それは、一人の男>>62が訪れた数日後の事。 約束の丘の少し先、綺麗な花と葡萄酒が添えられた白い墓前の前に立つ姿がひとつ。]
…多分トレイルの奴だな。 へっ、相変わらずキザなセレクトだぜ。
[置かれた花と、葡萄酒の銘柄にフンと鼻を鳴らず。 それでもそこに変わらぬ彼の姿を見た気がして、少しだけ嬉しくも思った。 カイルも手にしていた煌く珍しい花―――を、乱雑に束ねた花束を墓前へと供える。 そして、その場へ屈むとパンッと掌を合わせてしばし祈りを捧げた。]
………、なあ。
[暫くの後、カイルは瞳をゆっくりと開けて墓へと語りかける。]
(74) sunao 2014/07/29(Tue) 01時頃
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正直言うとアンタの事…嫌味なババアとしか思ってなかった。 でも………今はそうじゃない。
父さんが困った時はアンタを頼れって言ってた意味も。 今なら――――わかる。
アンタがどれだけすごい人だったのかも。 どれだけ俺達を支えてくれていたのかも。
[各地を廻る度に、魔宝石術師《ジュエリスト》の話はカイルの耳に届いた。 時には厳しく、時には優しく、全てを見通す眼差しで人を導く聡き者。 人々はビアンカの事をそう呼んでいた。]
………――――ボリスの事も、クリスマスの事も。 アンタには全部わかってたんだな。
それから、ずっと言えなくて、こんなに遅くなっちまったけど…。
[カイルはすっと立ち上がり、足を揃えると大きく息を吸って、綺麗な角度で一礼した。]
(75) sunao 2014/07/29(Tue) 01時頃
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峡谷ではこの命を救って頂き、ありがとうございましたッ!
このご恩、仇で返す事がないよう、正しく!強く! 命の限り精一杯生きる事を、俺は約束します!!!!!
[顔をあげて、強く、澄み切った瞳で墓を見つめる。 そこにビアンカが居なかったとしても。 誓いの眼差しは熱く、あの日の輝きのまま。]
だから、俺達を…世界を。 これからも見守っててくれよな。
[カイルはニッと笑って、墓前に向けて親指を立てた。]
(76) sunao 2014/07/29(Tue) 01時半頃
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さぁーってと。 久々にキザ野郎の顔でも見に行くとすっかな。
じゃあな、ビアンカおばさん。 また来るぜ。
[短く別れを告げて、青い空の下をカイルは歩き始める。
丘から吹く優しい風。 心地よい風にカイルは鼻歌を歌い。 その鼻歌につられたように、墓前の花がゆらゆらとその身を揺らして煌いていた。**]
(77) sunao 2014/07/29(Tue) 01時半頃
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